この5年の職域大会は慶應大学を中心に回っていたといっても過言ではな
い。最近11大会で9回の優勝がそれを物語っている。実力者・鈴木が前回限
りで卒業し、この大会を境にしばらく休眠の時代となる。
新たな主役は早稲田大学、そして前回その早稲田と大接戦を演じた東京大
学、この2チームのマッチレースでこれから10年の職域は語られることにな
る。
最初の勝負は第一回戦・東京大学Bチームと早稲田との一戦。東大Bは、
昨期レギュラーチームにいた上田を主将にすえる不気味なチーム。しかし早稲
田のレギュラー相手には苦しいかと思われた。ところが早稲田、受ける構えが
災いし、波多野を除いて全員全くの不調。萬年(早稲田)は山村(東大)に、山下
(早稲田)は上田に敗れ、早々に2敗し絶体絶命のピンチ。結局2勝2敗で、下
宇宿(早稲田)−上野(東大)戦が鍵を握ることになった。1−3の劣勢を上野
挽回。1−1に持ち込む。運命戦の持ち札は「あひ」と「あはれ」。出札は
当時のヒット曲「最後に愛は勝つ!」を彷彿させる「あひ」。下宇宿自陣を払
い、早稲田、厳しい試合を逃げ切る。
苦しい試合を乗り越え、試合で気合の入った早稲田、ライバル慶應との一戦を
4−1で快勝、東大の決勝進出を待つ。
東大Aは逆に予選で早稲田Bチームに苦しむ。レギュラーではないいわゆる
「裏」チーム、しかし層の厚い早稲田のそれは、他チームのレギュラーに見劣り
しないどころか優勝さえも夢ではない編成であった。試合は3勝2敗で東大の辛
勝。東大・早稲田に別れた中村兄弟の対決で、早稲田の弟・直行の金星が注目
された。
マッチレースの佳境となる決勝。経験豊富な早稲田と、力の上では見劣りし
ない東大。2期連続2度目の決勝カードで、組み合わせも五分五分、そして勝
利の女神が微笑むのは……、再び早稲田大学であった。その年、2人合わせて
全日協ポイント56という波多野・山下の両輪が絶好調で挑んだ早稲田がやはり
有利であった。勢いにのって次々上がる勝ち名乗り、終わってみれば5戦全勝。
早稲田の黄金時代を印象づけた決勝戦となった。
(田口貴志氏による観戦記)