この何年か、勝利をほしいままにした早稲田も、落日の時を迎えようとして
いた。個人戦でも東大の現役生が次々昇級するのに比べ、どこか寂しい。しか
し奈良県協から新戦力中本を加えた早稲田は、前日の学生選手権では福原・池
田のA級ワン・ツー。フィニッシュを飾るなど、まだまだ戦力的には充分優勝
が狙えた。今回も決勝戦を中心に戦評を述べたい。
東大はまさに横綱の風格、予選3試合を13勝でこなした。一方の早稲田も
同様に、楽々3連勝‥‥ではなかった。勝つには勝った。しかし主将・福原の
様子がおかしい。3回戦の外語大戦ではチームが3勝をあげた後、棄権を申し
出た。どうやら体調がおかしいようだ。これまで職域では圧倒的な信頼を感じ
させ、実に22連勝していた福原、しかしその連勝も棄権で潰えた。記録を捨
てても棄権せざるを得ない体調であった。
それでも試合に臨む福原であったが、相手が悪かった。自他ともに認める職
域男・小林選手であった。もともと攻めに定評ある選手だが、「団体戦モー
ド」に突入した時の勢いはちょっとやそっとでは止められたものではない。東
大初優勝の時も彼の金星が大きく輝いていた。勢いの差は歴然、小林の圧勝で
あった。
主将を落として苦しい早稲田、しかし中本がこれも団体戦巧者中原を大差で
沈め、望みをつなぐ。吉井(東大)・池田(早稲田)で両チームそれぞれ勝ち
星を重ね、山崎−松井も東大山崎優勢のまま終盤。松井、ここで驚異の粘りを
見せるが、さすがにしのぎ切れなかった。5枚差で幕。東大、初の連覇を達成
する。
東大の優勝全てに関わっている山崎・小林に加え、活き活きとした3年生が
活躍する東大は、新旧ともに充実、黄金時代を迎えようとしている。
(田口貴志氏による観戦記)