第II部

かるた攷格


競技かるたを取り始めてしばらくすると、「こういう時にはどうすれば いいのだろう。 攻撃は?守備は?……」などの疑問が湧いてくる。第I部を読んで 、実戦を経験された 方は、こうした疑問に直面されてはいないだろうか。
囲碁には定石、将棋には定跡といったものがある。はたして競技かるた にこうしたもの はないのであろうか。競技かるたは、囲碁・将棋のような盤上の競技で はない。自分の 五感を研ぎ澄まし、全身を使い、自らの身体を動かして行なう競技であ る。定石(定跡) とかセオリーといった意味合いも、当然異なるだろう。しかし、多くの 競技者に共通の 認識というものがあれば、それは、定石(定跡)・セオリーと名付けて もよいのではな いだろうか。もちろん、競技かるたの場合、札の出る(詠まれる)順番 という要因があ るし、個々人の音に対する反応の違いやリーチの長さ等の身体的特徴と いった「取り」 に差を生じさせる要因がある。したがって、定石(定跡)・セオリーと いわれるものの 普遍性というものは、囲碁・将棋に比較すると狭いといわざるをえない だろう。
このような競技の性質をふまえて、競技かるたについて、私なりの考え を述べてみよう と思う。「かるた攷格」の「攷格(コウカク)」とは「攷」すなわち「 考」の意であり、 「格」すなわち「ものの道理をきわめる」の意であることから、「かる たの理を考え、 研究しよう」という意味なのである。タイトルは大袈裟だが、本稿が競 技かるたを考え る上での参考または議論の材料にでもなればと願っている。


COPY RIGHT : Hitoshi Takano
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