○○ STEP 4 ○○

〜札を覚えよう(その3)〜


《 いちひき  》

 STEP2・STEP3をクリアされた皆さんは、もう要領を覚えられたことだろう。 ここでは百枚の中で同じ音で始まる札が三枚ずつある四つの音の札について覚えよう。こ の四つの音は、「い」と「ち」と「ひ」と「き」である。これらは「いちひき」と一まと めにして覚える。「いちひき」と頭に入ったならば、恒例となった札探しである。詠札百 枚の中から、「い」と「ち」と「ひ」と「き」で始まる札を各三枚ずつ十二枚見つけよ う。見つかったら、同音で始まる札を三枚ずつ並べてよく見較べてみよう。決まり字につ いて会得した皆さんは、その札の決まり字がしっかりとわかる筈である。

 まずは、「い」。「いに」と「いまこ」と「いまは」の三枚である。「いに」は二字決 まりで、「いまこ」「いまは」は三字決まりである。「いに」が詠手に詠まれていない時 点で「いまこ」か「いまは」のどちらかが詠まれたら、その残った方の取札は「いま」 の二字で取ることができる。そして「い」札三枚のうち、二枚までが詠まれたとしたら、 残りの一枚は一音(字)で取れることになる。但し、「い」札三枚のうちで「いに」が最 初に詠まれた場合、「いまこ」「いまは」の二枚の決まりは、三字決まりのまま変わらな い。しかし、ここで「いに」が詠まれたということをしっかり記憶しておかないと、次 に「いまこ」「いまは」のどちらかが詠まれた時に、その残った取札が一音(字)で取れ るということを忘れてしまうはめになる。したがって、たとえ決まり字は変化しなくと も、三枚のうちの二字決まり一枚が詠まれたことはしっかり記憶しておかねばならない。

 では、今見付け出した三枚の詠札に対応する三枚の取札を、取札百枚の中から探し出そ う。そして、その取札をみて、「これは、いに」「これは、いまこ」「これは、いまは」 と言えるようになるまで繰り返し覚えよう。

 同様に、「ち」と「ひ」と「き」についても、詠札を見較べて決まり字をしっかり頭の 中に入れることと、それに対応する取札を探し出して、その取札の決まり字とを対応させ て覚えることとを行なってほしい。

 「ち」の場合は、「ちは」「ちぎりお」「ちぎりき」で、二字決まり一枚と四字決まり 二枚の構成であり、「ひ」の場合は、「ひさ」「ひとは」「ひとも」で、二字決まり一枚 と三字決まり二枚の構成である。「き」の場合は、「きり」と「きみがためは」と「きみ がためを」の三枚で、二字決まり一枚と六字決まりが二枚の構成になっている。この「き みがためは」や「きみがためを」のような六字決まりの札は、「大山札」と呼ばれている。 その昔は、こうした決まり字の長い札は、決まりを待たずに「ヤマ」を張って取ったとこ ろから呼ばれ始めたらしい。百人一首の決まり字の中では六字決まりが一番長く、二枚の ペアが三つで合計六枚ある。

 この「い」「ち」「ひ」「き」のそれぞれは、二字決まり一枚とそれよりも長い決まり 二枚のペアの三枚で構成されているのが特徴であるといえよう。長い決まりのペアの片方 が最初に詠まれたら二字決まり二枚に変化、二字決まりが最初に詠まれたら残り二枚の決 まりは変わらないが、次の一枚が詠まれた後では一字決まりに変化するというパターンが 共通点と言えるからである。

 では、この「いちひき」の取札十二枚をシャッフルして、一枚ずつ決まり字を言ってみ よう。全部言えたであろうか。全部言えたなら、次のステップへ進もう。


◇◇ 決まり字・下の句対照表 ◇◇

<いちひき>


「いに」……………けふここのへににほひぬるかな
「いまこ」………ありあけのつきをまちいてつるかな
「いまは」 ………… ひとつてならていふよしもかな
「ちは」 …………… からくれなゐにみつくくるとは
「ちぎりお」 ……… あはれことしのあきもいぬめり
「ちぎりき」 ……… すゑのまつやまなみこさしとは
「ひさ」 …………… しつこころなくはなのちるらむ
「ひとは」…………はなそむかしのかににほひける
「ひとも」………よをおもふゆゑにものものふみは
「きり」 …………… ころもかたしきひとりかもねむ
「きみがためは」…わかころもてにゆきはふるつつ
「きみがためを」 … なかくもかなとおもひけるかな



◇◇◇◇◇ 「STEP5」へ ◇◇◇◇◇

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