○○ STEP 13 ○○

〜競技を始めよう(その2)〜


[ I ]  『暗記時間の過ごし方』

 暗記時間十五分を如何に有効に使うかは勝敗を決める大きな要素といえよう。この暗記 の仕方も非常に個人差のあるものであるから一つの例だと思って読んでもらいたい。

 まず自陣の札は、自分の定位置で並べているのだから並べながら暗記してしまえる。何の札が来たかを見ながら並べているのだから、どの札が来たかを暗記にいれれば自ずとその位置も憶えてしまえる。自陣を定位置で楽に短時間で憶えてしまえばそれだけ相手の札を憶えるのに多くの時間をさくことができる。自分に憶えやすく相手に憶えにくいように定位置を決めている相手に対しては、やはり多くの時間を敵陣の暗記にさくことはやむをえないことであろう。筆者の場合だと、まず並べ終わったら自陣の枚数と敵陣の枚数を必ず確認する。多いのに気付かずに詠みが始まったら、そのまま取らなければならない。そうなると戦わずして不利を背負わなければならないことになる。逆に少ないのに気付かず詠みが始まり、その事実に途中で気付いたり、気付かれたりするとトラブルのもとになり、競技の公正性からいっても後味の悪い結果を招いてしまう。これも好ましいことではない。以上の理由で必ず第一に枚数確認をする。

 次に自陣をざっと見てどんな札が来ているかを見る。これは札を並べた時に全部憶えている筈なのだが、一応の確認である。その次には敵陣を敵の右下段・右中段、上段を敵の右から左へ、敵左中段・左下段へと札を見ていき、どんな札が来ているかを確認する。これが終わると「むすめふさほせ」から「あ」まで「札を覚えよう」のところでやったように同音で始まる札をそれぞれ順番に何の札が来ていてどこにあるのかを確認する。これをやると空札が何かもしっかりと頭に入る。人によっては、「あいうえお」順にこの確認をすることもあるし、まったく独自の順番で確認をしていることもある。とにかく自分で決めた方法で一通り憶え、あとは何度でも確認し時間の許す限り暗記を続ける。また、音ごとに「この札は敵をこのように攻めて、違ったら自陣の札に戻るようにしよう」などと一応の目安をたてておく。席を立って、気分をリフレッシュしたり、札を見ないで「場」の五十枚を「どこに何があった」と確認する人もいて、実に暗記時間の様子はさまざまである(なお、席を立つ時には「失礼します」、席に再び戻る時には「失礼しました」と相手に対して挨拶するのが礼儀となっているので、必ず守ってほしい)。

 それから、暗記時間残り2分(1分が適切という意見もある)となったら、素振りをしながら畳を叩いて暗記を入れてもよいことになっている(畳を叩くというのは、基本的に素振りをした勢いを殺すための動作である。「畳を叩く」ことが目的ではない)。この素振りは、暗記時間中「この札をこう攻めて違ったらこちらの札に戻る」などと考えたパターンを実際に動作と一緒にやって、より強く暗記を入れて体に憶えさせるために行なう人もいるし、単にウォーミングアップで行なう人もいる。とにかく、暗記の仕方にしても素振りにしても自分のパターンを早く決めてしまうのがよいと思う。場の五十枚の札がどこにどう並んでいるかを札が裏返っていても言えるくらいに憶え、競技が詠みによって始まった時、札を取りにいける状態にしてあれば、暗記時間をどう使おうがかまわないということである(但し、暗記時間に足を前や横に投げ出したり、相手に対して体を真横に向けたり、真後ろに向いたり、常識的に考えて相手に対して失礼と受け取られる態度は厳に謹んでいただきたい)。


[ II ]  『試合開始時の諸注意』

 暗記時間の十五分が経過すると、いよいよ試合開始である。詠み手が(試合の時などは 大会役員が)、「時間です」と告げる。この合図で、競技者はまず相手(対技者)に対し て「よろしくお願いします」と挨拶し、詠み手に対しても同様にその場で「よろしくお願 いします」と挨拶する。審判が最初からついている場合は、審判に対しても同様に挨拶す る(途中で審判がつく場合もある。その時は審判が着席した時に挨拶する)。

 挨拶はもちろんであるが、試合開始前に上着や羽織は脱ぐというのも相手に対する礼儀 である。こうした競技は、やはり礼儀正しくやってこそ楽しいものなのである。それで は、試合の進行順にそって話を進めていこう。


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