○○ STEP 14 ○○

〜競技を始めよう(その3)〜


[ I ]  『競技かるたは詠み手が札を詠まなければ進行しない 競技である』

 暗記時間十五分が終了し、「時間です」と合図があり「空札(カラフダ)一枚」から詠みが始まる。ここでいう「空札」とは「序歌」と呼ばれ、この序歌は全日本かるた協会で指定されている。何故にこの空札(序歌)を詠むかというと、競技かるたが歌の上の句を聞いて下の句(取札)を取る競技であることによるのである。いきなり、上の句を詠まれたのでは、競技者は面食らってしまう。したがって、次の歌(詠札)を詠む場合には、前の歌の下の句を詠み、一定の間隔をおいて次の歌の上の句を詠むという決まりがある。

 基本的に下の句は「七・七」からなっており、この七・七の最後の二文字を除いた部分を四秒、最後の二文字を歌の余韻を含めて三秒、間を一秒として、次の歌の上の句を五秒で詠むというのが目安となっている。競技者は、この法則を心得ていて、次の歌がいつ詠みはじめられるのかわかるわけである。

 さて、ここで何故に空札(序歌)が詠まれるのかという話に戻ろう。読者のみなさんのご察知のとおり前の歌の下の句のある二枚目以降は問題ないが、一番最初に詠まれる札には前の歌の下の句がないことによるのである。また、この空札(序歌)が詠まれることで、詠みの具合を知ることができる。詠みはやむをえないことではあるが、個人によって微妙な違いが出てしまう。それをこの序歌で、この人の詠みはこのような感じかというのをつかむわけである。

 全日本かるた協会(略称:全日協)指定序歌は、

「 なにはづに さくやこのはな ふゆごもり いまをはるべと さくやこのはな 」

である。

 まず、上の句を詠み、続けて下の句を詠み、もう一度下の句を詠んで一枚めの歌の上の句に入る。この時、一回めの下の句と二回めの下の句との間が、二回めの下の句と一枚めの上の句との間と同じでなければならない。以後は、前の歌の下の句を一回詠んで次の歌の上の句を同じ間隔で詠むことになる(下の句を二回詠むのは序歌の時だけである)。

 こうして、詠みによって競技が進行していく。

 詠み手にもいろいろ癖がある。この詠み手の癖をはやくつかむのも勝敗のポイントとなる(具体例は省く)。詠みが下手だと思っても、ケチをつけるのは礼儀に反する。詠み手がいなければ競技は始まらないし進行しないのである。それだけに、詠みを務める人間はそれなりの心構えを必要とするのである。


[ II ]  『競技かるたは詠まれた札を取る競技である』

 詠み手によって空札(序歌)が詠まれ、札が次々に詠まれていく。自陣の中にも敵陣の中にも詠まれた札がない場合は、別に札を取る必要はないが、詠まれた歌の取札が自陣または敵陣に並べてある札の中にあったとする。その場合は、決まり字で即座に取札を取らなければならない。札を取るという行為はどのようにするかを説明しよう。

 札を取るということは、詠まれた歌の取り札(これを「出札」という)に相手より先に手で触れることを言う。この場合、「相手より先に」という点が重要である。相手より遅かったら、それは札を取りに行こうとしただけで、札を取ったことにはならないからである。

 また、出札に触れなくても、出札をまわりの札から押すこと(これを「札押し」という)によって、競技線から外に完全に押し出した場合、完全に出札を競技線の外に出した人の取りになる。競技線については、「STEP12」の中で説明しているので覚えていただけていると思う。要するにこの競技線の中に札が並んでいるわけであるから、この中に並んでいる札をその外に完全に押し出すのが札押しである。

 先ほどから何度も「完全に」といっているように[図3]の□や◇の札は取りにならない。

たとえ僅かでも競技線の上に札が残っているような場合は取りにならないのである。[図3]の■や◆の札のように完全に競技線の外に出さなければならない。ちなみに●は競技線の右端からは出ていないが、競技線の下端から完全に出ているから取りである。

 自分が札押しで札を競技線の外に完全に押し出す前に相手に札をさられてしまったら、これは相手の取りになる。但し、完全に押し出した後ならば、自分の取りである。

 また、[図4]のような場合に、双方とも同様同時に異なる札から札押しで札を出したとすると、取りは出札に近い札から押し出した方になる。

したがって、出札に近い(b)の札から札押しした敵の取りになる。札押しの場合は、どちらが「完全に」出札を競技線外に出したかが取りの決め手である。同じ札から同じスピードで同時に札押しした場合とか同時に出札に触れた場合は、その出札が並んでいた陣の競技者の取りとなる(「セーム(=same)」という)。また、札が本来あるべきでな筈の陣にない状態でそのなくなっていた札が詠まれた場合、本来その札を持っている筈であった競技者は相手に札を取られたことになる。このようなケースは、きき手以外の手で取ってしまった場合にも適用される。競技かるたは、右手か左手かどちらか一方で一試合を取り続けなければならない。試合の途中で変えることはできない。きき手といったが、右ききの人でも左手でかるたを取る人もいるし、左ききの人でも右手でかるたを取る人もいる。但し、一試合は必ずどちらか一方で取らなければならず、逆の手を使って札を取ったら、相手の取りになってしまうのである。一試合が終わったら、その次の試合で、札を取る手を変えることは差し支えない。札を取るという行為を理解していただけたであろうか。次のステップでは、勝敗のつき方について説明しよう。


◇◇◇◇◇「STEP15」へ◇◇◇◇◇

○○ 「歌留多攷格」目次へ戻る ○○