○○ STEP 15 ○○
〜競技を始めよう(その4)〜
[ I ] 『競技かるたでは相手より先に自陣の札二十五枚を減ら
せば勝ちである』
札が詠まれる。詠まれた出札を取る。取った出札を下げる(並べてあった場から取り除く)。下げた出札を自分のきき手と逆の側の後方に邪魔にならないように裏返して置く。このようにして、場に並んだ札が詠まれる度に、札が一枚ずつ場から減っていくのである。
さて、自分の陣の札が詠まれて自分が取ったとすると自陣が一枚減る。この場合は特に問題なく、札が減るままにしておけばよい。敵陣の札が詠まれて敵が取っても敵陣が一枚減るだけで同様である。ところが、敵陣の札が詠まれて自分が取った場合はどのようにすればよいであろうか。何もしなければ敵陣が一枚減るだけである。それでは、せっかく札を取った意味がない。この場合は、敵に対して自陣から任意に札を一枚送ることになっている。逆に自陣の札が詠まれて敵に取られた場合には、敵陣から敵が送ってくる札を受け取らなければならない。
もし、札を送るのを忘れてしまったまま次の札が詠まれたとする。このような時には、送り忘れに気付いたとしても「あとのまつり」で、一枚前の分に関して札を送ることはできなくなってしまう。「何を送ろうか」「この札を送ろう」と考えている間に詠みが始まらないようにするためには、手を高々と挙げて詠み手に対して意思表示しておく。手が挙がっている時には詠み手は詠み進めないことになっている(札の整理以外の理由で詠みを待たせてはいけないことになっているので、詠みを止める時には充分に注意すること)。それでも詠み手が気付かずに詠もうとすることもあるが、その場合は「しばらくお待ち下さい」と声を出して詠みを止める。これは非常手段なので、できるだけ早く札を送るよう心掛けたいものである。
話を戻そう。要するに、札を取れば、それが自陣であれ敵陣であれ、必ず自陣の札が一枚減ることになるのである。こうして、自陣に最初にあった二十五枚の札を相手の持ち札より先に全部減らせば勝ちである。逆に、自分の持ち札より先に相手に敵陣の二十五枚の札を全部減らされてしまったら負けである。勝負がついたら、相手・詠み手(審判がいる時には審判に対しても)に「ありがとうございました」と挨拶し、残り札(この枚数を「枚差」と言い、何枚差の勝ち・何枚差の負けとその勝負の差として双方の力の差の目安になる)と取った札を数えて五十枚の札が欠けていないことを確認し、札を片付ける(大会の場合は、勝者が本部に札を持っていき、自分の勝ちを告げる)。
以上のように、札を取って自陣の二十五枚の札を相手より先に減らすという競技が競技かるたであることを理解されたことと思う。しかし、札を取らなくても敵に札を送って自陣の札を減らすことができる場合もあるので紹介しておこう。
[ II ] 『お手付』
「お手付」、国語辞典によると「まちがって他の札に手をつけること」とある競技かるたの場合も確かにそうなのであるが、札押しという取り方が許されているために少々解説を必要とする。
競技かるたで「お手付」とは次のような場合を言う。
(1) 自陣に出札が無いのに自陣の札に触れてしまった場合
(2) 敵陣に出札が無いのに敵陣の札に触れてしまった場合
(1)や(2)のようなお手付をした場合、相手から札が一枚送られてくるし、逆に相手がお手付したら、こちらから札を一枚送ることができる。もし、(1)と(2)を同時にしてしまったらどうするのであろうか。すなわち、自陣にも敵陣にも出札が無いのに(空札なのに)、自陣の札にも敵陣の札にも触れてしまった場合である。この時は、相手から札を二枚受け取らなければならない。もちろん、相手がこのようなお手付をしてくれたならば、相手に対して札を二枚送ることができる。これを「空ダブ(からだぶ)」という。
空ダブ以外にも札を二枚送れる場合がある。これは、自分が敵陣の札を取って、相手がこちらの陣の札に触れてしまうというお手付をした場合である(逆に敵がこちらの陣の出札を取って、自分が敵陣の札に触れてしまった場合は、敵の札を二枚受け取らなければならない)。このような場合は、通常、単に「ダブ」と言う。もう一つ、「セミダブ」と言われるお手付がある。これは、こちらが自陣の出札を取って相手が相手陣の札に触れるお手付をした場合であり、一枚しか送れないものの、ダブの時と同じだけ差がつくので「セミダブ」と言われる。
お手付には、もう一つ、「ともお手付」略して「トモ」と呼ばれるものがある。
(a) 相手の手と衝突したために本人の意志とは無関係に出札の無い陣に触れさせられてしまった場合
(b) 双方が同じ詠札の時にお手付をした場合
(c) お手付をしている手(出札の無い陣の札に触れている)状態の手に札を取りに(お手付しに)行こうとして出した手が触れた場合(札を取りに行こうとしたか、しなかったのかの意志は問題ではなく、お手付している手に触れたという事実だけが問われることもある。ルールの解釈が別かれるところだが、大会などで相手ともめたら審判に判断を仰ぐのが最善とは言えないまでも次善の解決策であろう)
以上の(a)(b)(c)の場合は「トモ」と言って札の送りはしない(ただ、一方が空ダブで、他方が普通のお手付だったら、空ダブした方は相手から一枚だけ札を受け取らなければならないことはいうまでもない)。
では、次のステップでは、ルール上の細かい点について説明しよう。
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