○○ STEP 17 ○○

〜札を相手より早く取るために〜


[ I ]  『札を取る構えについて』

 札を取る構えは、詠まれる前に頭を持ち札の上段より前に出さないこと、手を競技線よ り前に出さないことを守ればルール状はどうでもいいわけである。実際、体格などによっ て個人差というものが出てしまうので千差万別である。要は自分さえ取りやすければよい のである。多くの人の構えを見て研究してみるのがいいのだが、ここでは一般的と思われ る構えを紹介しておこう。頭の中で「自分の構えはこのような感じかな」とイメージを組 み立てながら、読んでいただきたい。

 まず、札を実際に敵陣と自陣の各段の左右両端競技線いっぱいに一枚ずつ計十二枚並べ てみる。次に自陣の手前十数センチメートルくらいのところに膝がくるように両端の札から 等距離に正座をする(以下、右手で札を取る立場で説明するので、左手で取る人は左右逆 に読みかえてほしい)。正座をしたら、左と右の膝を拳(こぶし)一つから二つ分くらい 開き、右膝を約十センチメートル引く。次に左手を自陣左下段左端の札の一〜二センチメ ートル手前に札の短い方の辺と平行になるように置く。右手は競技線ギリギリからチョッ ト手前程に、卵を軽く握るような感じで、自然に無理な力を入れずに、指先が畳につく ように置く。そして、膝に身体の重さが少々かかるようにやや腰を浮かし、前傾姿勢をつ くる(この時、頭が自陣の持ち札の上段より前にでないように注意する)。大体、このよ うな感じで構えるが、体格などは違うので左手の位置や膝の位置は、以下のことを行な いながら調整してほしい。

 今述べた構えから、敵陣の右下段(こちらから見ると左)、左下段、そして自陣の右下 段、左下段の各札にまっすぐに手を出してみよう。当然、手だけを伸ばすのではなく、身 体の重心を移動させながらである。この時、どこに対しても同様に楽に自然に手の出せる 構えになるように手の位置・身体の位置(膝の位置・腰の高さなど)を工夫しよう。構え は体調によって変わることもある。しっくりこなくても、初めはあまり気にせず、自分に 適した構えを練習の中で見つけだすようにしよう。


[ II ]  『札の取り方について』

 札の取り方については、直接札に触れる方法と札押しという方法があることを既に説明 した。このどちらの方法で取るにしても有効なのが「払い手」という取り方である。札が 詠まれる瞬間に手を置いている場所から、目的の札の方向へ最短の進路で手を動かし、目 的の札を払い飛ばすのが払い手である。この場合、出札に触れられれば最良であるが、多 少ズレが生じても、競技線に対して出札より手前の札から払えたならば札押しで取ること ができる。最も多用されているのがこの「払い手」である。札を払う瞬間、最大限のス ピードを出せるようにすることと、払う直前に決まりを聞き別けて、異なる札であれば払 わずに手を浮かせるようにするのが、「払い手」の練習のポイントとなる。自陣・敵陣の 各段の両端に札を並べて練習してもらいたい。左右どちらもうまく払えるようになるまで 練習することが肝要である。この時の注意点を二点述べておく。一点は、最初から払う札 を見ていないことである。実際、何の札が詠まれるのかはわからないからである。敵陣中 央くらいにボーッと視線を置き、払う目標が定まった瞬間に視線をそこに集中させ、札を 払うよう練習しよう。もう一点は、払う時に「あそび(余裕)」のない払いをしないことで ある。たとえば、ある札を取りに行った時、身体が伸び切って重心は完全にそちらに流れ て、しかも腕も手も伸び切って倒れる寸前などという払いをしていると、もしも、その札 が違った場合に、お手付をしやすいし、そこから別の札を取りに行こうとしても取りに行 けなくなってしまうからである。払う寸前で聞き別けて、違う場合は他の札へ身体と手が スムースに動けるくらいの余裕は残しておかなければならない。この「あそび(余裕)」 が札を払うタイミングを取るのに役立つ。要は、払う瞬間まで伸び切らないようにする ことである。指先しかり、手首しかり、肘しかり、腰しかりである。どこか一箇所に余裕 があることで、お手付を避けることができるのである。以上の点を注意して、満足のいく まで練習してほしい。

 さて、札の取り方には、「払い手」以外にも「押え手」「突き手」「囲い手」などがあ るので、簡単に説明しておこう。

 「押え手」というのは、出札を上から押えて取る方法である。出札に直接さわるので、 押え手で札押しということはまずない。この際、注意することは、高い位置から押えに行 くと、札を押えるまでの時間がかかり、相手に下にもぐられて札を取られてしまうことで ある。押えて取るならば、できるだけ低い位置から手を持っていき、相手に下からもぐり こまれないように押さえるべきである。

 次に「突き手」であるが、これは出札 る取り方である上段の中央に置いてある札などを取る時に有効である。

 「囲い手」というのは、大山札などの決まり字までが長い札を取る時に使う。札に触れ ないように、なおかつ、相手の指先が札に触れることができないように出札を囲って取る わけである。もちろん、違う札が詠まれた場合には、誤って札に触れないように手をどけ る。

 以上が主な取り方である。他にも「渡り手」(同陣内にとも札が左右等に別れて置いて ある場合、両方を素早く払う取り方)とか「戻り手」(敵陣のとも札を取りに行って、 違った場合自陣に戻って取る取り方)などの名称があるが、これらは「払い手」「押え 手」などのバリエーションと考えてよいだろう。いずれの取り方も、上達するには練習あ るのみである。実際に札を並べて練習してみてほしい。


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