○○ STEP 19 ○○
〜札の送りについて考えよう〜
競技の中において、相手がお手付をした時、また、こちらが敵陣の札を取った時、相手
に対して自陣から札を送る。この送り札は、何も考えずに送ってしまってはならない。札
一枚の送りが、試合全体に大きく影響を与えるからである。札の送りは、いろいろな意図
を持って行なわれる。
初心者的発想には、自分の嫌いな札を送って自陣を万全にするとか、敵から送られてき
た札を送り返すというわりと消極的発想と、自分の好きな札を送ってその札を攻めて取っ
て相手にプレッシャーをかけるとか、とも札を敵陣にくっつけて一まとめにして狙って
取って相手に脅威を与えるという積極的発想の二つがある。こうした発想に特に誤りがあ
るわけではないが、札の送りについて、一つの考え方を紹介しておこうと思う。札の送り
は、その競技者がどのような送りをするかということでその競技者の「かるた」さえ決定
づけてしまうほど、「かるた」において大きな比重を持っている。したがって、練習を重
ねて自分の「かるた」に変化があれば、当然、札の送りも変化するので、一つの考え方に
とらわれることなく、融通性を持って読んでもらいたい。
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[ 札の送りのパターン ]
1.『自陣内でくっついているとも札を別ける』
これは、とも札が自陣内でくっついていたると本来三字決まりの札が二字で取られた
り、二字決まりの札が一字で取られたりすることによる。自分にとって取りやすいか
わりに、相手からも狙われやすいのである。自分にとって取りやすければ相手に狙わ
れてもいいではないかという声もあろう。しかし、自陣の札一枚を敵に取られれば、
相手から札が一枚送られてしまう。自陣の札を一枚取っても自陣の札が一枚減るだけ
である。何が言いたいのかというと、相手陣の札を取って自陣から札を一枚送るとい
う行為は、試合の流れを自分で組み立てることに関与するということである。最初に
並べる札は、アトランダムに札を持ってくるわけであるからまったくの偶然によるの
で、そこに自分の意志は関与しない(その持って来た札の並べ方には意志が関与して
いるわけだが…)。ところが、札を送るという行為には自分の意志が関与し、なおか
つ、相手が送られて困るであろう札を送ったとしたら、それは札の送りだけで相手に
対してプレッシャーをかけることになるからである。したがって、敵陣の札を取って
自分に有利になる札を送って試合を有利に導きたいという積極的な姿勢を持つことを
おすすめしたい。このような考えに基づいて、敵から狙われやすい自陣にくっついて
いるとも札を別けるように送る。こうした別れ札を見事に取り別けることが、相手に
プレッシャーを与えることにつながる。また、相手がお手付をしやすくなる。この場
合、自分にとってもお手付しやすくなるわけであるが、自分は常にこのようにお手付
しやすい状況をつくって練習しているので、相手よりはそのような状況に慣れている
分、自分はお手付をしないという自信を持って競技できる点で裕理である。以上のよ
うな理由から、とも札を別ける送り、すなわち、相手にとっても自分にとっても取り
にくい状況をつくる送りをしてほしい。
2.『敵陣より自陣に同音の札が多くある札を送る(敵陣になくて自陣に複数ある
同音の札を送る)』
たとえば、敵陣に「た」の札が一枚しかなくて、自陣に「た」の札が五枚あったと
する。そうすると「た」の札が詠まれたとき、自陣の札を敵に取られる可能性が高いと
いう状況といえる。したがって、こうした状況を是正するためにも「た」の札を敵に
送る。たとえとして、「た」の札を取り上げたが、何も「た」の札に限ったことではな
い。他の音で始まる札でも同様の状況が生じた場合も、同様に対処する。また、敵陣に
一枚もなく、自陣にばかり同音で始まる札が何枚もある場合も同様である。
3.『自陣にある単独札を送る』
自陣に一枚だけその音で始まる札があり、敵陣にない場合、この札は相手から狙わ
れやすい。敵陣に送って取るようにしたい。(もちろん、自陣にわざと残しておいて
相手の気を引く囮の札とするという意図の場合は送らない。)ただ、これは二字決ま
りの札であることが好ましい。決まりの長い札、特に四字決まり以上の場合は、自陣
に置いてあったほうが囲いやすいし、敵陣を攻めに行っていたとしても、決まりを聞
くまでに時間があるから戻りやすいためである。また、一字決まりの札の場合は、
ケース・バイ・ケースといえる。敵に一字決まりの札が多く、自陣に一枚しかないと
いうような場合は残しておくべきであろうし、自陣に一字決まりの札が多く、敵陣に
ないようならば送るべきであろう。自陣に様々な決まりの長さの札を持っているとい
うことは、相手にとっては、なかなか攻めにくい布陣なのである。さて、三字決まり
の場合が難しい。自分の札の好き嫌いや、お手付の可能性を考えあわせて、どちらの
陣にあったほうが自分に有利化を判断しなければならないからである。なお、何字決
まりであっても、この場所にあれば絶対に取られない自信があるけれども他の場所に
移った場合はどうかわからないという札を送る必要はないことを付け加えておく。
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以上、三つのケースについて紹介したが、これが絶対という送り方ではない。あくまで
一つの考え方として参考にしてほしいということである。また、試合の序盤・中盤・終盤
によって、その場の札の残り方で送り方も変わるので、慎重に決めなければならない。セ
オリーよりも直感が優れている場合も少なくないということを忘れないでほしい。
もう一点だけ、札の送りに関して述べておこう。とも札を別ける場合であるが、どの札
を相手に送るかということを決めておいて常に一定している人も多いということである。
たとえば、「ながか」と「ながら」が自陣にある時、自分は必ず「ながか」を送るという
ことを決めておくことで、送る場合の混乱(迷い)を減らすということである。但し、相
手から逆に送られてきた時は困ることもあるので、柔軟な対応が望まれる。いずれにして
も、送った札、送られた札については、常に暗記を入れなおし、間違えないようにしてほ
しい。
送り札をおろそかにしてはならない。送り札の一枚が勝敗をわけるのである。
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