祐子内親王家紀伊

音にきく高師の浜のあだ浪は
   かけじや袖の濡れもこそすれ


決まり字:オト(二字決まリ)
 音に聞くは、評判の高い。高師の浜は、大阪府にある地名。高師は音の「高し」を掛けた掛詞。 あだ浪は、むなしく打ち寄せる波のことで、浮気な人のたとえ。「かけじや」かけまいよという意味。 「かけ」には浪をかけるという意味と思いをかける意味を掛けている。袖が濡れるは、涙で袖を濡 らす意味。濡れは浪の縁語。

 掛詞や縁語の技巧と係り結びなどが使われているのは、これだけでもおわかりいただけるであろう。
 評判の高い高師の浜に寄せる波ではありませんが、浮気な人との噂の高いあなたに思いをかける ことはいたしません。浪が袖にかかって濡れるように、あなたに去られた悲しみの涙で袖を濡らすこと ないように。

 作者は、平経方の娘と伝えられるが、藤原氏の娘だったという説もある。母は小弁といい歌人と して知られる。紀伊守の兄がいたという説もあれば夫が紀伊守だったという説もあるが、 係累に紀伊守がいたので、「紀伊」と呼ばれたらしい。仕えた祐子内親王は後朱雀天皇の皇女。 祐子内親王は高倉一宮とも呼ばれていたので一宮紀伊ともいう。

 内親王と書かれているので、誤まって雲繝縁(繧繝縁)の畳で描かれている歌仙絵もあるため、 百人一首の札で同様の間違えをしているものもある。しかし、これらは明らかに間違えで、あく まで内親王に仕えた女房であるおで、通常の畳で描かれるのが正しい。

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2008年4月30日  HITOSHI TAKANO