愛国百人一首

丈部人麻呂

大君の命かしこみ磯に触り
   海原渡る父母をおきて


<愛国百人一首における決まり字>
オオキミノミコトカシコミイ(13字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
オ音20枚中の1
<歌意・鑑賞>
 大君のご命令をつつしみ守って海の磯に触れるほどにして苦しみながら海原を渡ります。 父母を残し置いて。
 「磯に触り」(いそにふり)、「磯」は石、すなわち海岸の岩礁のこと。「触り」は、 接触すること。航行中に岩礁にふれて苦しみ進む様子をあらわしている。「海原」は「うのはら」 と読む。東国から西国に防人として赴任するのに海を渡ることはないように思われるが、 駿河の海岸、浜名湖、近江の湖水など水路を渡った可能性もある。
 この歌は、難波で読まれている。難波から筑紫への今後の道程を謳ったとも考えられるが、 歌の実感からするとこれからの道程だとするとその実感を説明しきれないと、「定本」の 解説子は語る。
 しかし、体験していないことを真実のように詠むのが、歌詠みの力だと思うのだが…。
<コメント>
 丈部人麻呂(はせつかべひとまろ)は、相模国の防人。助丁(すけのよぼろ)であったと いう。丈部造人麿とも書く。「造」は姓で、「みやつこ」と読む。
 防人は太宰府に属し、防人司の支配を受けた。「さきもり」は、「崎守」・「嶋守」の文字を 当てることもある。
 この歌の実感は、海原を渡ることの実感よりも、何よりも第5句の「父母(ちちはは)をおきて」 の句の実感にあると思うのである。

 これで97リンクめとなった。あと3リンクとなった。

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2008年6月11日  HITOSHI TAKANO