愛国百人一首
神人部子忍男
ちはやぶる神の御坂に幣奉り
斎ふいのちは母父がため
<愛国百人一首における決まり字>
チハ(2字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
チ音4枚中の1
<歌意・鑑賞>
「ちはやぶる」は「神」にかかる枕詞。「神の御坂」(かみのみさか)は、神を祭って行路の
平安を祈って越える坂のことで、いわゆる「峠」である。信濃国伊那郡から美濃国恵那郡に越え
る現在の神坂峠と呼ばれる地であると言われている。「母父」は「おもちち」と読む。
神を祀ってある山坂に、幣を捧げて平安を祈る命は私のためではなく、父母のためである。
<コメント>
防人の歌。作者は信濃国の埴科郡の出身で、主張(ふみひと)という郡の書記職にあったといわ
れる。しかし、郡の中でのそれだけの地位にある人物が防人になったのかという疑問もあり、
主張丁の「丁」の字が落ちたのではないかとも言われている。「主張丁」ならば、主張が差し
出した丁ということになる。正丁といえば成人男子をさす。その丁である。
しかし、郡司の主張ではなく防人部領使に所属した主張があったも考えられる。そう考えれば
部領使の下で書記役を務めることができた防人とも考えられる。
いずれにしても、これだけの歌を詠めたのであるから、書記をつとめられるくらいの素養が
あったとしてもおかしくない人物であったのであろう。
これで90リンクとなる。いよいよ、カウントダウンに入る。
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2008年6月10日 HITOSHI TAKANO