愛国百人一首

楠木正行

かへらじとかねて思へば梓弓
   なき数に入る名をぞとどむる


<愛国百人一首における決まり字>
カエ(2字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
カ音8枚中の1
<歌意・鑑賞>
 全体が弓の縁語で構成されている。「梓弓」は梓の木で作った弓。その弓は「弓がへり」が あるので、「かへる」を生還するの意にかけている。「数に入る」の「いる」は「射る」を かけている。
 高師直軍6万に対し、正行軍は2千。出陣の前に如意輪堂の過去帳に書き残した歌である。 師直を追いつめるが、衆寡適せず、ここまでとさとって弟と差し違えてたおれる。時に23歳で あった。(四条畷の戦)
 今度の戦は大勢の敵に向かうのであるから生きて帰ることはあるまいと以前から思っている。 そのために、ここに過去の人数に入る自分の名をしるし留めて置くのである。
 このような大意になるだろう。
<コメント>
 南北朝時代の武将、楠木正成の嫡男。父親は大楠公と呼ばれるが、それに対して小楠公とも 呼ばれる。11歳の時に父と死別。後を追おうとして母親にとどめられる。
 四条畷の戦の前には、摂津南部で山名時氏を破る。
 父譲りの戦上手であったのだろうが、数の差はいかんともしがたかったのだろう。そして、 その数の差が南朝方の弱さでもあった。

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2008年5月27日  HITOSHI TAKANO