愛国百人一首

吉田松陰

身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも
   留めおかまし日本魂


<愛国百人一首における決まり字>
ミワ(2字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
ミ音6枚中の1
<歌意・鑑賞>
 安政の大獄により、29歳で刑場の露と消えた吉田松陰の辞世の歌である。
 たとえこの身は、武蔵野の地で朽ち果てようとも、国を思う大和魂は永くとどめておこう。
 この「留めおかまし」の「まし」の使い方が文法上の間違えとする指摘もある。「まし」は、助動 特殊型で、(1)反実仮想「もし…(た)なら…(た)だろう」(2)仮想「…たら(よかった)」 (3)不決断「…たらよいだろう」(4)推量「…だろう」の意となる。
 活用語「とどめおく」の未然形「とどめおか」につく形で、推量の意味になっている。未来への推量であり、「とどめておこう」と訳す。しかし、未来の推量だったら「とどめておこう」というよりも「とどめておくだろう」の訳のほうが適切だろう。ここでの思いは、「とどめておきたい」とか「とどめておくのだ」という願望や意思ではないだろうか。歌の良さは、未来の推量よりも願望や意思で理解したいように思う。
<コメント>
 小倉百人一首と愛国百人一首との共通の作者11人について、コメントをつけリンクをはったが、 それでは、前半の36番目までで終わってしまう。あまりにバランスが悪い。そこで、少し散らす ことにした。そこで、バランスよくリンクを増やすために鎌倉時代以後の時代について、有名人を ピックアップしてリンクすることにした。まずは、幕末の有名人ということで吉田松陰を取り上げた。

 長州藩士。幕末の思想家。松下村塾での教え子たちは、幕末・明治期に活躍する。
 ここでは、松陰の短歌を数首紹介しておきたい。

かくすればかくなるものと知りながら やむにやまれぬやまと魂

小夜深(ふ)けて共に語らん友もなし 窓に薫れる月の梅が香

世の人はよしあし事もいはばいへ 賤が心は神ぞ知るらん

帰らじと思ひさだめし旅なれば ひとしほぬるる涙松かな

大空の恵はいとど遍(あまね)けり 人屋の窓も照らす朝の日

親思ふこころにまさる親ごころ けふの音づれ何ときくらん

何事もならぬというはなきものを ならぬといふはなさぬなりけり

皇神の誓ひおきたる国なれば 正しき道のいかで絶ゆべき


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2008年5月11日  HITOSHI TAKANO