愛国百人一首
今奉部與曾布
今日よりはかへりみなくて大君の
しこの御盾と出立つ吾は
<愛国百人一首における決まり字>
キョ(2字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
キ音の札10枚のうちの1
<歌意・鑑賞>
「しこの」は「醜の」であり、よくない、悪いの意味。ここでは「とるにたらぬ」とか「つまらぬ」
と理解すればよいだろうか。大君の盾となるには、自分はとるにたらない謙遜しているのだが、
盾は大君のものであるから「御」をつけて「御盾」と言っているが、この「盾」は自分自身の
ことでもあるので、自分自身を謙遜し、自分自身に敬称をつけているということになる。
大君の持ち物を「醜の」ともいっていることになるので、深く考えると変な言葉の使い方とも
いえるのだが、その変な使い方が、自然としっくりくるのが、この歌の良さでもあるのだろう。
(防人として召された)今日からは、後を振り向きためらうことなく、大君のとるにたらない
御盾として出で立ちます。わたくしは!
<コメント>
作者は下野国の人で、防人として召し出された。「いままつりべのよそふ」と読む。「火長」で
あったと記されている。火長とは十卒長(十人隊長)である。一火とは、兵十人の単位である。
炊爨を一つの火で十人が共にしたところからこの名称となっている。
それなりに教養がなければ、これだけの歌は詠めないと思われる。
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2008年5月21日 HITOSHI TAKANO