藤原基俊
契りおきしさせもが露をいのちにて
あはれことしの秋もいぬめり
決まり字:チギリオ(四字決まリ)
小倉百人一首の紹介ページで、一首ずつリンクをはってエピソードめいたことを書いて
いるが、このページが20番目になる。
やっと20%、五分の一である。
さて、この歌のエピソードは、42番の清原元輔の項
で紹介していた話を書かなければならない。
百人一首で、「ち」の音で始まる歌は三首ある。この歌と先の42番「ちぎりきな」と
17番の「ちは」(在原業平)
である。
百人一首の競技では、最小差の決着は残り札が、自陣1枚、敵陣1枚となって1枚差で
勝敗が決まるケースである。これを「一:一」(いちいち)とか「運命戦」と呼ぶ。
私が学生時代から社会人になって初期のころ、この「一:一」で、自陣に「ち」の音で
始まる札が残った場合、意図的に残せなかった場合、意図的に残したに場合、両方のケース
があるが、たしか6連勝した覚えがある。最終盤なので、決まり字も一字の「ち」で
とれるケースもあったが、「ちぎりお」の4字決まりの状態で残ったこともある。
「ち」で自陣が出て守って勝って、「ちぎりお」で「ちぎりき」が出て相手がお手付きして
勝ったこともある。
3連勝くらいしたときから、私のジンクスになった。
「『一:一』になりそうだったら、自陣に「ち」の音で始まる札を残せ!」
というのがそのジンクスである。
そのジンクスでその後も3連勝したわけだが、偶然はそこまでだった。
「ち」が残るケースになったら、それを残すようにするというのは、終盤の送り札を
考える際に迷わなくてよいという効果をもたらしたが、一度、「ち」を残して、負ける
とあとは、ぼろぼろだった。自陣の「ち」は出なかったり、自分がお手付きをしたり…
極端な連勝や連敗はなかったが、結局、自陣に「ち」を残しても、相手が出たり自陣が
出たりということになった。
ジンクスは時として助けにもなるが、なんといっても確率論にはかなわないということ
を経験則で学んだ。
今では、ジンクスにとらわれず、試合の流れの中で、フレキシブルに対応している。
しかし、この経験で、「ち」の札に多少の愛着を持つことになったのは確かである。
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2008年3月 HITOSHI TAKANO