"競技かるた"に関する私的「かるた」論

番外編

“お手つき”の分類

Hitoshi Takano Feb/2012


 「お手つき」のパターンをわけて分類してみた。何かの参考になればと思う。

---------------------------------

パターン1(ひっかけお手つき)

 敵陣もしくは自陣の上段の札を取りに行く時に、逆の陣の札に触れてしまう。
(原因)慌ててしまい慎重さを欠きひっか けるケースもあるが、基本的には、素振りなどの払いの基礎訓練の不足が原因。
(対応策)実際に札を置いて、ひっかけや すい場所の札の払いを反復練習し、手と身体に覚えこませる。

パターン2(逃げそこね・囲いそこねのお手つき)

 札を取りにいって、決まり字を聞き分け、払いの手の軌道修正をしたものの 札をかすってしまったような場合や、囲ったと思った瞬間に札にふれているよ うな場合。
(原因)軌道修正の遅れもしくは目測等のミス
(対応策)実際に札を置いて、ギリギリの距離 で対象札から逃げるような払いを反復練習し、手と身体に覚えこませる。 囲い札もいろいろな場所で囲う練習を反復して行うことが大切である。

パターン3(送り札や送られた札の元の場所を払うお手つき)

 試合中に、敵陣に送った札の送る前の自陣の場所を払ってしまったり、敵陣 から自陣に送られた札の元あった敵陣の場所を払ったりしてしまうケース。
(原因)暗記、確認の不足・ミス。集中力 の欠如。
(対応策)移動のあった札は、繰り返し しつこく暗記を入れること。手や体の動きとともに確認するのも効果的である。 特に数回にわたっていったりきたりする札には注意をすること。

パターン4(前の試合の記憶が残っていて反応してしまうお手つき)

 前の試合の記憶が残っていて、前の試合の札の場所を払ってしまうお手つき。
(原因)暗記、確認の不足・ミス。集中力の 欠如。
(対応策)前の試合のことは、とにかく 「忘れること」で、目の前の札の暗記と確認を励行する。意図的に忘れる訓練を 日頃の練習の中でおこなう。

パターン5(聞き違いによるお手つき)

 聞き違いもいろいろなレベルがある。「S」音半音の聞き違いによるお手つき もあれば、「ほととぎす」の最初の「H」音が聞こえず「音にきく」を払ってし まったり、「なが」「なげ」の聞き違いなどもある。
(原因)ある札を狙いすぎていると半 音判断などで、錯覚に陥りやすい。初音の半音が聞こえない場合などは、読みか らの距離も問題や、読手の発音に起因することもある。あとは、本人の思い込み や集中力の欠如などが原因として考えられる。
(対応策)正確な半音判断をするには、 練習によって聞き分けられる耳をつくることであるが、それができない人は、 半音ではなく一音を正確にとらえることである。間違えそうな札を頻繁に確認し、 集中力を高めることが大切である。お手つきしそうだと思ったら、確実に聞いて から取りにいけばよい。相手にこそお手つきをしてもらうくらいの気持ちで、 拾えればもうけものといった気持ちのもちようも時には大切である。

パターン6(暗記不足によるお手つき)

 「ながか」だったか「ながら」だったかが不明のまま払ってしまうなど、 明らかに暗記不足のお手つきや、大山札を囲っては見たもののどちらの札だった かを失念しているケースなどもある。「きみがため」で囲ったはいいが、さて 「は」か「お」か完全に囲ってしまって札が見えないで間違えるなどのケースも ある。また、三字決まりなのにニ字決まりになったと思って払ってしまうお手つき もこのパターンにいれる。
(原因)暗記不足、決まり字の数え違い。
(対応策)暗記を繰り返しいれることと、 決まり字の変化をきっちり追うこと。その音に札が読まれたら、すぐに頭の中で 同音の札が場のどこにあり、残りはあと何枚と確認するとよい。

パターン7(待ちきれないお手つき)

 決まり字を待ちきれずに払ってしまうお手つきのパターン。パターン2の亜流とも いえるケース。
(原因)二字決まりはニ字で、三字決まりは 三字で払うことは、おそらく頭でわかっていても、身体がその前に反応してしまう のが原因か。タイミングのはかり方が経験的に不足している場合もあるだろう。
(対応策)異なる音であれば、逃げられる よう札の払いを反復練習し、手と身体に覚えこませる。また、「○字決まり」の タイミングというのを意識した払いの練習をすること。

パターン8(相手の手につられるお手つき)

 相手の手が出てくることであわててしまい、決まり字を聞かないまま相手の 手が伸びてきた方向に手を出して払ってしまうお手つき。
(原因)押され気味の試合展開の中などでの 精神的な余裕のなさ、自信のなさ、暗記の不確かさなど。
(対応策)暗記確認と慌てないという心の 余裕をもつこと。相手の手ではなく自分の記憶と自分のヒビキ(感じ)で 札を取りにいくこと。

パターン9(びっくりお手つき)

 大山札を囲っているときなどに決まり直前に腕や手に触れられ、びっくりしたり、 あわてたりして札に触れてしまった結果生じるお手つき。
(原因)音への集中の欠如。
(対応策)囲って安心しないこと。 決まりを聞くまで囲いを維持する精神力と集中力の研鑽。

パターン10(確信的お手つき)

 決まり字前と知りながら、あえて決まり字に前に払い、逆が出たときのお手つき。
(原因)こうした一か八かの賭けに出ると いうことは、相手に追い込まれているからで、起死回生の一発となるか、傷口を広げ る自爆行為というハイリスクの行動である。しかし、成功して得られるリターンは ハイリターンとはいいがたいと思う。原因は自明の理で、自らの選択である。
(対応策)相手に追い込まれていても、 地道に粘る習慣を日頃から身につけ、こうした博打的行動には出ないように心がける しかない。自分の意思でやめられるお手つきである。

---------------------------------

 「お手つき」は、相手にしてもらうもので、自分でするものではない。そうとわかって いてもしてしまうのが「お手つき」である。「シングル」「トリゾン」「ダブ」 「カラダブ」いろいろあるが、あまり、「お手つき」とは親しくなりたくないもので ある。


次の話題へ        前の話題へ

"競技かるた"に関する私的「かるた」論のINDEXへ
感想を書く
慶應かるた会のトップページへ
HITOSHI TAKANOのTOP PAGEへ

Mail宛先