"競技かるた"に関する私的「かるた」論

番外編

「五色かるた」を考える

〜20×5〜

Hitoshi Takano Feb/2018


 「五色かるた」をご存知だろうか?
 百人一首の20首ずつを色分けして、色ごとにグループになっているものだ。 TOSS(東京教育技術研究所)が考案して普及した。小学校などで、短い休み時間でも、20首ならば机の上で楽しめる。 そういう発想が開発にあったようだ。もちろん、百人一首に親しむという教育的効果もある。
 この「五色かるた」で、百人一首とかるた取りに興味を持って、競技かるたの世界の門を叩いた選手もいる。
 では、歌と色分けを紹介しよう。

<青色>
    アシ, アマツ, アリア, アサボラケア, アラシ, イニ, ウカ, オク, オモ, キリ,
    キミガタメオ, カサ, コノ, サ, チギリオ, ミチ, メ, モモ, ヨオ, ワタノハラコ

<緑色>
    オグ, キミガタメハ, ココロア, ココロニ, コイ, チハ, チギリキ, ツキ, ナツ, ハナノ,
    ヒトワ, ヤス, ユウ, ヨノナカワ, ワガイ, ワタノハラヤ, ワビ, ワスラ, ワスレ, ワガソ

<橙色>
    アイ, アケ, アワレ, アラザ, アサボラケウ, イマコ, イマワ, オーコ, オーケ, カゼソ,
    セ, ナニワガ, ナニワエ, ナニシ, ナゲキ, ハルノ, ヒトモ, ミカノ, ミカキ, ミセ

<桃色>
    アキノ, アリマ, ウラ, オト, カゼオ, カク, コヌ, シノ, タゴ, タチ,
    タレ, タカ, ツク, ナガカ, ナガラ, ナゲケ, フ, モロ, ヤマザ, ヨノナカヨ

<黄色>
    アマノ, アサジ, アワジ, アキカ, オーエ, コレ, シラ, ス, タマ, ハルノ,
    ハナサ, ヒサ, ホ, ム, ミヨ, ヤマガ, ヤエ, ユラ, ユウ, ヨモ

 10枚ずつ持って、源平風に取るのがポピュラーなようだ。カラ札なしでのゲームとなる。
 ただ、この方法だと「決まり字」は、この20枚の組み合わせで決まってしまうので、競技かるたの世界に入ったときには、 新たにきちんとした100枚での決まり字について覚えなければならない。
 例をあげれば、青色の場合、6字決まりの「わたのはらこ」が、この20枚の組み合わせだと「ワ」の一音目で取れてしまうのである。 同様に青色のなかでは、「イ」、「ウ」、「カ」、「コ」、「チ」、「ミ」、「モ」、「ヨ」も一音で取れる。もともと一字決まりの 「サ」と「ム」もある。「ア」札、「オ」札、「キ」札は2音目で取れることになる。競技かるたの選手としては違和感がある部分であるが, おそらく競技かるたへの導入という趣旨ではなく、教育ツールとして子供たちに百人一首に親しんでもらうという趣旨だったので、 5分類の際に、決まり字の概念は入れなかったものと思われる。
 この趣旨は成功し、多くの子供たちがこの五色かるたで百人一首の歌を覚え、百人一首のかるたに親しみをもってくれたようだ。

 さて、表現が適切かどうかは置いておいて、この20首ずつ5色にわけての5分類を競技かるたの導入に区分しなおしたのが、 大石天狗堂社製の「きまり字五色」である。こちらは、最初の音が同音のものはすべて同色に分類されているので、競技かるたの 決まり字の概念がわかりやすくなっている。
 歌と色分けを紹介しよう。

<赤色>  (ム・ス・メ・セ・ウ・ツ・シ・モ・ユ・チ・ヒ)
    ウカ, ウラ, シラ, シノ, ス, セ, チハ, チギリキ, チギリオ, ツキ,
    ツク, ヒサ, ヒトワ, ヒトモ, ム, メ, ユウ, ユラ, モロ, モモ

<青色>  (イ・ミ・タ・コ)
    イニ, イマワ, イマコ, コレ, コイ, コノ, コヌ, ココロア, ココロニ, タチ,
    タレ, タマ, タゴ, タカ, タキ, ミセ, ミチ, ミヨ, ミカノ, ミカキ

<黄色>  (フ・サ・ホ・キ・ワ・オ)
    オグ, オク, オモ, オト, オーエ, オーケ, オーコ, キリ, キミガタメオ, キミガタメハ,
    サ, フ, ホ, ワビ, ワガソ, ワガイ, ワスレ, ワスラ, ワタノハラヤ, ワタノハラコ

<紫色>  (ナ・ヤ・ヨ・カ)
    カク, カサ, カゼソ, カゼオ, ナツ, ナニシ, ナニワエ, ナニワガ, ナゲキ, ナゲケ,
    ナガカ, ナガラ, ヤエ, ヤス, ヤマザ, ヤマガ, ヨオ, ヨモ, ヨノナカヨ, ヨノナカワ

<緑色>  (ア・ハ)
    アキノ, アキカ, アマノ, アマツ, アサジ, アサボラケア, アサボラケウ, アシ, アヒ, アケ,
    アワレ, アワジ, アラシ, アラザ, アリア, アリマ, ハナノ, ハナサ, ハルス, ハルノ


 こちらのほうが、競技かるた選手には違和感のない分類である。最初は10枚ずつもってカラ札なしのゲームをして、決まり字の概念を 覚え、その後、5枚ずつもっての10枚カラ札のゲームに移行すれば、競技かるたの導入にも有効に使えるだろう。
 「きまり字五色」には、ダウンロードできる読み上げアプリがあり、色別の読みを専任読手の音声で練習に使えるメリットも大きい。
 もちろん、競技かるたをやっている人たちならば、専用の札を購入せずとも、普通の練習に使っている取札を自分で札分けすれば同様の練習が可能である。
 もし、興味があるようならば、手本になるようなものではないが、私の一人練習の動画もある。→Click!

 25枚対25枚の通常練習では、上級者に勝てない初級者でも、この「きまり字五色」のどこかの色を使って、5枚対5枚で対戦すれば、勝利の確率が高くなるように思う。 ぜひ、練習で試してみてはいかがだろうか?


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