数字が語ること(5)

名人戦の記録から(ii)

Hitoshi Takano JUN/2010

 前回に引き続き、名人戦の記録を見てみよう。
 再び、種村永世名人と望月元名人をメインに数字を見てみたい。二人が名人戦で対戦した 33期・37期・42期の3期合計の9試合(種村6勝、望月3勝)から平均をみてみよう。
氏名
区分
自陣平均
敵陣平均
お手付平均
備考
種村貴史
対望月全試合
8.67
13.89
9試合
望月仁弘
対種村全試合
11
9.22
2.33
9試合
種村貴史
対望月勝ち試合
7.17
15.83
0.67
6勝
望月仁弘
対種村勝ち試合
14
11
1.67
3勝
種村貴史
対望月負け試合
11.67
10
1.67
3敗(平均3.33枚)
望月仁弘
対種村負け試合
9.5
8.33
2.67
6敗(平均9.17枚)
 望月が対種村戦においては、取った枚数が勝ち試合においても“敵陣<自陣”と、 前回みた望月の全試合平均と勝ち試合平均の“敵陣>自陣”は実現できていない。
 これは、種村に望月らしさが封じられていたということの証左ではないだろうか。 それでも、種村から名人位を奪取できたのは、この奪取の時の種村も“敵陣<自陣”と それまでの種村らしさが出ていなかったからといえるのではないか。

 さて、望月は西郷名人と45期と48期の名人戦で8試合(望月2勝、西郷6勝) 対戦している。同じように数字を見てみよう。
氏名
区分
自陣平均
敵陣平均
お手付平均
備考
西郷直樹
対望月全試合
11.38
12.63
1.38
8試合
望月仁弘
対西郷全試合
11.5
9.88
1.63
8試合
西郷直樹
対望月勝ち試合
11
13.17
1.33
6勝
望月仁弘
対西郷勝ち試合
12
11.5
2勝
西郷直樹
対望月負け試合
12.5
11
1.5
2敗(平均3枚)
望月仁弘
対西郷負け試合
11.33
9.33
2.17
6敗(平均5.17枚)
 望月の負けの平均値は、種村戦と同じく封じられている数字といえるのではないか。勝ちの ほうの平均値は取った枚数は同じで、0.5枚分敵陣の取りが望月のほうが多く、お手付き0 の望月が西郷のお手付き1.5のアドバンテッジを活かしたというところだろうか。

 では、時代も違うので適切であるかといえるかどうかは別として、望月をひとつの物差しと して、種村と西郷の比較を試みてみよう。
氏名
区分
自陣平均
敵陣平均
お手付平均
備考
種村貴史
対望月全試合
8.67
13.89
9試合
西郷直樹
対望月全試合
11.38
12.63
1.38
8試合
種村貴史
対望月勝ち試合
7.17
15.83
0.67
6勝
西郷直樹
対望月勝ち試合
11
13.17
1.33
6勝
種村貴史
対望月負け試合
11.67
10
1.67
3敗(平均3.33枚)
西郷直樹
対望月負け試合
12.5
11
1.5
2敗(平均3枚)
望月仁弘
対種村負け試合
9.5
8.33
2.67
6敗(平均9.17枚)
望月仁弘
対西郷負け試合
11.33
9.33
2.17
6敗(平均5.17枚)
 種村の対望月戦の勝利は、名人在位3期目(2度目の防衛戦)と7期目(6度目の防衛戦)、 西郷の対望月戦の勝利は、名人位取得時(1期目)と4期目(3度目の防衛戦)である。この 違いを数字を見る上での考慮に入れることは必要であろう。
 取った札の枚数でみれば、敵陣の平均と自陣の平均において、種村と西郷の数字の違い から何を読み取るか。望月のそれぞれの6敗の数字などと比較しながら考えてみるのも 興味深いだろう。

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