むすめふさほせ論

〜音別の話(2)〜

Hitoshi Takano Mar/2011

 「むすめふさほせ」と言えば、百人一首関係の言葉の中では、わりと人口に膾炙して いる言葉であろう。
 一字決まりの札7枚の覚え方として耳にするものである。
 この7音の札の札の特徴は何かというと、試合開始から試合終了まで、決まり字が 変化することのない札なのである。このことが最大の特徴といって差し支えない。
 他の音の札は、前に○○○が読まれたからこの札は二字決まりになったとか、◎◎が 読まれたから一字決まりになったとか、試合の展開の中で、決まり字の変化を確認する 作業があるが、この7音の札については、最初から一字決まりなので、決まりの変化を 確認する必要がない。
 読まれたら、それで終わり。読まれていなければ一字決まりなのである。
 競技かるたを始める時に、この札から覚え始めることも多いので、印象にも強く残る し、決まり字の変化を気にする必要もなく、同音のお手つきということはないので、 取りやすい札と認識されているのではないだろうか。
 ところが、M音(む・め)やS音(さ・す・せ)などでお手つきをすることも多い。 さらにF音(ふ)とH音(ほ)でお手つきをするケースさえある。
 自陣と敵陣を行ったり来たりで自陣にあるのに敵陣を払ったり、その逆をしたりと いう経験者もいるのではないだろうか。
 このあたりは、集中力と確認の繰り返しで防げることだが、半音(子音)での判断 はやむをえない危険性をはらんでいる。
 相手も早い、攻撃のターゲットという意識が、子音まで意識した取りを意識させる のだろうが、そこは、リスクを冒すか、正確さを重視するかの個人の判断の領域でも ある。子音が確実にわかるという耳の良さをもっていればよいが、そうでないのなら 考慮しなければいけない点であろう。
 「むすめふさほせ」の札について、もうひとつ注意しておきたい。
 それは、「むすめふさほせ」という括りで覚えておくことの危険性である。
 「むすめふさほせ」というのは、いわば語呂合わせに過ぎない。試合の中では、 一括りにせず、一枚一枚というか、一音一音を個別に「む」・「す」・「め」・ 「ふ」・「さ」・「ほ」・「せ」と暗記を入れるべきなのである。
 「む」「す」「め」と並べておいて、「むすめ」と暗記を入れるケースがあるが、 このように「娘」というように意味のある言葉で覚えられてしまい、「む」には 反応しやすいが、「す」や「め」への反応が遅くなってしまうことになりかねない ので要注意である。
 この7音については、一音一音を個別に暗記を入れることが大事である。

[ひとりごと]
 「むすめふさほせ」に好き嫌いがあると、それは不利である。すべてが「好き」でしかるべきで、この一字決まりが好物でないときびしい競技の中ではハンデを背負うことになるだろう。好きでなくとも早く取れれば別に問題はないのだが…。
 しかしながら、私には好きなグループと嫌いなグループが明らかに存在する。「む」「め」「せ」が好きなグループで、「ふ」「さ」が嫌いなグループである。「ほ」と「す」が中間である。これは感覚的なものなのでなんともいいようがない。「ほととぎす」で「おとにきく」をH音がうまく聞こえずに払ってしまうことはあるが、嫌いではない。「ふ」のH音が聞こえないこともあるが、これは「うか」などに間違えることもあるようだが、「ほ」のお手つきよりは件数が少ないように感じる。
 好き嫌いは、お手つきしやすいとか聞きわけにくいということで嫌いとなるケースもあるが、それよりも何か別のところで生じているようだ。
 嫌いな札こそ、いつも気にかけて早く取るように意識しなければならないのかもしれない。

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