“な”札&“お”札論

〜音別の話(3)〜

Hitoshi Takano Apr/2011

 3月11日の東北地方太平洋沖地震から、初めての当コーナーの更新となります。地震・津波の被害にあわれた方々には、心よりお見舞いを申し上げます。
 かるた界の中でも、今回の災害について、さまざまな対応が行われているとうかがっております。被災地方のかるた会関係者の方々にもお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い、復興をお祈りいたします。
 各大会も、中止した大会もあれば、実施されている大会もありますが、かるた愛好者が粛々と競技を行い、技量を競うことが、被災されたかるた関係者への励ましに少しでもなるのであれば、斯界に関わる一人としてうれしいことと思います。
 当コーナーも楽しみにしてくださる方がいれば、時期を延ばすよりも定期的に掲載するほうがよろしいのではないかと思い、今月分を掲載いたします。


 「あ」札で始まって、「むすめふさほせ」に続いた音別の話も第3回となった。 8枚ある「な」札と7枚の「お」札を一緒にということに違和感を感じるかもしれない。 7枚ある「わ」札と「お」札を一緒にしたほうが自然だと感じる人のほうが多いだろう から…。
 しかし、「な」札と「お」札には、「なに」始まり3枚と「おー」始まり3枚という 「あ」札の「あさ」始まり3枚に匹敵する3枚組があるという共通点がある。
 ただ、「な」札と「お」札をセットにしたのは、実はそれだけの理由なのである。

「な」札論

 「な」音で始まる札は、「あ」音で始まる札についで多く、8枚ある。しかし、「あ」 札からみれば、半分である。したがって、12.5枚読まれると1枚「な」札が読まれる 程度の割合である。初形では、両陣で4枚の出現が理論値である。自陣と敵陣の別れも 確率的に2枚ずつあるということになる。
 「な」札には、「なに」始まりが3枚ある。4字決まりの「なにわえ」「なにわが」と 3字決まりの「なにし」である。この3枚についていえば、2字決まりになるには、他の 2枚が読まれなければならないということで、特徴があるといえる。
 2字決まりの「なつ」は、わりと単独で意識しやすいが、残りの4枚が"NAG"音始まり なので、お手つき注意札である。
 「ながか」「ながら」と「なげき」「なげけ」である。「なげ」のほうは"NAGEK"音まで 共通だから、余計に間違えやすい。カラダブの経験や目撃事例からも、実は"NAG"絡みが 複数回ある。
 自分がお手つきしないように、暗記をきちんと入れるのは基本だが、相手もお手つきを しやすいという認識をしておけば、札の送りの時に意識する札となるに違いない。
 「な」札の"NAG"カルテットは、特に要注意である。

「お」札論

 母音で始まる札は「あ」「い」「う」「お」である。「あ」札は16枚であるが、「い」 札は3枚、「う」札は2枚と少ない。「お」札は7枚ということなので、百人一首の音別 の中では多い部類にはいるだろう。
 「あふことの」と表記される札は、「おーことの」と読まれるので「お」音の札に分類 される。
 「お」札の特徴は「おー」で始まる3字決まり3枚と、2字決まり4枚の構成であると いうことだろう。
 「おー」は2字決まりになるまでに他の2枚が読まれなければならない。2字決まりに なったとしても、読みは「おお」ではなく「おー」なので、「お」の他の2字決まりとは 違うテイストとなる。
 「おーけ」「おーこ」と「おーえ」なのだが、「おー」+「K」音は、お手つき要注意 である。「おーえ」は伸びたあとに子音が入らないので、この2枚とは異なるテイストで ある。この聞き分けができれば素晴らしいと思う。
 2字決まりは「おも」「おと」「おく」「おぐ」で、「おく」「おぐ」がお手つきを しやすいと言われている。"OG"と"OK"なのだが、子音の際に喉をいったん閉じる際の間 が間違えさせるようだ。
 自身では注意して、相手にはお手つきをしてもらいたい札である。
 「おぐ」「おく」の子音に入る前の間の違いで音が判断できる耳があれば、これまた 素晴らしいことである。
 「お」音の札も、このあたりの特徴を考えた送りを心掛けたいものである。

[ひとりごと]
 「な」札のNAG音は、私の場合、明確に好き嫌い・表裏がある。「ながら」「なげき」が好き札で、表であり陽である。そして、「ながか」「なげけ」が嫌いな札であり、裏で陰である。そして、この友札が二枚自陣にあると私は、この嫌いなほうの札を送る。この二枚は、好き嫌いで定位置まで違う。「なにわが」と「なにわえ」は好き嫌いは現在ないが、表が「なにわが」で裏が「なにわえ」である。そして、送る場合は「なにわが」を送る。そして、「なつ」については「あきの」「あきか」や「はるす」「はるの」の季節グループの札に親和性を感じている。
 「お」札は、「おと」と「おおえ」が好きな札である。嫌いなほうが「おも」と「あふこ(オーコ)」である。「おおえ」は陽で、「おほけ」と「あふこ」は陰のイメージである。「おく」「おぐ」は陰、「おと」は陽のイメージである。
 「おー」の3枚のうち敵陣に最後まで送らないのが「おおえ」である。「おと」も自陣に残すことが多い札である。こうした自分ルールは役立つこともあるが、こだわりすぎないほうがよいこともあるのでフレキシブルな対応を心がけたいものである。

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