うつしもゆ論
〜音別の話(4)〜
Hitoshi Takano May/2011
今回は、音別の話の4回目である。今回は、「うつしもゆ」を取り上げる。
「うつしもゆ」は、すべて同音が百枚中2枚であり、ニ字決まりである。その
最大の特徴は、同音の片方が一枚読まれたあとは、一字決まりになるということ
である。
一字決まりは「むすめふさほせ」であるが、たとえば、一枚目に「うつしもゆ」
のうち1枚、たとえば「う」が読まれれば、次に「う」が読まれるまでの間、すな
わち最大残り98枚の間(最後の一枚は読まれることはないので)、その札は一字
決まりになるのである。
場合によっては、その試合において、ニ字決まりである期間よりも一字決まりで
ある期間が長いのである。
以上にように「うつしもゆ」のポイントの一つは、「同音の一枚が読まれたら、
残りは『一字決まり』と強く認識すべし」ということである。
ただし、一字決まりになったら、注意すべき点がある。「う」は「ふ」と聞き間
違えないように注意したい。「ふ」の“FU”の“F”音が聞こえないと、「う」と間違え
てしまうからである。「し」の“S”音も、「さ」「せ」「す」の“S”の擦るような
子音と聞き違えないようにしないといけない。「も」の“M”音も、「む」「め」と
子音で間違えないことが肝要である。
二字決まりの際に、二枚を自陣に置いておいて(並べて置くことが多いようだが)、
一字決まりのようにしておけば、その札は二枚セットでその試合はずっと一字決まり
感覚でいけるではないかという考え方もあるだろう。さきほどは「うつしもゆ」の
一字性をポイントとして強調した。しかし、もう一つのポイントは、二字決まりの
別れとしての「うつしもゆ」であり、同音二枚をセットで自陣に置いて別けないと
いうことは否定しておきたい。
「うつしもゆ」の同音2枚が、場にある場合は、敵陣と自陣に別ける形を基本形と
して考えるべきである。したがって、自陣に二枚揃っていたら、できるだけ早く一枚
を敵陣に送り別けることを励行してほしい。
敵陣を攻めて、その札でなければ、有無を言わせず自陣の札なのである。これほど
わかりやすく、別れにおける敵陣への攻めと、敵陣でない場合の自陣への戻りを実践
できる組み合わせはない。(他の音で決まり字の変化でこのようになるケースはある
が、決まり字の変化を気にせずにできるということが特徴なのである。)
しかも、二字決まりというスピード感こそが、醍醐味である。とくに「つ」は
二音目の子音が“K”音で共通なので、ミスも起きやすく、この5音の中では特に
要注意である。
相手より先んじて攻めの手を出すことで、相手の攻撃の手を牽制することも可能で、
相手のお手つきを誘うこともしばしばある。
このポイントは、試合の流れを引き寄せる上でも重要である。
ぜひ、「うつしもゆ」は二枚ある際には、別けて取り分けられるようにしておき
たいものである。
さらに、単独の二字状態の「うつしもゆ」も攻撃目標としやすい札である。この点
も押さえておきたいポイントである。
[ひとりごと]
同音が二枚自陣にきた時に敵陣に送る順は、私の中では決まっている。現在は、「うら」「つく」「しら」「もろ」「ゆら」が送るほうの札である。しかし、しばらく練習から離れていると変わったりもする。ただ、「もも」と「しの」を自陣に残す原則は、30年以上変わっていない。この2枚は好きな札であると言い切れるからであろう。他の3音の札ではどちらが好きかと言い切れないために、自分法則が変わることもあるのだろう。
決めておくのはいいが、初形の別れや、敵からの送りが逆の場合もあるので、充分注意しておきたいところである。
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