いちひき論
〜音別の話(6)〜
Hitoshi Takano Jul/2011
「いちひき」は、百枚中、同音が3枚ずつある4種の音を並べたものである。
従来的な解説では、音ごとに二字決まり1枚と三字決まり以上の友札という構成を
説明することではなかっただろうか。
今回は、決まり字の字数で括りながら見ていこうと思う。
ニ字決まり
「いに」「ちは」「ひさ」「きり」この四枚が、最初から二字決まりの「いちひき」
札である。友札グループ2枚が読まれれば一字決まりとなるが、それまでは、最初から
二字決まりの札である。
二字なので、目標にしやすく攻めやすい札である。そして、自陣で守りやすい札でも
あると思う。
同音の「ニ字+三字」(「い」「ひ」の場合)が自陣にあった場合、二字を送ること
は充分に考えられると思う。しかし、「二字+四字」(「ち」の場合)と「二字+
六字」(「き」の場合)はどうだろうか。二枚で決まる前だったら、自陣でこの二字
決まりが取れるならば、無理に送らなくともいいようにも思う。
四字になるとすでに囲いのタイミングとも言えるから、二字を送って攻めて戻る
というパターンであっても、一呼吸分間があいて、相手にも守って攻める隙を与えて
しまう可能性が大なのである。
それで、あわてて戻って、お手つきをしたりするくらいならば、自陣で二字を守っ
てから、自陣の長い決まりを落ち着いて囲えるように思うのである。
相手は、決まりの短いほうから攻めてくるだろう。その分では、自陣の距離の利を
とって、異なれば長い決まりのほうに手を出す際に、自陣の利で相手より充分な体制
で囲えるのではないだろうか。
「ち」と「き」に関していえば、二枚で決まってしまうまでは、無理に二字を送ら
ないという可能性を考えてはいかがだろうか。
三字決まり
「いまこ」・「いまは」、「ひとは」・「ひとも」が三字決まりである。ふつうに
二枚自陣にくれば、送り札として別けたい札である。
この二枚とともに「いに」「ひさ」の二字決まりがあったら、そこは敵陣と自陣の
別れ具合を見ながら、攻守のコンビネーションをとらなければならない。もしも同音
3枚が自陣に来ていたら、まずは、三字を別けて、お手つきの危険を感じながらの
攻防を実践したい。三字二枚を自陣に残したまま、二字決まりの別れを擬制するのは
お手つきの危険性を避けているようで消極的に感じるからである。
四字決まり
「ちぎりき」「ちぎりお」の二枚が四字決まりである。
四字決まりは、囲えないことはないが、他の同音の札との状況に応じては、囲わず
に取るということもある感じの微妙なポジションの決まり字数だと思う。
「ちは」は二字として意識して、四字決まりであるうちは、「ちは」とは別系列の
二枚というような感覚でとらえておきたい。
同音3枚が自陣に来た時の考え方は三字決まりと同様である。
六字決まり
「きみがためは」「きみがためを」の二枚である。後者の札は、音でいえば「きみ
がためお」と書いたほうがよいだろう。
決まる前は、「きり」とは切り離して、大山札の意識で囲いにいく感覚でよいと
思う。ただし、「きり」は「きり」で二字決まりとしてしっかり意識しておきたい
ところである。
「あさぼらけ○」や「わたのはら○」に比較して、同音が二枚読まれただけで
一字決まりになるので、わりと早く一字決まりになりやすい大山札という意識で
決まり字の変化に応じて置き場所を考えたり、送りのタイミングをはかりたい。
決まりの変化
同音3枚のうち、まっさきに二字決まりが読まれるか、三字以上がでるかで、
使い方が変わる。
三字以上が最初に出れば、残りは二字決まりの関係で、スピードを求められる
攻防の札となるし、最初に二字決まりがでれば、残りは三字以上でテクニック
が求められる攻防の札になる。
このあたりが、「いちひき」の札の面白さかもしれない。
定位置
定位置は、同音3枚を並べるタイプと、三字決まり以上2枚と二字決まり1枚を
わけるタイプが多いように思う。
3枚ばらばらにわけて配置するのは、初形で同音3枚が自陣に来た時に、定位置から
多少はずして、敵の狙いを分散する意図で配置するケースであろう。
「いちひき」のそれぞれの音で二字と三字以上の配置関係をどのようにしている
かというのは、各選手の個性の発露のようで注目してみると面白いように思う。
[ひとりごと]
二字決まりではない友札のイメージと自陣2枚あるときの札の送りを表にまとめてみた。
|
好きか嫌いか |
陰か陽か |
明か暗か |
送るか残すか |
いまは |
少々嫌 |
陽 |
明 |
送 |
いまこ |
好 |
陰 |
暗 |
残 |
ちぎりき |
好 |
陰 |
明 |
残 |
ちぎりお |
やや嫌 |
陽 |
暗 |
送 |
ひとは |
多少嫌 |
陽 |
明 |
送 |
ひとも |
好 |
陰 |
暗 |
残 |
君が為は |
好 |
陽 |
明 |
送 |
君が為お |
好 |
陰 |
暗 |
残 |
「嫌い」というイメージはそれほど積極的な嫌いのイメージというより、過去のお手つきの記憶との結びつきで、他の好きな札との比較での話である。「きみがため」はどちらも好きな札である。
「ちぎりお」は「あはれ」で払っってしまった苦い経験をもつせいなのだが、最近の送り感覚では「ちぎり」の送りは、その場その場で揺れ動きがちである。一応、原則で「送るか残すか」を記してみた。
まったくの個人的なイメージであるので、参考にはしないでほしい。
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