大中臣能宣朝臣
御垣守衛士の焚く火の夜は燃え
昼は消えつつものをこそ思へ
決まり字:ミカキ(三字決まリ)
「宮城を守る衛士が警備のために燃やしている火が、夜は燃えて昼は消えるように
あなたを思う気持ちも、夜になると燃えるようになるのです。」という女性への思い
を歌った歌である。
律令制においては、二官八省一台五衛府という制度であった。
二官:神祇官、太政官
八省:民部省、中務省、式部省、大蔵省、治部省、兵部省、刑部省、宮内省
一台:弾正台
五衛府:衛門府、左右衛士府、左右兵衛府
なお、五衛府は改変を繰り返し、のちには左右近衛府、左右衛門府、左右兵衛府の六衛府
になる。
衛士とは、この五衛府制下で、実際に警護の任にあてられる徴発された者である。
作者の大中臣能宣は、神祇官であり、神祇大副をつとめた。伊勢神宮の祭主でもあった。
中臣家は、神に仕える職務を家の職としている一族で、その中でも「大」がつく大中臣
家は、代々神祇官としての職務をはたした。能宣の孫の伊勢大輔も、父親が伊勢で祭主を
していたところから呼ばれた名前である。
下の句が「ひ」の音で始まる取札は百枚中、十枚ある。そのうち9枚までが「ひと」で
始まるのだが、この「みかき」の一首のみ「ひる」で始まる。
「ひ」の後ろの「る」の字が、目だって見えるから不思議なものだ。
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2008年4月11日 HITOSHI TAKANO