伊勢大輔

いにしへの奈良の都の八重桜
   今日九重に匂いぬるかな


決まり字:イニ(二字決まリ)
 奈良から僧都が、八重桜を奉った時に、紫式部が今年の新参者が受取役だと 言って、新人に受取役をさせた。この受取役が伊勢大輔であった。
 伊勢大輔の父は大中臣輔親で、祖父は「みかきもり」の大中臣能宣である。大中臣は神祇の 家柄で、父親が伊勢の祭主をしていたところから、伊勢大輔と呼ばれることに なった。
 さて、桜の受取役を受けた伊勢大輔だが、ただ受け取ればいいというもの ではなかった。その場にいた藤原道長が「ただには取り入れぬものを」と 言ったものだから、歌を詠んで受け取らなければならなかった。
 そのときの歌が、この「いいしへ」の歌である。「昔の都奈良から届いた 八重桜が今日この宮中に咲いて匂っていることです」という意味であるが、 当意即妙の歌ではあるが、奈良=七、八重=八、九重=九と数字の連続を 読み込むという技巧までこらしているのである。
 百首のうち「い」の音で始まる歌は三首。この「いに」は二字決まり、 その他「いま」で始まる「いまは」「いまこ」の三字決まりが二首である。  ちなみに百首中、3枚ずつある音は「いちひき」と覚える。
 百人一首では、「い」が複数あっても不思議ではないが、「いろはがるた」 に「い」が2枚あるというと不思議だろうか?
 「いろはがるた」の場合、いろは48文字からなるので、「い」と「ゐ」 があるので、音としての「い」(I)は2枚あるのである。「ゐ」は(WI) ではないかというかもしれないが、現在は、発音上の区別はしていないので 結局は「い」となるのである。「いろはがるた」は、すべて一字決まりだと おもっては大違いなのである。なお、ほかにも「ゑ」と「え」、「を」と 「お」、そして「京」の札の存在がある場合は「京」と「き」など間違えない ように注意しなければならないのである。

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2008年3月30日  HITOSHI TAKANO