中納言兼輔
みかの原わきて流るるいづみ川
いつみきとてか恋しかるらむ
決まり字:ミカノ(三字決まリ)
上の句は、下の句の「いつみきとてか」を引き出すための句であるが、
この上の句を聞くと、自分の想像の中でしかないのだが、不思議と小さな川
の流れる情景が目に浮かぶのである。
「いったいいつ見たというのであろうか、こんなにあの人が恋しいという
のは…」という下の句の意味がこの歌のメインであり、上の句は「いづみ川」
から「いつみ」の言葉を持ってくるための仕掛けにすぎないのに、私の中に
あっては、この歌は泉から流れ出す小川のイメージなのだ。
作者は藤原兼輔。加茂川の堤の下に家があったので堤中納言と呼ばれた。
さて、「みか」で始まる歌は、ほかに「みかき」があるのだが、「みかき」に
比べて、「みかの」のほうがおなじ「みか」でも柔らかい感じがするのだ。
「みか」の音は同じでも「MIKA-NO」と「みか」に続いて「NO」とN音が
来るのと、「MIKA-KI」と「みか」に続いて「KI」とK音が来るのとで、
N音に続くほうが音が丸くなるように思うのである。
しかし、札を取るときは、個人的には丸い音より堅い音のほうが取り
やすいように思う。とは言うものの、聞き分けに失敗し、お手つきをして
しまうのではあるが…。
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2008年3月 HITOSHI TAKANO