愛国百人一首

高橋多一郎

鹿島なるふつの霊の御剣を
   こころに磨ぎて行くはこの旅


<愛国百人一首における決まり字>
カシ(2字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
カ音8枚のうちの1
<歌意・鑑賞>
 「ふつの霊(みたま)」とは、神武天皇が熊野入りしたときに配下の者が南海の毒気で昏倒 する中、土地の神、高倉下命(たかくらじのみこと)が夢を見て武甕槌命から霊剣を賜った。 これが「ふつの霊」の剣である。これを献じられた神武軍は、勢いを盛り返して進軍したと いう話に基づいて用いられている。
 「御剣」は「みつるぎ」と読む。
 常陸国鹿島神宮に奉られている「ふつの霊」の神剣は、手に取ることも拝することもできない が、自分の心の中に研ぎ澄まして決死の旅で出て行くのだ。
<コメント>
 水戸藩士で、斉昭に仕えた。藩の同志金子孫二郎らと大老 井伊直弼襲撃計画をたてる。その時に水戸を出るときの歌がこの歌である。
 万延元(1860)年2月に水戸を出て上方を目指す。京阪の地で策動するためであった。 3月3日、風雪にあうが、同志の桜田門外の襲撃の日の雪を天の憐れみと感激したという。
 実際、この雪で、井伊家の護衛は、刀の鍔のところから雪が入らぬようにおおいをしていた ために襲撃の第一撃に対抗できなかったのである。
 大阪に到着するも、幕府の捜索の手は厳しく、覚悟を決めて自決する。47歳であった。

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2008年6月1日  HITOSHI TAKANO