藤原道信朝臣

明けぬれば暮るるものとは知りながら
   なほうらめしきあさぼらけかな


決まり字:アケ(二字決まリ)
 後朝の歌である。通い婚の当時、朝になると男は、女のもとを去って、帰らなければなら ない。そして、また、夜に通ってくるのである。
 朝になったら、また、夜が来る。この事実を女性への思いを表すべくたくみに読んだ歌で ある。
 作者が、20代の前半で亡くなったことを考えるとまた、この歌に対する感想も変わる かもしれない。
 百人一首には、「あ」の音で始まる歌が16枚ある。これは、音別にみると最多であり、 2番めの「な」は8枚と半分である。
 「あ」札は、2字目まで同音のペアが10枚あり、「あさ」で始まる歌が3枚、そして 2字決まりの札が、3枚ある。この歌の「あけ」は、その3枚のうちの1枚である。あと の2枚は、「あし」「あひ」である。
 競技かるたで、一枚対一枚の運命戦になった時に「あ」札が残ることが多いと言う人が いる。当たり前である。数が多いのだから、その確率は他の音に対して大きいに決まって いる。
 したがって、一枚対一枚で、「あ」札が2枚わかれて残る可能性も他の音に比べて多い。 まして、一般的にいう終盤においても、「あ」札が複数残るケースは多い。この時に、 「あ」の札の決まり字の変化をきちんと把握していることはもちろん、この「あ」の札の 聞き分け、攻防の取り分けがうまいことは、強みになる。
 「あ」の札と仲良くなるよう練習することは、大事なことなのである。

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2008年3月  HITOSHI TAKANO