漢字や熟語を羅列してみたが、共通項は見つかるだろうか?
わからなければ、次の文字列をみれば、わかるだろうか?
「新手一生」「馬」「直感精読」「一手入魂」「助からないと思っても助かっている」「大局観」「棋楽而不知老」…。
これでも、まだわからぬ人のために…。
「初王手目の薬」「飛角金銀桂香歩」「一歩千金」「前進できぬ駒はない」…。
これで見当がついたのではないだろうか。
「何か将棋に関係がありそうだぞ。」と思っていただけたことだろう。今まであげたのは、将棋のプロ棋士が扇子や色紙に揮毫した言葉である。
今回は、競技かるたの選手が、もし揮毫するとしたらどういう言葉がよいだろうかという話である。
「新手一生」などは、棋士個人のイメージができてしまっていて、他の人が使えないような感じがする。新手一生といえば、升田幸三実力制第四代名人のイメージだ。「直感精読」などは、もっと一般的かもしれないが、私には加藤一二三九段のイメージだ。「助からないと思っても助かっている」は、大山康晴十五世名人の名言だと思う。競技かるたにも通じる言葉なのだが、あまりに大山名人のイメージが強すぎて、使うことにためらいを感じる。
「初王手目の薬」とか「一歩千金」、「桂馬の高飛び歩の餌食」「歩のない将棋は負け将棋」とか将棋に関する名言や格言などは、将棋らしさを表していて、揮毫するのによい言葉だが、競技かるたには使えない。競技かるたで、これらの言葉に相当する言葉を見つけたいものだが…。
将棋の場合、プロ棋士であれば、駒の名を書くのでも重みがある。「王将」とか「竜王」はタイトルにもなっているが、色紙にして飾るにしても、格好がよい。「金将」「銀将」だって地味だが味わいがある。揮毫に使ってもなんらおかしくない。「飛車」「角行」という大駒もダイナミックでいい。「龍馬」や「馬」も強さでは負けていない。「桂馬」や「香車」は、その動きの特殊性のゆえに揮毫すれば、奥深さを感じる。桂使いの達人である中原誠永世十段などが「桂馬」と揮毫すれば、余計に価値を増す。「歩」や「と」といったものも、含蓄がある。
そうすると競技かるたでは、百人一首の歌をそのまま使ったり、百人一首の歌から言葉を取るというのもよいかもしれない。かるた会の名前にも使われている「白妙」「吉野」「若菜」「有明」「浅茅」「鵲」「渚」「高嶺」etc.など揮毫に適しているだろう。そういう意味でいうと百人一首は揮毫に使う言葉の宝庫である。
あとは、決まり字や札の覚え方から取るのも一興だろう。「むすめふさほせ」「うつしもゆ」「いちひき」「はやよか」「はらきまりさしひけ」なんていうのも、わかる人にはわかってそれなりに味わいがあるのではないだろうか。
そして、私のおすすめをひとつ紹介しておこう。