(社)全日本かるた協会競技規程 |
全日本かるた協会競技規定 |
第一条 競技方法 競技は、小倉百人一首かるたを用い、相対座する二人の競技者の間で行う。 各自、取札百枚のうちから無作為に選んだ二十五枚を持札とし、読手の読み上げる札 (以下、出札という)を取り合うことにより、早く持札が無くなった者を勝者とする。 コメント 明らかに旧規定より説明的でわかりやすい表現になった。でも、個人的には「絶無となりたる」という表現好きでした。 第二条 判定 取りやお手つきなどの判定は、原則として競技者間で決定する。 コメント これは、旧規定にはない条文だが、加わったことで、競技者への責任と自覚を生むので大変よい条文であると思う。 第三条 礼節 競技に際しては、互いに相手を尊重するとともに、礼節を重んじなければならない。 コメント これも、旧規定にはない条文だが、よく使われる「互譲の精神」を意識して、具体的な文言にしたものであろう。第二条の前提としてなてはならない条文だと思う。 第四条 競技線 競技者は、その座した前方に、横八十七センチメートル、上中下段の間に各一センチメートルをあけて 縦に札三枚が並ぶ範囲を定め、各々の陣とする。その各々の陣の外周の各辺を競技線とよぶ。 双方の陣の上段の間隔は三センチメートルとし、左右の競技線の延長線は一致させる。 コメント 「左右の競技線の延長線は一致させる」は旧規定からは読み取れない部分だったが、実際には競技者は共通認識としてもっていたことであろう。しかし、こうして明文化 されると、規定としての成熟度からするとあったほうがよいように思われる。 第五条 持札の配置 競技者は、持札全てを表向きにし、文字を自己の方に向け、整然と各々の陣の任意の位置に並べる。た だし、上中下の各段にまたがって並べてはならない。 コメント 旧規定では、文字を自己の方に向けることが書いてあり、わざわざ「表向き」の記載はない。それは、すなわち文字が自己を向いているということは表向きだからこそ 競技者双方で認識できるという大前提があるからだったのだろうが、変な反論を与えないために「表向き」を明言したのだろう。 第六条 持札の移動 競技者は、持札を移動させる場合、その都度対戦者に通告しなければならない。 コメント 旧規定では第13条と割と後ろのほうにあったが、こちらでは前にあがってきている。旧規定では試合の途中での札の移動のイメージがあったものを、こちらでは 並べ終わったあとの暗記時間内での札移動を想定して前のほうにもってきたのではないだろうか。 第七条 暗記時間 競技者が持札を並べた後、競技を開始する前に、十五分間の暗記時間をとる。 コメント 実はこの条文を見て、旧規定では、暗記時間のことが記されていなかったという事実に衝撃を受けた。 第八条 構え 競技者は、左右どちらか一方の手を札を取る手(以下、有効手という)と定め、上の句が読み始められ るまでは、畳に接した状態で自陣の下段よりも手前に置いておかなければならず、頭は自陣の上段より対戦者側に出してはならない。 コメント 旧規定では、第4条で「両手を用いてはならない」とあるのをわかりやすく書いている。また、旧規定第3条の解説の部分を条文に組み入れ、わかりやすくした。 第九条 読み 読手は、読札百枚の中から無作為に選んだ札を一枚ずつ読み上げるが、同じ札を読み上げることはない。 コメント 旧規定には、この読みのことが書かれていない。それほどに競技者にとっては当たり前のことなのだが、こうして正文化されると実は重要なことだと気づく。 第十条 取りの成立 出札が競技線内にあるうちに、対戦者より早く有効手で直接触った者が出札を取ったものとする。(札 直接の取り) また、共に札直接の取りではなかった場合でも、出札を完全に有効手で競技線外に押し出したときは、その札を取ったものとする。(札押しの取り) コメント 旧規定の第4条との比較をしてみるとよいだろう。「札直接の取り」との表現は、普段競技者が使っている「札直(ふだちょく)の取り」でもよかったように思う。 第十一条 同時の取り 共に札直接の取りで、同時に出札に触れた場合は、出札を持札としていた者が取ったものとする。 コメント 旧規定の第5条と比較されたい。同時の場合、「取りたるものと看做す」ではなく「取ったものとする」になっている。意が変わるわけではないが、個人的な感覚でいえば、 条文的には「看做す」がしっくりくるように思う。ただし、平仮名表記がよいとは思う。 第十二条 紛失時の取り 紛失したままになっていた持札が出札となった場合は、対戦者の取りとする。 コメント 旧規定の第11条と比較されたい。これも前条と同じで、個人的感覚では「みなす」がよいように感じる。 第十三条 取りの無効 上の句が読み始められる前に有効手を競技線の中に入れるなど、妨害行為を行った場合は、その都度そ の取りを無効とし、対戦者の取りとする。 コメント 旧規定の第16条と比較されたい。ここもまた旧規定では「みなす」の部分。 第十四条 お手つき 出札が無い方の陣の札を、その札が競技線内にあるときに有効手で触れた場合、これをお手つきとする。 コメント 旧規定では、第7条。旧規定は、自陣のケースと敵陣のケースを双方書いてある。本条はそれをまとめてわかりやすく「お手つき」の定義として書いているのだが、個人的には 旧規定のように自陣のケースと敵陣のケースとわけて書いてあったほうがわかりやすいのではないかと思う。 第十五条 共お手つき 相手との接触によりお手つきをさせられた場合は、双方共にお手つきをしたものとする。 コメント 旧規定(第9条)でも、新しい条文でも、「共お手つき」の事例は数多く、概念の整理も大変である。これは、解説等によって十分に補足しないといけない事項であろう。そういう 意味では、この程度の簡潔さでよいのだろう。 第十六条 送り札 対戦者の陣にある出札を取った場合、もしくは、対戦者がお手つきをした場合、自己の持札一枚を対戦 者に送ることができる。 また、出札が双方いずれの陣にもない時に、対戦者が両方の陣の札にお手つきをした場合は、二枚送ることができる。 コメント 前半については旧規定では第8条、後半のダブルについて旧規定では第10条に対応する。ダブルの規定については、旧規定の「札二枚を受ける義務がある」は、旧規定解説 にあるように「対技者は送る権利がある」と解釈するのが適切で、本条にて「二枚送ることができる」の記載は非常にわかりやすい。 第十七条 送り札の選定 送り札の選定は送る側の任意とする。但し、送り札から手を離した瞬間から送り札の変更はできない。 コメント 旧規定では第12条。本条でわかりやすさが増した。 第十八条 禁止事項 読みが下の句の余韻に入ってからは、声を発したり畳を叩いたりしてはならない。 コメント 旧規定では第15条。 第十九条 附則 本規程に明文のない事項については、本規程の細則にてこれを定める。 コメント 細則を制定し、そこに詳しい補足をつけたことで、競技者のひとりとして非常にわかりやすくなったと思う。 平成二十年九月施行 |
第一条 競技は相対せる二人の間に行い、持札各二十五枚とし、早く持札の絶無と なりたる者を勝者とする。 [解説]持札の増減については、全日本かるた協会競技会規定 (以降競技会規定と称す)第六条に基づく十五分間の暗記時間が終了する迄に判明した 場合に限り、申し出があれば審判員が増減札の調整を行う。なお、持札については 競技者双方で暗記時間中に確認する義務がある。 第二条 札の配列は膝の前方に横八十七糎以内、対者の上段より三糎あけて 三段以内とし、上中下段の間隔は各一糎とする。(この範囲内を競技線内とする。) 札は文字を自己の方に向け整然と競技線内に並べ、上中下の各段に跨って並べては いけない。 [解説]札の配列で、畳目に合わせて並べる場合には、対者の上段 より三糎あけての意を、多少広くはなるが、対者の上段より畳三目あけてと解釈する。 但し、明らかに畳一目が一・五糎以上の場合はこの限りではない。 第三条 手は競技線より後方に置かねばならない。又、上の句が読まれる以前に 頭部を持札より前に出すことはできない。 [解説]一、手は競技線より後方に置かねばならないについては、 接していなければならないと解釈するので、畳に接しないで競技するものは、接して 競技するように心がける。 二、手は競技線より後方に…についての意は、両手は競技線、及び、競技線下段延長 線より後方に接していなければならないと解釈する。又、接した手の一部でもこれ等 線より前方にかぶさることはゆるされない。 第四条 読まれる札(以下単に出札という)に単に早く手を触れたる時はその札 を取りたるものとする。札押しの場合は競技線外に札が完全に出た場合には有効とする。 但、両手を用いてはならない。 [解説]一、有効手は出札を取る五指の内外、手のひら、手の甲 とする。 二、有効手でない手で出札に触れた場合については、触れた時点で無効となり、相手の 取りとなる。なお、有効手でない手でお手付をした場合にはお手付とみなさない。但し、 妨害行為とみなされる場合には、審判員の判断にゆだねられえる。 三、次の場合などは、出札に早く触れた者の取りとする。 (一)札が全く重なって、且つ、出札が下になってしまった場合。 (二)畳のヘリに札押しの出札がかかり、競技線外に出なかった場合。 第五条 出札に触れたる手が同時の場合は当該札の所持者之を取りたるものと 看做す。但、共に札押しの場合は、出札に近く触れたる者が取りたるものとする。 [解説]一、共に札押しの判定は難易であり文章化にする事自体 が誤解を招く恐れがあるが、次の場合を除き同時とみなす。 (一)同じ距離の札押しで、明らかにどちらかの力によって競技線外に出札が出された ことが判明する場合は、出札を競技線外に出した者の取りとする。 第六条 競技者は対技者の出札をその対技者よりも早く取りたる時は、その都度 自己の持札一枚を対技者に送ることができる。 [解説]次の上の句が読み始めるまでに送らなかった場合、 送り札の権利は喪失する。 第七条 出札が自己の持札中になき時誤って自己の持札に手を触れるか、又は 対技者の持札中になき時誤って相手札に手を触れたる時は「お手付」とする。 [解説]一、相手陣の札を取った手が、勢い余って自陣の札に 触れた場合はお手付となる。 二、札を取る動作が終了し、畳を叩こうとして誤って札に触れた場合については取る 動作の一連の行為中とみなし、お手付となる。但し、上の句読唱中であっても、取る 動作が完全に終了し、札の整理等で札に触れた場合は、お手付とみなさない。 三、一方の陣の札を取り、未だ手が札から離れていない間に、他方の陣の札と取り札 とが接触した場合については、他方の陣競技線内に有効手が少しでも入ればお手付と みなす。従って、自陣上段を突き上げ、札から手が離れないままに手が敵陣競技線内 に少しでも入り、突き上げた札が敵陣札に触れた場合は、お手付になってしまう。 第八条 「お手付」をなしたる者は、その都度対技者より札一枚を受取る。 第九条 一方の競技者が「お手付」をなしたる札に又はその「お手付」をなせる 手に、他の一方の競技者の手が触れたる場合は、共に「お手付」とする。また、相手の 手によって札に手を触れさせられた場合も、共に「お手付」とする。 [解説]一、次の場合は共にお手付とみなす。 (一)大山札を囲っている時に、相手が突入し、札にさわらされた場合。 (二)競技線内で、相手がお手付をして飛ばした札に触れた場合。 (三)有効手以外の部分と衝突して共に触れてしまった場合。 二、次の場合は片お手付とみなす。 (一)空中に浮いている手にお手付をしている手がぶつかってきた場合。 (二)競技線の外側で囲っている手にお手付をしている手がぶつかり、札に触れて いない場合。 (三)構えただけで置いている手(取る動作を起こしていない手)に、相手のお手付 の札が飛んできて触れた場合。 (四)お手付をした札が空中で対技者に触れた場合。 (五)逃げようとした手に、お手付をした相手の手と接触した場合。 第十条 出札が双方何れにもあらざる時同一人が双方へ「お手付」したる時は、 札二枚を対技者から受ける義務がある。 [解説]今回の検討会においては条文を変更しない事より、条文 については、札二枚を対技者は送る権利があると解釈する。 第十一条 札の紛失せるままその札を読まれたる時は紛失者はその札を 取られたものと看做す。 第十二条 送り札の選定は送者の任意とする。但、一旦送りたる札は如何なる 事由あるも他の札と変更することを得ない。 [解説]一、送り札は相手陣内へ、相手の方向に向けて送るもの とする。 二、送り札から手を話した瞬間から札の変更は不可。 三、錯誤により、一枚送るべきところ二枚送ってしまった場合は、一旦二枚を引き上げて 改めて送り直す。 第十三条 競技者は持札の位置変更の時は、その都度対技者に通告せねば ならない。 [解説]一、持札の位置変更について通告を怠った場合、ただちに 違反無効とはしない。しかし、通告を怠る事が度重なる場合、故意による場合には審判長 の判断による。なお、競技者は常に札位置について確認する義務がある。 二、誤配列に気づかずにその札が読まれた場合は出札に触れることが前提となる。 三、自札が間違って相手陣に配列されてその札が読まれた場合は、紛失に準ずる。 四、一度に札の移動許容枚数に制限は加えられないが、頻繁な移動、大量の移動は 競技の進行上著しく遅延することが予想され、行わないようにする。 第十四条 競技者は原則として整理以外に読みを待たすことを得ない。 [解説]競技者はいかなる状況にあっても読みを待たせたり中断 させてはならない。又読手は、状況により読みを待ち、競技者に対する配慮が必要で ある。審判員は競技進行妨害行為に対しては警告しなければならない。 第十五条 読みが下の句の余韻に入ってからは、声を発したり畳をたたいたりし てはならない。 [解説]一、余韻に入り札の紛失、誤配列等に気がつき、読唱を 中断させるアピールをしてはならない。 二、通常競技者は、余韻の時に様々な動作をしている。この動作が著しく競技に支障が 生じると思われる場合は、競技者が審判員にアピールする事ができる。しかし、 いかなる場合においてもアピールは余韻以降読唱中はできない。 第十六条 読まれざる内に手を出す等、対技者に妨害と認めらるる行為をなした 場合は、その都度その取札を無効とし、対技者之を取りたるものと看做す。 [解説]一、渡り手等で相手の着物のたもとが札の上をおおって しまい触れることができない場合、下段の札等をひざの下に踏みしだくか蹴散らして しまった場合等についての行為は、妨害行為と見るか否かは競技者のアピールにより 審判員が判断をする。 二、妨害行為とみなされる場合は競技会規定第二十三条を準用する。 第十七条 本規則に明文なき事項は、協会之を更めて発表する。 附則 競技会規定は別に之を定むる。 審判員の附せる競技者が審判員に判定を問いたる時は、審判員の判定に従わねばならない。 |