「競技規定」と「競技規程」

平成20年の変更

Apr/2013 Hitoshi TAKANO

 平成20年に競技かるたの「競技規定」は「競技規程」に改められた。現代の若者にもわかりやすい平易な表現が使われ、条数も多少増えている。全日本かるた協会 発行の資料等を参照しながら、前の規定との比較を試みた。
 前の規定には、全日協のほうで加えた解説も付した。
 この解説は、公的な解説であり、この解説自体が規定と同じ権威をもつ。
 奈良時代の律令という法律には、「令義解」(りょうのぎげ)という官撰注釈書があるが、この公的な官撰注釈書の注釈が法律の条文と同じ効力を持ったことと同列 に考えてもよい「解説」なのである。
 この考え方は、平成20年の改訂における 細則の解説についても同様に適用されるものである。
 なお、競技会規程(平成20年)も、最後に記載した。

競技規程と競技規定の新旧比較表


(社)全日本かるた協会競技規程


全日本かるた協会競技規定


第一条 競技方法  競技は、小倉百人一首かるたを用い、相対座する二人の競技者の間で行う。 各自、取札百枚のうちから無作為に選んだ二十五枚を持札とし、読手の読み上げる札 (以下、出札という)を取り合うことにより、早く持札が無くなった者を勝者とする。
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明らかに旧規定より説明的でわかりやすい表現になった。でも、個人的には「絶無となりたる」という表現好きでした。


第二条 判定  取りやお手つきなどの判定は、原則として競技者間で決定する。
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これは、旧規定にはない条文だが、加わったことで、競技者への責任と自覚を生むので大変よい条文であると思う。


第三条 礼節  競技に際しては、互いに相手を尊重するとともに、礼節を重んじなければならない。
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これも、旧規定にはない条文だが、よく使われる「互譲の精神」を意識して、具体的な文言にしたものであろう。第二条の前提としてなてはならない条文だと思う。


第四条 競技線  競技者は、その座した前方に、横八十七センチメートル、上中下段の間に各一センチメートルをあけて 縦に札三枚が並ぶ範囲を定め、各々の陣とする。その各々の陣の外周の各辺を競技線とよぶ。 双方の陣の上段の間隔は三センチメートルとし、左右の競技線の延長線は一致させる。
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「左右の競技線の延長線は一致させる」は旧規定からは読み取れない部分だったが、実際には競技者は共通認識としてもっていたことであろう。しかし、こうして明文化 されると、規定としての成熟度からするとあったほうがよいように思われる。


第五条 持札の配置  競技者は、持札全てを表向きにし、文字を自己の方に向け、整然と各々の陣の任意の位置に並べる。た だし、上中下の各段にまたがって並べてはならない。
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旧規定では、文字を自己の方に向けることが書いてあり、わざわざ「表向き」の記載はない。それは、すなわち文字が自己を向いているということは表向きだからこそ 競技者双方で認識できるという大前提があるからだったのだろうが、変な反論を与えないために「表向き」を明言したのだろう。


第六条 持札の移動  競技者は、持札を移動させる場合、その都度対戦者に通告しなければならない。
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旧規定では第13条と割と後ろのほうにあったが、こちらでは前にあがってきている。旧規定では試合の途中での札の移動のイメージがあったものを、こちらでは 並べ終わったあとの暗記時間内での札移動を想定して前のほうにもってきたのではないだろうか。


第七条 暗記時間  競技者が持札を並べた後、競技を開始する前に、十五分間の暗記時間をとる。
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実はこの条文を見て、旧規定では、暗記時間のことが記されていなかったという事実に衝撃を受けた。


第八条 構え  競技者は、左右どちらか一方の手を札を取る手(以下、有効手という)と定め、上の句が読み始められ るまでは、畳に接した状態で自陣の下段よりも手前に置いておかなければならず、頭は自陣の上段より対戦者側に出してはならない。
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旧規定では、第4条で「両手を用いてはならない」とあるのをわかりやすく書いている。また、旧規定第3条の解説の部分を条文に組み入れ、わかりやすくした。


第九条 読み  読手は、読札百枚の中から無作為に選んだ札を一枚ずつ読み上げるが、同じ札を読み上げることはない。
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旧規定には、この読みのことが書かれていない。それほどに競技者にとっては当たり前のことなのだが、こうして正文化されると実は重要なことだと気づく。


第十条 取りの成立  出札が競技線内にあるうちに、対戦者より早く有効手で直接触った者が出札を取ったものとする。(札 直接の取り) また、共に札直接の取りではなかった場合でも、出札を完全に有効手で競技線外に押し出したときは、その札を取ったものとする。(札押しの取り)
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旧規定の第4条との比較をしてみるとよいだろう。「札直接の取り」との表現は、普段競技者が使っている「札直(ふだちょく)の取り」でもよかったように思う。


第十一条 同時の取り  共に札直接の取りで、同時に出札に触れた場合は、出札を持札としていた者が取ったものとする。
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旧規定の第5条と比較されたい。同時の場合、「取りたるものと看做す」ではなく「取ったものとする」になっている。意が変わるわけではないが、個人的な感覚でいえば、 条文的には「看做す」がしっくりくるように思う。ただし、平仮名表記がよいとは思う。


第十二条 紛失時の取り  紛失したままになっていた持札が出札となった場合は、対戦者の取りとする。
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旧規定の第11条と比較されたい。これも前条と同じで、個人的感覚では「みなす」がよいように感じる。


第十三条 取りの無効  上の句が読み始められる前に有効手を競技線の中に入れるなど、妨害行為を行った場合は、その都度そ の取りを無効とし、対戦者の取りとする。
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旧規定の第16条と比較されたい。ここもまた旧規定では「みなす」の部分。


第十四条 お手つき  出札が無い方の陣の札を、その札が競技線内にあるときに有効手で触れた場合、これをお手つきとする。
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旧規定では、第7条。旧規定は、自陣のケースと敵陣のケースを双方書いてある。本条はそれをまとめてわかりやすく「お手つき」の定義として書いているのだが、個人的には 旧規定のように自陣のケースと敵陣のケースとわけて書いてあったほうがわかりやすいのではないかと思う。


第十五条 共お手つき  相手との接触によりお手つきをさせられた場合は、双方共にお手つきをしたものとする。
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旧規定(第9条)でも、新しい条文でも、「共お手つき」の事例は数多く、概念の整理も大変である。これは、解説等によって十分に補足しないといけない事項であろう。そういう 意味では、この程度の簡潔さでよいのだろう。


第十六条 送り札  対戦者の陣にある出札を取った場合、もしくは、対戦者がお手つきをした場合、自己の持札一枚を対戦 者に送ることができる。 また、出札が双方いずれの陣にもない時に、対戦者が両方の陣の札にお手つきをした場合は、二枚送ることができる。
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前半については旧規定では第8条、後半のダブルについて旧規定では第10条に対応する。ダブルの規定については、旧規定の「札二枚を受ける義務がある」は、旧規定解説 にあるように「対技者は送る権利がある」と解釈するのが適切で、本条にて「二枚送ることができる」の記載は非常にわかりやすい。


第十七条 送り札の選定  送り札の選定は送る側の任意とする。但し、送り札から手を離した瞬間から送り札の変更はできない。
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旧規定では第12条。本条でわかりやすさが増した。


第十八条 禁止事項  読みが下の句の余韻に入ってからは、声を発したり畳を叩いたりしてはならない。
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旧規定では第15条。


第十九条 附則  本規程に明文のない事項については、本規程の細則にてこれを定める。
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細則を制定し、そこに詳しい補足をつけたことで、競技者のひとりとして非常にわかりやすくなったと思う。


平成二十年九月施行


第一条 競技は相対せる二人の間に行い、持札各二十五枚とし、早く持札の絶無と なりたる者を勝者とする。
[解説]持札の増減については、全日本かるた協会競技会規定 (以降競技会規定と称す)第六条に基づく十五分間の暗記時間が終了する迄に判明した 場合に限り、申し出があれば審判員が増減札の調整を行う。なお、持札については 競技者双方で暗記時間中に確認する義務がある。

第二条 札の配列は膝の前方に横八十七糎以内、対者の上段より三糎あけて 三段以内とし、上中下段の間隔は各一糎とする。(この範囲内を競技線内とする。) 札は文字を自己の方に向け整然と競技線内に並べ、上中下の各段に跨って並べては いけない。
[解説]札の配列で、畳目に合わせて並べる場合には、対者の上段 より三糎あけての意を、多少広くはなるが、対者の上段より畳三目あけてと解釈する。 但し、明らかに畳一目が一・五糎以上の場合はこの限りではない。

第三条 手は競技線より後方に置かねばならない。又、上の句が読まれる以前に 頭部を持札より前に出すことはできない。
[解説]一、手は競技線より後方に置かねばならないについては、 接していなければならないと解釈するので、畳に接しないで競技するものは、接して 競技するように心がける。
二、手は競技線より後方に…についての意は、両手は競技線、及び、競技線下段延長 線より後方に接していなければならないと解釈する。又、接した手の一部でもこれ等 線より前方にかぶさることはゆるされない。


第四条 読まれる札(以下単に出札という)に単に早く手を触れたる時はその札 を取りたるものとする。札押しの場合は競技線外に札が完全に出た場合には有効とする。 但、両手を用いてはならない。
[解説]一、有効手は出札を取る五指の内外、手のひら、手の甲 とする。
二、有効手でない手で出札に触れた場合については、触れた時点で無効となり、相手の 取りとなる。なお、有効手でない手でお手付をした場合にはお手付とみなさない。但し、 妨害行為とみなされる場合には、審判員の判断にゆだねられえる。
三、次の場合などは、出札に早く触れた者の取りとする。
(一)札が全く重なって、且つ、出札が下になってしまった場合。
(二)畳のヘリに札押しの出札がかかり、競技線外に出なかった場合。


第五条 出札に触れたる手が同時の場合は当該札の所持者之を取りたるものと 看做す。但、共に札押しの場合は、出札に近く触れたる者が取りたるものとする。
[解説]一、共に札押しの判定は難易であり文章化にする事自体 が誤解を招く恐れがあるが、次の場合を除き同時とみなす。
(一)同じ距離の札押しで、明らかにどちらかの力によって競技線外に出札が出された ことが判明する場合は、出札を競技線外に出した者の取りとする。


第六条 競技者は対技者の出札をその対技者よりも早く取りたる時は、その都度 自己の持札一枚を対技者に送ることができる。
[解説]次の上の句が読み始めるまでに送らなかった場合、 送り札の権利は喪失する。

第七条 出札が自己の持札中になき時誤って自己の持札に手を触れるか、又は 対技者の持札中になき時誤って相手札に手を触れたる時は「お手付」とする。
[解説]一、相手陣の札を取った手が、勢い余って自陣の札に 触れた場合はお手付となる。
二、札を取る動作が終了し、畳を叩こうとして誤って札に触れた場合については取る 動作の一連の行為中とみなし、お手付となる。但し、上の句読唱中であっても、取る 動作が完全に終了し、札の整理等で札に触れた場合は、お手付とみなさない。
三、一方の陣の札を取り、未だ手が札から離れていない間に、他方の陣の札と取り札 とが接触した場合については、他方の陣競技線内に有効手が少しでも入ればお手付と みなす。従って、自陣上段を突き上げ、札から手が離れないままに手が敵陣競技線内 に少しでも入り、突き上げた札が敵陣札に触れた場合は、お手付になってしまう。


第八条 「お手付」をなしたる者は、その都度対技者より札一枚を受取る。

第九条 一方の競技者が「お手付」をなしたる札に又はその「お手付」をなせる 手に、他の一方の競技者の手が触れたる場合は、共に「お手付」とする。また、相手の 手によって札に手を触れさせられた場合も、共に「お手付」とする。
[解説]一、次の場合は共にお手付とみなす。
(一)大山札を囲っている時に、相手が突入し、札にさわらされた場合。
(二)競技線内で、相手がお手付をして飛ばした札に触れた場合。
(三)有効手以外の部分と衝突して共に触れてしまった場合。
二、次の場合は片お手付とみなす。
(一)空中に浮いている手にお手付をしている手がぶつかってきた場合。
(二)競技線の外側で囲っている手にお手付をしている手がぶつかり、札に触れて いない場合。
(三)構えただけで置いている手(取る動作を起こしていない手)に、相手のお手付 の札が飛んできて触れた場合。
(四)お手付をした札が空中で対技者に触れた場合。
(五)逃げようとした手に、お手付をした相手の手と接触した場合。


第十条 出札が双方何れにもあらざる時同一人が双方へ「お手付」したる時は、 札二枚を対技者から受ける義務がある。
[解説]今回の検討会においては条文を変更しない事より、条文 については、札二枚を対技者は送る権利があると解釈する。

第十一条 札の紛失せるままその札を読まれたる時は紛失者はその札を 取られたものと看做す。

第十二条 送り札の選定は送者の任意とする。但、一旦送りたる札は如何なる 事由あるも他の札と変更することを得ない。
[解説]一、送り札は相手陣内へ、相手の方向に向けて送るもの とする。
二、送り札から手を話した瞬間から札の変更は不可。
三、錯誤により、一枚送るべきところ二枚送ってしまった場合は、一旦二枚を引き上げて 改めて送り直す。


第十三条 競技者は持札の位置変更の時は、その都度対技者に通告せねば ならない。
[解説]一、持札の位置変更について通告を怠った場合、ただちに 違反無効とはしない。しかし、通告を怠る事が度重なる場合、故意による場合には審判長 の判断による。なお、競技者は常に札位置について確認する義務がある。
二、誤配列に気づかずにその札が読まれた場合は出札に触れることが前提となる。
三、自札が間違って相手陣に配列されてその札が読まれた場合は、紛失に準ずる。
四、一度に札の移動許容枚数に制限は加えられないが、頻繁な移動、大量の移動は 競技の進行上著しく遅延することが予想され、行わないようにする。


第十四条 競技者は原則として整理以外に読みを待たすことを得ない。
[解説]競技者はいかなる状況にあっても読みを待たせたり中断 させてはならない。又読手は、状況により読みを待ち、競技者に対する配慮が必要で ある。審判員は競技進行妨害行為に対しては警告しなければならない。

第十五条 読みが下の句の余韻に入ってからは、声を発したり畳をたたいたりし てはならない。
[解説]一、余韻に入り札の紛失、誤配列等に気がつき、読唱を 中断させるアピールをしてはならない。
二、通常競技者は、余韻の時に様々な動作をしている。この動作が著しく競技に支障が 生じると思われる場合は、競技者が審判員にアピールする事ができる。しかし、 いかなる場合においてもアピールは余韻以降読唱中はできない。


第十六条 読まれざる内に手を出す等、対技者に妨害と認めらるる行為をなした 場合は、その都度その取札を無効とし、対技者之を取りたるものと看做す。
[解説]一、渡り手等で相手の着物のたもとが札の上をおおって しまい触れることができない場合、下段の札等をひざの下に踏みしだくか蹴散らして しまった場合等についての行為は、妨害行為と見るか否かは競技者のアピールにより 審判員が判断をする。
二、妨害行為とみなされる場合は競技会規定第二十三条を準用する。


第十七条 本規則に明文なき事項は、協会之を更めて発表する。

附則 競技会規定は別に之を定むる。
審判員の附せる競技者が審判員に判定を問いたる時は、審判員の判定に従わねばならない。














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 現行の規程(上表左側)に変わる前に、規定の解説(上表右側)が全日協から送られて 来たときに、解説によって今まで曖昧模糊としていたり、口述や判例(過去の審判長判断 の事例など)により伝わってきた解釈が、明文化され、基準化され、競技者として非常に 「わかりやすさ」を感じたものだった。
 もちろん、この解説でもしっくりこない部分もあったが、指針として出た以上は、この 基準をもとにプレイしなければならないと気持ちをあらたにしたものである。
 そして、平成20年には、規定は規程となり、細則も整備され、競技会規定も競技会規程 となって、より競技者にわかりやすいものとなってきている。
 また、同時期に配布された「競技並びに競技会におけるマナー」 (ダウンロード用PDF)(かるた展望第16号に掲載された内容)についても、大変参考 になるし、多くの選手の目にふえるようにしていただきたい。特に若いというか幼い 初心者もふえてきている現在、こうしたマナーの競技者への浸透は大事なことである。
 こうした規定等の整備や印刷物の配布は、全日協の役員をはじめ各部局の担当者の努力 の賜物であるが、ますます、初心者を含めた競技者全体を見た規程条文、解説、補足など の進化をこれからも期待したい。

(社)全日本かるた協会 競技規程細則

第一章 総則
(競技方法)
第一条
競技は、小倉百人一首かるたを用い、相対座する二人の競技者の間で行う。
各自、取札百枚のうちから無作為に選んだ二十五枚を持札とし、読手の読み上げる札(以下、出札という)を取り合うことにより、早く持札が無くな った者を勝者とする。
<補足> 二 取りによって持札を減らすのが基本だが、お手つきにより、持札が増えることもある。 勝者は、必ず自己の持札を0枚とした上で競技を終了させること。特に1−1の場合などで送り札を行わないと、双方共自分が取ったと思ったまま競 技を終了して、後から不都合が生じる場合がある。
(判定)
第二条
取りやお手つきなどの判定は、原則として競技者間で決定する。
<補足> 競技かるたでは、競技者同士が互いの動きを良く見極めると共に、信義誠実の精神に則って冷静に主張しあい、迅速に問題解決することを旨とする。 競技者は、本規程の解釈等で必要がある場合、審判員にこれを確認することができる。 競技者双方の話し合いで決定できない場合、いずれかの競技者の要請により、審判員に判定を求めることができるが、審判員の下した判定には従わな くてはならない。 仮に審判員が明らかに誤った判定を行なった場合であっても、その判定には従うこと。規程の解釈、運用に疑義ある場合は、後刻競技かるた部に照会 することができるが、その場合であっても過去の判定が覆されることはない。
第二章 礼節
(礼節)
第三条
競技に際しては、互いに相手を尊重するとともに、礼節を重んじなければならない。
(礼)
第四条
競技者は、競技開始時、ならびに競技終了時に、対戦者、読手の順に礼をすること。
読手も、競技開始時、ならびに競技終了時に会場に一礼すること。
暗記時間中、競技中にその場を離れる際や戻る際には、対戦者に対して礼をする。ただし、払った札を取りに行く場合はこの限りではない。
<補足> 一 審判員が個別の試合についた場合は、対戦者、審判員、読手の順に礼をすること。 礼の際は、相手の方に身体ごと向き、顔を見て、「お願いします」「ありがとうございました」とはっきり言い、頭を下げる。 試合の途中から審判員がつく場合は、その時点で審判員に礼をすること。 審判員も競技者と一緒に礼をすること。
「失礼します」、「失礼しました」と言って礼をする。 礼を受ける側は、軽く頭を下げる程度でよい。

(着座姿勢)
第五条
競技者は、競技場内で着席している際は、正座もしくは正座に準じた姿勢でいなければならない。ただし、暗記時間中は姿勢を崩すことができる。
<補足> 暗記時間中に姿勢を崩すときも、立て膝や体操座り、足の投げ出しなどはいけない。
(服装・装着物)
第六条
競技時の服装については、対戦者並びに観戦者に不快感を与えないものを着用しなければならない。
有効手には、着け爪、指輪等、競技中に相手に負傷させるおそれのある物を装着してはならない。
対戦者の面前で揺れるものは、外す、もしくは固定すること。
<補足> 一 服装については、和装が望ましいが、大会等で特段の指示がない場合は、Tシャツ、トレーナー、運動着等でもよい。しかし、 ショートパンツ、胸の大きく開いた服等は好ましくない。
二 有効手の爪はできる限り切りそろえておくこと。有効手は素手であることとするが、テーピング、ばんそうこうは可とする。
三 ネックレスやイヤリングのみならず、髪型についても、対戦者の面前で揺れる場合は、後ろで縛るなど固定すること。

第三章 札の配置と暗記
(競技線)
第七条
競技者は、その座した前方に、横八十七センチメートル、上中下段の間に各一センチメートルをあけて縦に札三枚が並ぶ範囲を定め、各々の陣とする。 その各々の陣の外周の各辺を競技線とよぶ。
双方の陣の上段の間隔は三センチメートルとし、左右の競技線の延長線は一致させる。
<補足> 一 競技線は畳に接した部分だけを指すのではなく、その垂直上空も含む。 競技線に囲まれた範囲は、自己の陣(以下、「自陣」という)、相手の陣(以下、「相手陣」という)と二つに分かれて存在することになる。本条の八 十七センチメートル、三センチメートル、一センチメートルという数字は一ミリメートルでも間違えば違反になるというものではないが、日頃より、 その長さがどの程度のものかは確認しておくべきである。
二 畳目に合わせて札を並べる場合には、双方の上段の競技線の間は三センチメートルより多少広くはなるが、畳目三目あけてと解釈する。但し、明らか に畳目一目が一・五センチメートル以上の場合はこの限りではない。

(持札)
第八条
競技者は、場に与えられた札を裏向きにして混ぜた後、裏向きのまま各二十五枚を選び、自己の持札とする。
いずれかの、又は双方の持札が二十五枚でないとき、暗記時間終了迄に限り、札の過不足の調整を行なうことができる。
<補足> 二 競技者は、双方の持札が二十五枚あることを互いに暗記時間中に確認しなければならない。 札の過不足の調整は、審判員に申し出て、審判員の指示で行う。 暗記時間終了後に持札の過不足が判明した場合には、札の枚数の調整はせず、そのままの枚数で競技を続行する。
(持札の配置)
第九条
競技者は、持札全てを表向きにし、文字を自己の方に向け、重ねず、整然と各々の陣の任意の位置に並べる。ただし、上中下の各段にまたがって並べ てはならない。
(持札の移動)
第十条
競技者は、持札を移動させる場合、その都度対戦者に通告しなければならない。
出札を取った時や、札を移動させた時に、隣接した札を横に詰める場合は、この通告を省略することができる。
競技者は、下の句の読みが始まってからは、札を移動させることができない。
<補足> 一 札の移動については、競技者ははっきりと通告し、それを受けた対戦者もはっきりと返事をすることが必要である。 持札の移動の通告を怠った場合、ただちに違反無効とはしない。しかし、通告を怠る事が度重なる場合、故意による場合には審判員の判断による。 暗記時間を含め、頻繁な移動や、一度に大量の移動を行なうことは好ましくない。
(暗記時間)
第十一条
競技者が持札を並べた後、競技を開始する前に、十五分間の暗記時間をとる。
暗記時間が残り二分となるまでは、手を動かしての暗記や素振りなど、対戦者の暗記の妨げとなる行為を行ってはならない。
<補足> 二 暗記の妨げとなるような行為には、素振りや畳を叩くことだけではなく、頻繁に手を出したり振ったりしながら暗記をすることも含まれる。 暗記時間が残り二分となる前に素振りやウォーミングアップ等を行う場合は、相手に礼をして席を離れてから、別の場所で行うこと。
(札の整理)
第十二条
札を取るなどして、並べてある札が散逸した場合、原則として札を払った競技者が拾いに行かなければならない。
<補足> 札は払った競技者が拾いに行くが、対戦者もできるだけ協力する。その際、他の競技者の競技線内を歩くことは厳に慎まなければならない。 散逸した札を他の競技者に渡す際には、丁寧に渡すこと。 札の整理は座って行い、あぐら、立て膝、中腰等の姿勢は慎むこと。 札を並べずにもめることは避け、先に札の整理をしてから話し合うこと。
第四章 構え
(構え)
第十三条
競技者は、左右どちらか一方の手を札を取る手(以下、有効手という)と定め、上の句が読み始められるまでは、畳に接した状態で自陣の下段よりも 手前に置いておかなければならず、頭は自陣の上段より対戦者側に出してはならない。
有効手は、左右どちらか一方の、手首より先のすべての指、手の平、手の甲とするが、競技中に有効手の左右を 変更することはできない。
競技者は、上の句が読み始められるまでは、有効手を、左右の競技線の延長線より外に出してはならない。
競技者は、読みが下の句の余韻に入ってからは、対戦者の妨げとなるような大きな動きをしてはならない。
<補足> 一 本条に反する行為に対しては、対戦者からのアピールが無くとも、審判員は注意することができる。 自陣の下段よりも手前とは、その上空も含める。また、有効手だけではなく、逆の手、両脚も手前でなければならない。 ここで言う「頭」には頭髪も含まれる。
二 競技開始後に、最初に札を取った手、もしくは最初にお手つきをした方の手を有効手とする。ただし、最初の取りやお手つきの際に、有効手は逆の手 であり、今の取りやお手つきが有効手とは逆の手だったと対戦者に伝えた場合は、そのように措置する。
四 下の句の余韻前までには本条に定める構えの状態になっていること。

第五章 読み
(読み)
第十四条
読手は、読札百枚の中から無作為に選んだ札を一枚ずつ読み上げるが、同じ札を読み上げることはない。
次に読み上げる札は、読み上げる都度その直前に読手が決める。
読手は、札を読み上げる際には、その前に読んだ札の下の句を読み、続けて次の札の上の句を読む。
読手は、一枚目の札を読む前に、小倉百人一首には含まれない短歌を序歌として読み上げるが、上の句、下の句と続けて読んだ後、もう一度下の句を 読み、続けて一枚目の札の上の句を読む。
読手は、原則として些細な物音等で読みを中断しないこと。ただし、競技の上で重大な支障があると判断する場合は、読みを中断させることができる。
読手は、やむを得ない場合を除き、途中で交代もしくはその位置を移動する事はできない。
<補足> 二 読手は、未読の札を箱の中に置くなどの方法により、次に読まれる札が何であるかが何人にも分か らないよう、十分注意しなければならない。
三 読み終わるや否や次の札を読み始めるようなことは避ける。競技者が札の整理や送り札を完了し、次の札を待つ準備ができたと判断できるまでは読み 始めないようにしなければならない。
五 競技者は、物音等があった場合でも、読みが中断しないものと想定しておくこと。

(読みの成立)
第十五条
読手が決まり字まで読み上げた時点で読みは成立し、その札での取りやお手つきが成立する。
一度読みが成立した札を誤ってもう一度読み上げてしまった場合でも、まだ読まれていない札の決まり字までが読み上げられていた場合は、そちらの 札の読みが成立したものとする。また、このときのお手つきは全て無効とする。
<補足> 一 ここでいう決まり字とは、出札一枚を確定できる文字を指す。 例えば、「あはじ」「あはれ」が同一陣にある場合であっても、「あは」までしか読まれなかった場合は、出札一枚を確定することはできないため、読 みは不成立とする。これは競技の対戦数が一組であった場合も例外とはしない。 読みが途中で止まったり、発声が著しく悪かったりした場合、審判長は読みの不成立を宣言できる。
二 例えば、「あはじ」が場にあり、「あはれ」が既に読まれていた場合、再度「あはれ」と読んでも、「あは」と読まれた時点で有効とし、「あはじ」が読 まれたものとする。

(読みの制止)
第十六条
競技者は、原則として札の整理以外に読みを待たせることはできない。
読みを待たせる際は、挙手、または、言葉によりはっきりと読手に合図をしなければならない。ただし、必要以上に待たせてはならない。
競技者は、下の句が読み始められてからは、読みを制止してはならない。ただし、手を上げているにもかかわらず、読手がこれに気付かずに読み始め た時は、この限りではない。
<補足> 一 札の整理中に読みが始まることを未然に防ぐ意味からも札の送りは札の整理前にすることが望ましい。 札の整理以外で読手に待ってもらうことが必要な場合とは、試合進行の中断が客観的合理的に必要な場合に限る(たとえば怪我をして対応する場合な ど)。
二 一方が札を整理している場合、対戦者は手を挙げて読み手に合図をすることが望ましい。但し、札の送りを完了していない競技者は自らが手を挙げる こと。
三 下の句が読み始められてから札の誤配列、紛失、送り忘れ等に気がついても、読みを制止してはならない。

第六章 取り
(取りの成立)
第十七条
出札が競技線内にあるうちに、対戦者より早く有効手で直接触った者が出札を取ったものとする。(札直接の取り)
共に札直接の取りではなかった場合でも、出札を完全に有効手で競技線外に押し出したときは、その札を取ったものとする。(札押しの取り)
札押しを行った際、出札が完全に競技線外に出る前に、対戦者が札直接の取りをした場合は札直接の取りを有効とする。
共に同じ方向への札押しの場合は、出札により近く触れた者の取りとする。
異なる方向への札押しの取りの場合は、最終的に出札を競技線外に押し出した者の取りとする。
<補足> 一 札が全く重って、且つ、出札が下になってしまった場合で、まだ出札が競技線内に残っているときは、上の札に触っても出札 に直接触っていなければ取りは成立しない。
二 自陣と相手陣をまたぐ札押しも有効とする。従って、相手陣上段の出札を取ろうとして誤って自陣上段の札から突き上げ、対戦者が出札に触れること なく出札が競技線外に出たような場合、自陣の札へのお手つきと札押しの取りとで、いわゆる「取り損」となる。 札押しの際、畳のヘリや競技者の膝などに出札が引っ掛かり、競技線外に出なかった場合も、札押しの取りは成立していないものとする。
五 異なる方向への札押しの取りとは、例えば、横からの押し払いと、下からの突き上げのような場合であり、払い始め、突き始めの手が出札に近いか遠 いかは必ずしも最終的な取りの判定にはつながらない。

(同時の取り)
第十八条
共に札直接の取りで、同時に出札に触れた場合は、出札を持札としていた者が取ったものとする。
共に札押しの取りで、どちらの取りか判断がつかない場合は、出札を持札としていた者が取ったものとする。
<補足> 二 前条の第四項、第五項に照らしてもどちらの取りか判断がつかないほど微妙な場合に、自陣の取りとするもの。
(紛失時の取り)
第十九条
紛失したままになっていた持札が出札となった場合は、対戦者の取りとする。
紛失していた出札がどちらの陣にあったかについて、双方の主張が食い違う場合、もしくは双方の記憶が定かでない場合は審判員が判断する。
(誤配置時の取り)
第二十条
同一陣内で誤った場所に並べてしまった札が読まれた場合でも、読まれた時点の配置を有効とし、取りやお手などを判断する。
自己の持札が間違って相手陣に配置されてその札が読まれた場合は、取りについては紛失と同様の扱いとし、その際のお手つきは無効とする。
<補足> 競技者は、常に双方の札の配置について確認しなければならない。
(取りの無効)
第二十一条
以下の妨害行為を行った場合は、その都度その取りを無効とし、対戦者の取りとする。
(1)上の句が読み始められる前に有効手を競技線の中に入れたとき。
(2)相手の身体の一部を握るなどし、相手の取りを妨害していたとき。
(3)有効手と反対の手(以下、「無効手」という)で、直接出札に触わったとき。
(4)その他対戦者に対する妨害と認められる行為。
<補足> 妨害行為を行った競技者が出札を取ったときに適用するものであり、出札を取ってないときには適用されないが、妨害行為 そのものは、その程度、回数によっては、審判員による注意、警告、退場の対象となり得る。
(3)無効手で出札を競技線外に出した場合も妨害とする。 着物や膝が出札を遮るなどして対戦者の取りが妨げられた場合、妨害行為と認定するかどうかは、競技者のアピールにより審判員が判断する。

(取りの特例)
第二十二条
不可抗力によって出札が競技線の外に出てしまった場合は、出札を持札としていた者が取ったものとする。
不可抗力の場合であっても、出札が本来の陣内に留まった場合は、出札に触れるか出札を札押しで出した場合に取りとする。
<補足> 一 不可抗力による札の移動とは、隣の競技者の飛ばした札が接触した場合などを指す。
第七章 お手つき
(お手つき)
第二十三条
出札が無い陣の札を、その札が競技線内(空中を含む)にあるときに有効手で触れた場合、これをお手つきとする。
有効手が一方の陣の札に触れたままその札が他方の陣に入り他方の陣の札と接触した場合で、有効手と札との接触部分が他方の陣に入っていた場合に は、他方の陣の札にも触ったこととしてお手つきとする。
札に触る意思の有無にかかわらず、札を取る動作の一連の流れの中で札に触ってしまった場合、お手つきとする。
明らかに、札の整理等で札に触れた場合は、お手つきとみなさない。
有効手以外で札に触ってもお手つきとしない。
読みが不成立の場合のお手つきは全て無効とする。
<補足> 一 出札がある陣の出札以外の札に触っても、お手つきとはしない。 対戦者が払うなどで札が動いてきて、その札がまだ競技線外に出切っていないときに有効手に触れた場合もお手つきとする。ただし、触れた有効手が 構えの段階から畳につけたままだった場合はお手つきとしない。
ニ どちらの陣にも出札がなかった場合は、双方の陣でお手つきをしたことになる。 なお、他方の陣の札については、札直接の取りや札押しの取りが成立していなければ、取りとはみなされない。
三 相手陣の札を取った手を戻そうとしただけのときでも、一連の流れの中で自陣の札に触れた場合はお手つきとなる。 札を取る動作の最後に、畳を叩こうとして誤って札に触れた場合も一連の流れとみなし、お手つきとなる。

(共お手つき)
第二十四条
相手との接触によりお手つきをさせられた場合は、双方共にお手つきをしたものとする。
相手との接触の後でも、自己の動作によってお手つきをした場合は共お手つきとしない。
一方の競技者がお手つきをしてまだ札に触れている状態の手に、対戦者の手が触れた場合は、共お手つきとする。ただし、手の軌道からして明らかに 札に触れないと判断される場合は、この限りではない。
<補足> 一 相手との接触によって物理的に手の軌道が変わったことによりお手つきをさせられた場合をいう。 お手つきをした手が札から離れてから対戦者の手にぶつかった場合で、対戦者が札に触っていない場合は、共お手つきとならない。
二 相手との接触が原因であっても、反射的に手を動かしたことによってお手つきをした場合は、共お手つきとしない。

第八章 送り札
(送り札)
第二十五条
対戦者の陣にある出札を取った場合、もしくは、対戦者がお手つきをした場合、自己の持札一枚を対戦者に送ることができる。
対戦者の陣にある出札を取った場合で、かつ、対戦者のお手つきがあった場合は、二枚送ることができる。
出札が双方いずれの陣にもない時に、対戦者が両方の陣の札にお手つきをした場合は、二枚送ることができる。
共お手つきをした場合や、相手陣の出札を取って自陣の札にお手つきをした場合など、双方が札を送ることができる場合は、お互いの送り札を差し引 いた枚数のみ送ることができる。
下の句の読みが始まる迄に送らなかった場合、送り札の権利は喪失する。
錯誤により、送る権利が無いのに送り札をしてしまった場合でも、双方が気付かないまま下の句の読みが始まった場合は、その送り札は有効となる。
<補足> 一 送り札は、相手陣内へ、相手の方向に向けて送るものとする。 札を送る際は、あぐら、立て膝、中腰等の姿勢で送ってはならず、座り直して、きちんと対戦者に向かって送ること。 競技進行上、相手が札の整理を完了するまで札を送るのを待つ必要はない。
二 札を二枚送るときには、重ねずに一枚ずつ送るものとする。
五 読手が下の句を読み始めた場合でも、送る意志が有って手を挙げて読みを制止していたにもかかわらず、読手が気付かずに読み始めてしまった場合は、 この限りではない。

(送り札の選定)
第二十六条
送り札の選定は送る側の任意とする。但し、送り札から手を離した瞬間から送り札の変更はできない。
送り札の選定は速やかに行うこととし、むやみに長考してはならない。
錯誤により、一枚送るべきところを二枚送ってしまった場合は、最初に送った札を有効とする。
<補足> 三 二枚を同時に送った場合に限り、どちらの札を送り札にしてもよい。
第九章 その他の事項
(禁止行為)
第二十七条
競技者は、以下の行為をしてはならない。
(1)読みが下の句の余韻に入ってから、声を発したり畳を叩いたりすること。
(2)競技中の飲食または喫煙。
(3)競技中に、必要以上に畳を叩くこと。
(4)読手の発音のくせや音の不明瞭さ等に対してクレームをつけること。
(5)決まり字、出札、読札および送り札に関し、対戦者やその他の者に確認すること。
(6)対戦者、他の競技者、読手、審判員に対し示威牽制等不適切な言動を行うこと。
(7)競技者や観客による、競技者への応援行為。
(8)審判員の判定、指示に従わないこと。
<補足> (3)畳を叩かなくとも、度を越した頻繁な素振りは行わないこと。
(5)原則的に競技者は、競技中、競技に関することは勿論、その他のことについても、他の競技者、或いは観戦者と話をしてはならない。 読みが途中で止まった場合や、雑音等により聞こえなかった場合は、その札に関する限り、審判員に確認を求めることができるが、それ以外の 札については確認できない。
(8)団体戦等である程度の応援が認められている場合を除き、原則として応援とみなされる行為をしてはいけない。 禁止行為を行った場合、審判員の判断により、注意、警告、退場の処分の対象となる。 注意とは、違反事項を指摘し、その改善を促すこと。警告とは、再度違反があった際には退場処分にすることを前提に宣告されるもの。退場と は、競技を途中で止めさせ反則負けとし競技場からの退場を命じること。 審判員は、観戦者に対しても同様の措置をとることができる。

(附則)
第二十八条
本規程に定めのない事項については、審判長の判断による。
本規程の更新については、社団法人全日本かるた協会は必要に応じてこれを行うことができる。
平成二十年九月施行


(社)全日本かるた協会 競技会規程

第一章 総則
(総則)
第一条
本規程は、社団法人全日本かるた協会(以下、協会という)主催の競技会(以下、競技会という)の運営および競技の進行について定めるもので ある。
<補足> 本規程は「個人戦」を想定した内容となっている。
第二章 競技運営
(出場資格)
第二条
競技会のうち、A級、B級、C級に出場する競技者は、協会に出場級の選手登録をしている者に限る。
D級以下については、協会への選手登録を要しない。
<補足> 一 A級、B級、C級に出場する競技者の所属会は、選手登録した際の所属会とする。
二 D級以下の競技者の所属会は、競技者の任意とする。

(競技方式)
第三条
競技会は、原則としてトーナメント方式で行い、一回戦の対戦数は二回戦進出者数が二の乗数になるようにする。
原則として、一つの階級を分割することはしない。
<補足> 協会主催の競技会であっても、名人戦など独自の運営方式を定めているものはそれによる。 競技会運営の都合で、やむを得ず一回戦を総当り方式にし、二回戦にて三回戦進出者数が二の乗数になるよう調整することも認めるが、審判長は 対戦の組合せを決定する前にその旨を宣言すること。なお、総当り方式の場合、二回戦の組合せ決定後の棄権を除き、一、二回戦続けて不戦勝に なる者が出ないように調整すること。
二 A級、B級、C級は出場者数が六十五人以上の場合に限り分割を認めるが、A級、B級を分割する場合は、事前に協会競技かるた部長の承認を得 ること。特に、A級の分割については慎重であること。
D級は出場者数が三十三人以上の場合には分割を行うことを認める。E級以下は特に規定しない。

(対戦の組合せ)
第四条
対戦の組合せは、各級ごとに審判長または審判長の指名する競技会役員が決定する。
組合せに際しては、同一所属会の競技者同士の対戦は可能な限り避ける。
<補足> 一 組合せを決める際は、原則としてその対戦に含まれる競技者、もしくはその所属会の代表者で、希望する者の 立ち会いの下に行う。 組合せは、競技者名の書いた競技カードを用いて行い、原則として裏返した競技カードを一枚ずつ表に向け、一組ずつ組合せを決めていく。 同一所属会同士の組合せになった場合は、後で出た方を次の組合せに回し、同一所属会同士の対戦にならないようにする。最後の一組で同一所属 会同士になった場合は、一組目の先に出た競技者、後に出た競技者、二組目の先に出た競技者・・・の順に入れ替えても問題ないところを探し、 入れ替える。 同一所属会同士の対戦を一組以上組まざるを得ないとき、組合せ前に審判長がその決定方法を宣言した場合を除き、入れ替えができなくなったと ころから同一所属会同士も組み合わせていくこととする。
二 一、二回戦の組合せで不戦勝者が出る場合は、不戦勝者を先に決めるのではなく、対戦の組合せを先に決め、原則的に同一所属会の競技者が組合 せ数以上選ばれないようにする。 同一支部内の競技者同士の対戦を避ける等の措置を実施する場合、審判長は組合せ前にその旨を宣言しなければならない。ただし、この措置は二 回戦までとする。 また、組合せにおいて、肉親や夫婦ということでは特段の配慮はしない。

(着席)
第五条
競技者は、組合せ決定後直ちに指定の座席に着かなければならない。
暗記時間開始から五分以内に着席しない競技者は、棄権したものとみなされる。
<補足> 競技者は対戦相手が決まった時点で、ただちに着席するように心がけねばならない。そのためにも、組合せの際には 競技会場をできるだけ離れないようにすること。
(持札の配置)
第六条
競技者は、審判長の合図により持札を並べ始める。
<補足> 審判長は、競技者全員の着席を待つ必要はない。 持札の配置は対戦者の配置を見ながら意識的に遅く並べるようなことをしてはならない。
(暗記時間)
第七条
暗記時間の開始、残り二分、終了は、審判長が宣言する。 <補足> 暗記時間は、ごく一般的な競技者が持札を並べ終わってから十五分間と考えてよく、一番並べるのが遅い人が並べ終 えるのを待つ必要はない。審判長の裁量で、ほぼ全員が並べ終わったと考えられる時点から計測を開始してよい。 競技開始の宣言をもって暗記時間終了とする。
(競技開始)
第八条
暗記時間終了後、審判長の宣言により競技を開始する。
競技者は、競技開始の際には指定の座席に着席していなければならない。
<補足> 二 競技者が着席していない場合、審判長の判断により、競技者不在のまま競技を開始することができる。
(競技中の離席)
第九条
競技者は、原則として競技中は指定の座席を離れてはならない。
競技者は、やむを得ない理由がある場合は、対戦者と審判員に通告した上で離席することができる。
前項の場合、審判長の判断で競技者不在のまま競技を続行することができる。この場合、対戦者は、出札を自己の取りとすることができ、また出 札が相手陣の場合、その都度一枚の送り札ができる。
<補足> 二 離席した競技者は、離席中に読まれた札や作戦等競技に関することについて、何人とも会話してはならない。
(競技結果報告)
第十条
競技を終った者は、双方協力のもとに使用した札の整理をし、勝者はその結果を速やかに競技会役員に届け出る。
<補足> 必ず、使用した札五十枚があることを確認した上で、残り枚数とともに結果を届け出る。
第三章 読み
(読手)
第十一条
競技会主管者は、競技会における読手を事前に発表する。
競技会における読手は、専任読手または公認読手でなければならない。
<補足> 二 A級の競技会場の読手は、原則として専任読手もしくはA級公認読手とする。
(序歌)
第十二条
競技会における序歌は、原則として協会指定の序歌を用いる。
<補足> 協会指定の序歌は以下の通りとする。
難波津に 咲くやこの花 冬ごもり
今を春べと 咲くやこの花
指定序歌以外を用いる場合、審判長は事前にその旨宣言しなければならない。

(読み)
第十三条
読手は、競技会場の状況を確認してから読み始めなければならない。
読みの成立、不成立は審判長が判断し、必要に応じてその旨宣言する。
競技会役員は、必要に応じて読みを中断させることができる。
<補足> 一 読手は、競技会場内全ての競技者が札の整理や送り札を完了し、次の札を待つ準備ができたと判断できるまでは 読み始めないようにしなければならない。 主管者は、必要に応じて競技会場内に役員を配置し、全競技者の準備状況が読手に伝わるようにすること。
二 審判長からの特段の宣言がない場合は、上の句全てが読み上げられていなくても読みは成立したものとする。
三 役員といえども、むやみに読みを中断させてはならない。 読手が競技者の読みの制止に気付かずに読み始めた場合や、競技会場周辺の騒音などで読みを中断することが適当と思われるときに限り、速やか に読手に合図して読みを制止すること。

第四章 審判
(審判長)
第十四条
競技会主管者は、競技会における審判長を事前に発表する。
審判長は、本規程、および競技規程、競技規程細則に基づき、以下の事項に責任を持つ。
(1)対戦の組合せ
(2)読みの成立、不成立
(3)取りやお手つきの判定などで、競技者間で判断がつかない事項への対応
(4)競技者、観戦者に対する競技規程細則に定める事項、ならびにマナーの徹底
(5)その他、競技会進行に必要な事項
審判長は、その業務を補佐するために競技会場内に審判員を配置することができる。
審判長は、個別の試合に審判員、副審判員をつけることができる。
審判長は、必要に応じて審判長代行を定め、その職務を代行させることができる。
<補足> 一 競技会における審判長は、原則としてA級公認審判でなければならない。 なお、別途規定されるまでは、従来の公認審判をA級公認審判とし、それ以外のA級登録選手をB級公認審判とする。
二 (3)競技者間ですぐに判断がつかない場合や、頻繁にクレームがつく場合には、審判員に判定を仰ぐように指導することができる。
三 審判長、審判員は、判定を下す際は毅然とした態度で行うこと。 審判員は、原則としてA級もしくはB級公認審判でなければならないが、A級の競技会場以外では審判長の判断による。
四 審判長は、競技会場全体の状況把握が求められるため、原則として個別の試合の審判にはつかないようにする。 個別の試合につける審判員は、原則としてその試合のいずれの競技者とも同一所属会でない者とするが、競技者双方の了解があればその限りでは ない。 個別の試合につける審判員は、A級もしくはB級公認審判でなければならないが、A級の試合以外では審判長の判断による。 また、原則として副審判員はつけないが、審判長が必要と判断する場合に限り、審判員、副審判員を区別してつけることができる。なお、副審判 員は参考意見を審判員に伝えるのみで、判定は審判員が下す。
五 審判長は、競技者からのアピールに速やかに対応できるように、競技中は競技会場に常駐する必要がある。そこで、競技会場を離れる場合や、競 技会場が二ヶ所以上に分かれる場合は、各会場に審判長代行を配置することが必要になる。 なお、A級の競技会場における審判長代行はA級公認審判であることが望ましいが、やむを得ない場合はB級公認審判でもよい。A級の競技会場 以外では審判長の判断による。

(審判員による判定)
第十五条
審判員は、原則として競技者に求められた場合にのみ判定を下す。
競技者から求められない場合であっても、競技者双方の承諾、もしくは審判長の指示を受けた上で、審判員が判定することができる。
審判員以外の判定は認められない。
<補足> 一 審判長も審判員の一人として個別の試合の判定もできる。 競技者に判定を求められた場合は、審判員は判定のために必要最小限の確認を行った後、速やかに判定を下さなければならない。
二 競技中の判定、クレーム、トラブルについてはまず当事者間で解決に努め、解決できない場合のみ審判員の判定を仰ぐのが原則であるが、それが 長時間に亘る場合やあまりにもクレームのつき方がひどい場合には、競技進行の上からも、審判員が注意していくべきである。
三 例えば、観戦者による判定は認められない。

(個別の試合の審判員)
第十六条
個別の試合についた審判員は、いずれかの競技者から判定を求められた場合は、速やかに判定を下さなければならない。
個別の試合についた審判員は、競技者に何らかの判定を類推させる行為をしてはならない。
競技会におけるA級の決勝戦には、原則として試合開始から審判員をつける。
<補足> 一 審判員は副審判員がついていた場合に限り、その意見を聞いて判定を下すことができるが、その試合の判定に 関しては競技者に対する確認を行うことなく判定すること。
二 読みを待たせるときは審判員がついていないときと同様、競技者が挙手などで行わなければならない。また、審判員が読みを待たせることは、競 技者に取りやお手つきの判定を類推させることにもなるので行わないこと。 また、審判員が読みに合わせて身体を動かすことは、競技者の邪魔になる恐れもあるため、極力目の動きだけで状況を把握するようにする。

(違反行為への対応)
第十七条
審判長、審判員は、競技規程細則に違反する競技者に対しては、対戦者のアピールの有無にかかわらず、適切な指導を行うことができる。
審判長、審判員は、競技規程細則に定める禁止行為、ならびに妨害行為を行った競技者や観戦者に対しては、段階的に注意、警告、退場の措置を とる事ができる。
<補足> 一 例えば、構えの際に有効手や頭が競技線にかかっているからといって、すぐに指導しなければならないものではないが、 一センチ以上はみ出るような明らかなる違反については、積極的に指導すること。
二 注意とは、違反事項を指摘し、その改善を促すこと。警告とは、再度違反があった際には退場処分にすることを前提に宣告されるもの。退場とは、 競技を途中で止めさせ反則負けとし競技場からの退場を命じること。 なお、行った行為が特に悪質と判断する場合は、段階を経ずとも警告、退場の措置をとることができる。

(附則)
第十八条
本規程に定めのない事項については、審判長の判断による。
本規程の更新については、協会は必要に応じてこれを行うことができる。
平成二十年九月施行


令和元年五月一日施行の改定について→クリック! (Ms-Word)

『改定内容』
「競技規程細則」第二十三条(お手つき)第二項を以下の様に改めるとともに、補足を削除する。
有効手が一方の陣の札に触れたままその札が他方の陣に入り他方の陣の札と接触した場合でも、有効手が他方の陣の札に触れていなければ他方の陣はお手つきとしない。

▲▼ 再・後輩への手紙(IV)のページ ▼▲ 
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