"競技かるた"に関する私的「かるた」論

番外編

「昇級・昇段」考

〜逸機のリスク〜

Hitoshi Takano AUG/2019

 各級には、上の級への昇級基準があり、C級・D級のようにベスト4以上で昇級できる級があるわけだが、所属する会の方針で原則として優勝しないと昇級させないとか、 原則決勝進出が昇級の条件というケースがある。
 もちろん、所属する会の方針なので、それに口を挟むつもりはないが、私の個人的な意見を述べたいと思う。

 (一社)全日本かるた協会(以下、全日協と記す)の昇級基準を満たせば、即、昇級させればよいと考える。
 こうした考えの背景には、私が大学から競技を始めた大学かるた会の出身者ということも影響しているかもしれない。 大学かるた会出身者として高校のかるた会なども見てきたということもあるかもしれない。
 高校生の中には、大学進学ととともに競技から離れる選手も多いし、大学生も就職と共に競技から離れる選手も多い。 このように競技から離れる選手には、ある意味タイムリミットがあると考えてよいだろう。
 大会に出る機会も限られていると考えれば、早く上の級に出場したほうが、機を逸することがないと思うのだ。
 たとえば、ある大会でD級ベスト4に入ったとする。昇級を見送った次の週の大会でD級で優勝したとする。 しかし、昇級してC級に出ていれば、好調を持続して、C級のベスト4以上に行けたかもしれないのだ。
 様々な事情で大会出場の間があいてしまったために、同じ級で足踏みしてしまうことも考えられるとすれば、逸機はもったいないと思う。
 もちろん、競技に"IF"を持ち込むのは禁物である。
 あくまで、その時々の決断の結果は、自分自身が負わなければならない。ただ、本人が上がりたいと思うことに「会の方針」がストップをかけるとしたら、残念な面もあるのではないだろうか。
 限られた高校生活、大学生活の中で競技に向き合うのであれば、できるだけ早く上の級での経験をすることが競技生活でよいのではないかと考えている。 もちろん、それよりも優勝経験のほうが本人にとって大事だという考え方を否定はしない。
 ただ、高校・大学の競技生活の中には、団体戦という要素もある。このとき、何級の選手が何人いるということがチームにとって大事になってくるという面も考えたい。 上の級に早く上がれるのであれば、その機をあえて見送ることはないと思うのだ。

 そして、昇段についても、上の級に資格ができたら、どんどん昇段すればよいと思う。 全日協としても、昇段の申請料という収入は大きいという組織財政の面からの考え方もあるが、団体戦を考えた時には、特にA級5段とかA級6段という肩書がチームに役立つ面があるからだ。 指導者の先生の段位を追い越しえてはいけないなどの遠慮はいらないのだ。
 そういう遠慮をする必要がないように、全日協も基準を明示しているのだと思う。 指導者にしても、教え子や弟子に追い抜かれることは、いわゆる「恩返し」として考えてくれるだろう。

 チャンスの女神には前髪しかないという言葉もある。「逸機のリスク」は充分に考えるべきだろう。

 2020年4月から、段位基準と級のクラス分けが変更となる。2年間の移行措置期間があり、完全移行は2022年4月とのことだが、 D級は初段相当の級となり、E級が現在のD級のような無段の初級者のスタートのクラスとなる。今までのE級はF級となることだろう。 → [ 参 照 ]
 移行期間中の特別昇段基準が設けられているが、できれば、その基準に合致すれば昇級・昇段の決断をしてほしいと個人的には考えている。
 本稿は2019年8月現在のクラス分けで書いたものなので、読む際にはそういう認識で読んでいただきたい。
Auther

高野 仁


次の話題へ          前の話題へ

"競技かるた"に関する私的「かるた」論のINDEXへ
慶應かるた会のトップページへ
HITOSHI TAKANOのTOP PAGEへ

Mail宛先