新人指導論
〜急がば回れ、歌の暗記は慌てるな〜
Hitoshi Takano Nov/2007
競技かるたの競技人口に飛躍的な伸びがないのは、何故だろうか?
漫画やアニメに登場する機会が少ないからだろうか?
結局は、今の日本人からすると古典にあたる和歌を百首覚えなければならないというハードルの高さに行き着くのではないだろうか?
現代の日本人でさえ、古文ということで抵抗がある中、海外への普及はなおさら大変なことになるかと思うが、海外で指導に当たられている方々には敬意を表する次第である。
興味をもって入ってきても、百首覚えるというとっかかりの作業でつまずいて、やめてしまうケースもある。では、まったくの百首知らない初心者に対して、やめさせないようにする指導方法はあるのだろうか?
もちろん、指導者や先輩に当たる人の温かい親身の指導、はげましという王道もあるだろうし、○首覚えたらご褒美というようなインセンティブ方式も実践されているかと思う。
しかし、競技かるたに興味を持つきっかけは何かといえば、いわゆる「犬棒かるた」などですでに経験している読まれたものに対応する札を取るというゲーム性ではないだろうか。最近では、その「犬棒かるた」などの経験もないケースもあるようなので、そういうケースの場合は、テレビで見て、札を払うのが格好良く見えたから、自分もやってみたいということになるのではないだろうか?
これを考えれば、百首覚える指導とは別に、札を払う指導をこそ、並行的もしくは先行的に行うことこそが、競技かるたに興味をもったきっかけに対しての有効な指導方法ではないだろうか?
最初は、敵陣の左右下段、自陣の左右下段に一枚ずつでも置いて、札を払う面白さから体験させるのが、興味をもって引きつける上策ではないかと思う。初心者では、まず、この払いからしてできないのだから、少し、まともに払えるように自分自身で感じられるようになれば、上達したという達成感で満足を覚え、さらに上のステップを目指そうとする動機付けになることだろう。
そして、札の払いに格好がついたら、札を少しずつ覚えさせていけば良いと思う。「は」札を4枚覚えさせ、敵陣の左右下段に一枚ずつ、自陣の左右下段に一枚ずつ置いて、実践してみるところから始めてもいいだろう。
こうした経験をつませた上で、決まり字や共札の概念などを教えていけば、決まり字表を見ながら、自分から進んで覚えるようになる。
あわてて百首を詰め込んで覚えさせなくてもよい。じっくりじっくり時間をかけて少しずつ、
覚えた札を使いながらの払いの練習とともに、覚えるように指導すればよいだろう。
新人指導に於ける途中でやめさせないための工夫は、慌てて百首を詰め込んで覚えさせないで、払いなどの練習を交えながら、ゆっくりと覚えさせていくという「急がば回れ」の指導方式にあるように思える。
とはいっても、百首を覚えることを目標に入会する人もいるので、その辺の指導の見極めは必要なことである。
要は、その初心者にあった指導方針を立てて実践することなのである。
「"指導"の方法論」のINDEXへ
次の話題へ 前の話題へ
★"競技かるた"に関する私的「かるた」論のINDEXへ
☆ 慶應かるた会のトップページへ
★ HITOSHI TAKANOのTOP
PAGEへ