まんが論

〜普及のツール〜

Hitoshi Takano Nov/2010

 競技かるたを取り上げたまんがといえば、一般雑誌でいえば、読み切りで 「氷雨かるた」(作:北原雅紀,画:森藤映子)、連載で「むすめふさほせ」 (おおや和美)、「かるた」(竹下けんじろう)、「まんてんいろは小町」 (小坂まりこ)、「ちはやふる」(末次由紀)などがある。
 ここ数年いろいな雑誌で、こうまで、まんがという媒体で取り上げられたこと は、よろこばしいことである。
 やはり、まんがの影響力は大きいからである。普及のツールとしては、非常に 有効である。実際、「ちはやふる」効果といわれ、E級に多くの人が集まり、D級も盛況になってきている。囲碁界では、週刊誌連載・単行本化・アニメ化された「ヒカルの碁」をきっかけに囲碁を始める小学生が急増したという「ヒカルの碁効果」というのがあったことは記憶に遠くないであろう。かるたまんががきっかけで、競技かるたを始めたという選手が今後ますます増えてくることを期待している。
 さて、多くの漫画で意識されるのはクイーン(もしくはクイーン位)であるよう に思う。これらのキャラクターのつくりこみ方も、作者の腕のみせどころであろうし、 まんがの面白さであろう。
 そのほか、団体戦を取り上げる場合の団体戦の描き方なども見所のひとつでは ないだろうか。
 もちろん、クイーン以外のキャラクターのつくりこみも面白さを増す要素である。
 実際の競技経験者が、こういうキャラは、そういえばいたなあと思わせればたいした ものである。
 あとは、まんがの書き手に望むのは、競技かるたについて、しっかり、ルールや 競技の要諦を理解していてほしいと思うことである。また、札を一枚一枚文字まで 入れて書くのは大変だろうが、読まれた札との整合性とか、他の画面との整合性は しっかりととって描いてほしいと思う。
 そういう作り手の心配りが、読者のハートをつかむのだと思うからである。

 良質のまんがは、競技かるたの普及に大いに役立つものである。
 まんがを読んで興味をもって、この道に進みましたというような選手が、一人でも 多く現れるように願っている。

 まんがは,あくまできっかけであり、まんがによって始めた選手をきちんと育てていくことも必要である。(「早期教育論」参照)
 将棋界は、羽生七冠フィーバーで、小学生の底辺を広げ、囲碁は漫画・アニメの「ヒカルの碁」で小学生の底辺を広げた。底辺を広げ、普及に力になったことは確かだが、やはり一時的であるように感じる。一時的拡大も、それまでの普及効果のジリ貧状態を考えれば立派な成果ではあるが、さらには持続性が大切である。これをきっかけにその道に入った初学者をきちんと育て、将来的に競技を続けさせていくようにすることでの個に対する持続性の確保と、底辺拡大と入門する若年層の増加という普及面での持続性の確保の両面が求められるのである。
 「ちはやふる」効果は、大会におけるE級・D級の参加人数の増加をもたらした。今後これらの選手が、C級、B級と上のクラスに上がっていけば、上のクラスの参加人数の増加も見込まれる。そのときに大会運営の方法や、トーナメントのあり方も問われることになる。普及の拡大とその成果に対しては、運営サイドはその結果として生じる諸問題に対して、普及したものとしての責任を果たさねばならない。この責任をも合わせて、まんがという媒体に期待するだけではなく、かるた界に関わるものとして、普及の拡大努力と初心者・初級者への指導・育成、斯界の発展のための努力を持続的に地道にしていかなければならないことを肝に銘じたい。


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