プレッシャーに負けるな!

Hitoshi Takano Feb/2000


 皆さんは「プレッシャー」という言葉を聞いて、どう思うだろうか?
 私にとっては、決していい響きを持たない言葉である。
 何故か?
 実は、プレッシャーに弱いというか、影響を受けやすいタイプだからである。

 さて、どんなプレッシャーが多いかというと、私の例で恐縮だが、自分より 格下と思っている相手と取る時が多い。終盤に予想外にせっていたり、リード されていたりする場合がほとんどである。
 何故かというと「負けたくない」と強く意識し、「負けたらどうしよう」と 無意識のうちにも意識してしまうからである。別に負けたからといってどうこ うなるということはない。団体戦などでは、少しは「負けたら責任重大」で仲間 に顔向けできないということはあるかもしれないが、普段の練習で始めたての 新入生に負けたとしても、それで周りから責任を問われることなどはない。
 しかし、それでも「負けたくない」という意識がプレッシャーを生み、本来 の力を出し切れず、手が縮こまったり、お手つきをしたりしてしまう。結果、 悔しい敗戦をしてしまう。
 この「負けたくない」とか「負けたらどうしよう」という感覚は、「後ろ向 き」の発想である。「負けたくない」かるたは、「札を取られたくない」とい う意識に走り、特に自陣札をKEEPしたくなりがちとなり、敵陣への攻めを甘く する。そして、お手つきを恐れるあまり早く手が札の上に行っていても、慎重 になりすぎて相手に取られてしまったりする。さらに、その慎重しすぎを打開 しようと無理に攻めに行って、あげくはお手つきをしてしまう。
 プレッシャーの悪循環である。これでは、たとえなんとか勝っても「ほっ」 とするだけで、ストレスが蓄積するだけである。

 逆にプレッシャーを感じずにのびのびと取れる時は、どんなときだろうか?
 自分より格上と思っている相手と取る時である。ダメで元々で、勝てればラ ッキーで、勝てそうな展開になれば「勝ちたい。がんばるぞ!」という気持ち になり、予想外の力が出たりする。思い切った攻め、大胆な送り、これらがま た成功するのである。
 この「勝ちたい」という思いは、非常に「前向き」の発想である。「勝ちた い」という思いは、「札を取りたい」という意志になり、敵陣への攻めの力に なっていく。勝てれば、その喜びは大きく、たとえ負けたとしても格上相手に 善戦できたと満足感が得られる。プレッシャーを感じるかるたが「ストレス蓄 積型」とすれば、こちらは「ストレス発散型」のかるたである。
 ストレス発散型のかるたが「能動的」であるとすれば、ストレス蓄積型は「 受動的」であるといえるだろう。

今回は、「プレッシャーに負けるな!」という話であるが、「プレッシャー を感じるな!」という話ではない。感じてしまったものは仕方がない。感じて しまったら、考え方をかえるしかない。相手も勝ちきるまでには大変なのだ。
 プレッシャーのせいで気分が受動的になっているわけだから、それに親和性 のある「相対的」ものの考え方をしてみよう。
 「遅くとも、相手より早くさえあればいい。」
 「自分で取っても1枚、相手のお手つきでも1枚、かるたのミッションは札 をたくさん取ることではなく、相手より1枚でも早く自陣をなくせばいいのだ。」
絶対的速さを求め、お手つきの危険をおかしても決まり字ピタリのスピード を追求する人もおり、プレッシャーから開き直れれば功を奏するかもしれない が、前に述べたようなお手つきという悪循環に陥る一要素を孕んでいるともい える。

 万一、プレッシャーを感じてしまったら、そのプレッシャーを感じている事 実を受け入れ、開き直るにしても、相対思考でいくにしても、プレッシャーの 中の自分のベスト思考を発見して、試すだけの余裕を持つことである。
 まあ、心底重いプレッシャーの場合、こんな余裕などないのかもしれないが、 日頃からプレッシャーの対応に慣れておくことで、重いプレッシャーが少しで も軽く感じるようになれば、ラッキーではないか。  「病は気から」というが、「プレッシャーも気から」なのだ。


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