うまいやつは突指しない

Hitoshi Takano Jan/2000

 先月11日の練習で、非常に久々に突き指をしてしまった。敵陣左(向かって右)と 自陣右の2字の縦のわかれ札だった。上段上空でぶつかり、上段に手が落とされたもの の痛みをこらえて敵陣で札を取った。試合中に痛みが去るだろうと思っていたが、痛み は取れなかった。翌日になれば痛みが取れるだろうと楽観していたが、翌日、右手人差 し指の付け根が見事に腫れていた。3週間たった今でも、当初に比べればずいぶんと楽 になったものの、若干の痛みが残っている。
 翌週再び対戦した相手に聞いたら、突き指はもうなおったと言う。相手に突き指をさ せたことはあっても、自分のほうが長引くような突き指はちょっと思い出せなかった。 おかしなものだが、相手の一言で余計に痛みが増したような気がした。
 もともと、私の持論は、「突き指は下手なやつがするものだ。うまいやつはしない。」 である。そして、自分はうまいから突き指をしないはずだった。ところが、今回の災難 である。これでは、話が違うではないか?
 新人に払いを教えるとき、「指は開かない。指一本だと突き指しやすいだろ。それが 開かずに他の指とくっついていれば突き指しにくいじゃないか。」とよく説明したもの だ。場合によっては、「三本の矢」の故事まで持ち出して説明する。そして、「構える ときの利き手は、卵を軽く握る感じで、自陣の下段から前にでないように置く。払いに いくときも、その丸めたままの指で札際まで行き、払ったり突く瞬間にはじくように指 を伸ばす。札際が早くなるし、丸めておけば突き指しにくい。のびきった指は突き指し やすいから、こういう遊び(余裕)が必要なんだ。」とも説明する。実際、自分もこれ を実践し、幾多の突き指の危機を回避してきたし、クラッシュしても自分の被害のほう が軽かったものだ。
 しかしながら、今回は、今までのようにはいかなかった。取りは持論のとおりで、指 が単独になっていたり、のびきっていたりはしていない。それなのに、何故かくも痛手 となる突き指をしたのだろうか?
 それは、相手の手の勢いが、私の突き指予防機能の限界を上回ってしまったというこ とにつきると思う。運悪く正面からもろに衝撃を受けてしまったからだ。以前は、「突 き指させられそうな払いや突きを逃げるのも技のうちさ。」と嘘吹いていたが、今回は 逃げるよりも札を取りに行く思いが勝ってしまい、逃げる技を発揮できなかったわけだ。
 最近、突き指さえしなかったのは、なんのことはない。自分自身の手が出ていなかっ たことにもよるのだ。それが、手が出るのが早いといわれる相手に手がもろにぶつかる ほど札に感じて手が出ているわけだ。突き指をしてしまったことよりも、むしろこのこ とを喜ぼう。
 今回の突き指は、突き指をしないということの裏にあった自分自身の驕りを指摘して くれた出来事であるとともに最近の練習の成果のあらわれの一つと位置づけ、さらに精 進していきたいと思う。

 「今まで、私が突き指をさせてしまったみなさん、ごめんな さい。」
 この場を借りてお詫びしたい。そして、「相手も自分も傷つ いたり痛めたりすることのないカルタを取れるよう努力します。」と宣言したい。


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