<百人秀歌>


左京大夫顕輔

秋風にたなびく雲の絶え間より
   もいづる月の影のさやけさ



 「もいづる」(一首)→「もいづる」(秀歌)と一文字の違い である。月の光が雲と雲の隙間から漏れる様子の表現の違いである。「もれいづ」の下二段活用 連体形が百人一首の「もれいづる」である。秀歌のほうの「漏り」は「漏れ」の古形(上二段 活用)となる。
 現代人の感覚で、読みやすさでいえば、「もりいづる月のかげのさやけさ」ではなく、 あきらかに「もれいづる月のかげのさやけさ」であろう。

 この歌を見ると、「あきすけ」の「あきかぜ」、「あきかぜ」の「あきすけ」と作者名と歌を 覚えたことを思い出す。「あき」つながりで、音の感じが心地よく自然に覚えられたのだった。

 この歌のよさのひとつは、第4句の字あまりだろう。七七で終わらないところに、不思議な間 があって、その不思議な間が、「さやけさ」という語を際立たせ、清澄さを感じさせるのである。


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2008年6月6日  HITOSHI TAKANO