新 TOPIC
年齢とキャリア
〜説得力〜
Hitoshi Takano Feb/2025
昨年末にTV各局で「八代亜紀一周忌」特集が企画されていた。
3本ほど録画して、先月に少しずつ見ていた。少しずつというのは、2時間スペシャルなので2〜3回にわけてみていたからだ。
持ち歌だけでなく(私のお気に入りは「おんな港町」と「愛の終着駅」である)、ブルースやジャズなども聞くことができた。
歌の持つ力なのだろうか、歌をきいているうちに、ふと気づくと涙ぐんでいる自分がいることに驚いた。
一流の歌手の歌唱の力を感じた。
番組の中で、八代亜紀が「歌に年齢とキャリアによる説得力を持たせたい」という内容の話をしていたが、まさにその説得力に心が揺さぶられたのだろう。
歌手も年齢によって同じ持ち歌であっても歌い方がかわり、いわゆる味がでてくる。落語家も、年齢とキャリアで噺に深みがでてくる。
役者の演技には、年齢に応じた役柄がはまっているという感じがある。
いわゆる「芸能」の世界は、年齢とキャリアによる説得力が発動しているわけだ。
スポーツの世界、特にプロスポーツの世界には、基本的に競技者として現役か引退後との別があり、現役期間という中での年齢とキャリアによる説得力の発露ということになる。
「心技体」というが、「体」の部分にどうしても境界線ができてしまう。
囲碁・将棋の世界では、高齢の現役棋士は多いが、やはり、年齢による体力その他の衰えを感じて、それが勝敗の成績にも影響を与えるという。
いわゆる一般社会という括りで活躍する人たちは、どうだろうか?
料理人の料理には「年齢とキャリアによる説得力」があるように感じる。職人といわれる世界もそうだろう。
会社勤めといわれる世界でも、「男の顔は履歴書」とのたまわった方がいたが、「年齢とキャリアによる説得力」はあるように思う。
最近、鏡に映った自分の顔をみて、「穏やかな顔をしている」と感じた。定年退職前の顔は、少し険のある顔だったように思う。
顔にあらわれる年齢も、そして職業人としての経歴も含めて、それを背景として、そして滲ませて仕事をしてきたのだなと感じている。
さて、こうしたことを前提に、私は「年齢とキャリアによる説得力」のある「かるた」を取っているかということを考えてみた。
競技かるたの世界は、その構成要素の中で、やはり「体」の部分の割合が大きい。
年齢による視力・聴力の衰え、肩や肘・膝といった関節の痛み、腰痛、神経痛など、そして、若い世代が一日に何試合も取れる体力をもっているのに対して、
試合を重ねるごとに感じる体力の減退。
そんな「体」の状態で、「年齢とキャリアによる説得力」を持たせることが可能なのだろうか。
年齢についていえば、さきに述べた「穏やかな顔」と感じたのは、実は、かるたの暗記時間に行ったトイレで自分の顔を鏡でみたときのことだった。
年齢相応に白髪がふえ、髪の毛に力がなくなり、頭頂部は薄くなりはしているが、味わいのあるいい顔をしていると思った。
競技を前にした気迫を表情に出さず、内に秘めさせたよい顔だった。
年齢による説得力のある顔だと思ったし、それが可能になったのは、キャリアによる裏付けもあるからだろうと感じた。
見た目が相手に与える影響をふまえて、キャリアに裏打ちされた戦術面、技術面の発揮ができれば、そこに「年齢とキャリアによる説得力」のあるかるたになるだろう。
それが、相手に伝わっているかどうかは、相手の感性にもよるのだろうが、、、
ただ、競技である以上、そこに勝敗がつく。勝てば「説得力」を持つが、負けると「説得力」があったかどうかははなはだ疑問となる。
幸い、私の上段つかい(主に上段中央部分の定位置札)の取りは、勝敗に関わらず、私の個性とともに技術を感じてくれる対戦相手が少なからずいる。
この技術は、説得力を感じてもらえているのではないかと思う。
厳しい世界であるが、たとえ負けても「年齢とキャリアによる説得力」をもった(相手の感性に訴えかけることのできる)かるたを目指していきたいと思う。
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