(社)全日本かるた協会に望む

Hitoshi Takano May/2001

 今回は、社団法人「全日本かるた協会」(以下、全日協と記す)に望むことを何点か述べてみたい。

 全日協は、数年前に社団法人化した。その中で、競技かるたの普及や技術向上のほかにも小倉百人一首 の研究などの分野をもその活動としている。私がこれから、ここで望むことと書く中には、すでに全日協 の方針として出ているものもあるし、すでに考えられてはいるが、人的資源や経済的資源から実現にい たっていないことも混在していると思う。ただ、あえて一会員の今後の展望への期待を述べるものである。

 社団法人としての手本は、日本将棋連盟にあると思う。なお、蛇足ではあるが、囲碁の日本棋院は財団 法人である。さらに蛇足を重ねると日本相撲協会も財団法人である。将棋と囲碁で法人の形態が違うとこ ろがおもしろい。
 日本将棋連盟の活動をみると、やはり大きなところは、将棋会館を持ち、道場の経営、出版部による 書籍の出版、棋譜の管理、将棋博物館の運営、各棋戦の運営などがあろう。この運営には棋士のほかに、 事務組織が整備されている。日本将棋連盟との比較を試みるだけでも、日本将棋連盟に追いつけを合い 言葉にできるくらいにある方向性がでてくると思う。

(1)全日協の自前の「かるた会館」を持とう。

 故伊藤秀文前会長は、私財を投じて「かるた会館」を建設したが、現在では文京区の施設「かるた記念 大塚会館」となっている。やはり、法人としての自前の「かるた会館」は、必要である。「かるた会館」 には、法人の本部となる機能を持たせるほか、以下の機能を持たせる。

(2)「かるた会館」では「直営道場」を運営しよう。

 直営道場は、質の高い練習環境の確保とともに新人の育成の場所である。練習環境が身近にない初心者 が、上京してきて練習できるような数日間のコースなども可能としたい。そして、ここに行けば、時間が ある時は、いつでも練習ができるというようにしたいと思う。

(3)「かるた会館」には「宿泊施設」を併設しよう。

 「直営道場」のところで、練習環境のない初心者が上京してきてという設定をしてみたが、そのためには 宿泊施設も必要になる。練習に熱がはいり、終電がなくなってしまった場合にも便利ではないだろうか。

(4)「かるた会館」には博物館(資料館)を併設しよう。

 小倉百人一首関係の研究も、全日協の活動の一環であり、講演会なども定期的に行われている。こうした 記録も含め、各地の選手が集めた資料などが一代限りで古書店などに流出してしまうより、法人の資料館(博物館) で、資料的価値のあるものを整理して、後代に残すのは重要な使命であると思う。

(5)「出版部」をつくり、書籍出版を盛んに行おう。

 今でも「かるた展望」を企画部門で発行していると思うが、本格的な出版部がほしい。日本将棋連盟の 「将棋世界」には遠く及びもつかないのが現状である。先の博物館話のところで全日協の定期的な講演会 のことも述べたが、こういうものもまとめて出版の対象になる。そして、競技選手はもっと、技術論や 自戦記を書かねばならないと思う。そして、それを出版することで、普及と技術の向上に寄与していく のだ。

(6)ショップをつくって、グッズを販売しよう。

 札や書籍はもちろんのこと、有名選手や名物選手の揮毫した扇子や色紙、それらをあしらった商品を 販売する店舗を設ける。百人一首の札をモチーフにした様々な商品開発は結構おもしろいと思う。

(7)「記録」データの集約と管理を行おう。

 (5)で自戦記などといったが、記録がきちんとしていないと書きようもない。かるた界は長く、試合 結果の記録さえ散逸しているような状況であった。全日協が、勝敗結果という基本的なデータベースを きちんと管理するとともに、好カードや準決勝以上とか、タイトル戦については、ビジュアルに訴える ような記録方法を開発していって、管理しなければならないと思う。

(8)スポンサー契約のタイトル戦や大会の運営を目指そう。

 日本将棋連盟の足下にも及ばないのがこの部分である。日本将棋連盟は、各新聞社との棋戦契約料で 運営されている部分が非常に大きい。かるたは、新聞の将棋や囲碁欄のように棋譜という形で残しにく い競技だが、記録の工夫と書き手の工夫で新聞掲載でもおもしろく読ませることのできるものが可能で あるはずだ。また、CDやなどでの記録や、映像記録は可能である。かるたの取りは、まさに映像世界 に馴染むようにも思うので、新聞がだめなら、この分野からのスポンサー契約のアプローチはどうだろ うか。
 (個人的には、囲碁・将棋で名人戦よりも高額の棋戦を契約している読売新聞に期待したい。競技 かるた名人戦のスポンサーにはなってくれないだろうか?)

(9)事務局の充実をはかろう。

 上記の活動を行うには、人的な資源が必要である。営業的活動を含めた事務局の充実が望まれる。 そして、その人たちの人件費をまかなう算段も必要なのである。結局は、この費用部分がネックと なって事業計画の拡大に困難があるというわけである。

(10)カード会社と提携し会員の管理をしてみては?

 これは、賛否あるところだろうが、カード会社と提携し、会員カードを発行 すれば、その会員の管理の手間は事務局から離れるし、会費も1年1回自動的 に引き落としが可能であり、加入者にとっても振込みの手間などが簡単である。 そしてそのカード会社にスポンサーになってもらう可能性もある。カード利用 代金のうち何%かは協会にバックしてもらうような契約も可能ではないだろう か。
 ただし、会員の中でも多そうな未成年者問題は存在する。ただ、未来のカード 利用候補生ではあるので、親の同意や制限事項(かるた会の会費や大会参加費 限定とか)をきめれば、カード会社にも将来的メリットがあるのではないだろう か。

 今回は(も?)、好き勝手を書かせてもらった。ご意見等あればうけたまわりたい。

次のTopicへ        前のTopicへ

トピックへ
ページターミナルへ
慶應かるた会のトップページへ
HITOSHI TAKANOのTOP PAGEへ

koisucho@yahoo.co.jp
(@は半角"@"でお願いします)