「惨敗?!」〜あるチームの凋落〜
Hitoshi Takano SEP/2002
夏の職域・学生大会(以下、“職域”と記す)が終わった。A級では、“職域”の名門「早稲田大学」が30回目の優勝を遂げた。“職域”が終わると「かるた界」は秋を迎える。
暑い夏が終わり秋となったが、残暑の中であっても秋のうらがなしさや寂しさを感じざるをえないチームもあった。今回の“職域”でAチームはC級最下位、BチームはE級最下位となったあるチームである。このチームは“職域”A級優勝18回(早稲田大学に次いで通算優勝回数では歴代2位)や7連覇(早稲田大学と並んで歴代1位)という記録を持つ、明らかに過去においては光をはなっていた名門チームである。
会員数から言って2チームは出場させたいところではあるが、次回はD級出場のため、E級にチームを出すことはできないことになってしまったのである。これを凋落と言わずになんと言おうか?何がこのチームに起こったのだろうか?
私自身は結果を知るのみであったので、観戦子のレポートに基づき、C級に出たAチームの様子をレビューしてみよう。
1回戦は、対戦の組み合わせとしてはこのチーム的にはわりとうまくいったらしい。しかし、1勝をあげるも、主将がやや実力が劣ると思っていた相手に苦戦し、勝ちペースの三将を「札合わせ」に付き合せる羽目になったという。結局、出札が悪く二人とも負けてしまい、勝ち点0(1勝4敗)という最悪のスタートを切った。
2回戦は、対戦の組み合わせとしては最悪と思われた。主将、副将が相手のの五将、四将を引いてしまっては、相手チームの3本柱を崩すのは難しいといえよう。三将が終盤、相手を若干苦しめはしたが、格の違いが出て押し切られてしまった。勝ち点0(2勝3敗)と勝ち星は2つあげたもののチーム的には完敗であった。
3回戦は、対戦の組み合わせとしては、有利と思われた。全員が対戦相手の実力とほぼ互角かそれ以上と考えられる形であった。三将は出札が悪く早々に負けるが、主将、副将、五将は着実に札を減らし3勝をあげる。序盤大きく出遅れた四将もそれにつられる形で1−1で追いついた。この1−1をものにできれば、勝ち数、勝ち点で3回戦の相手チームに並んぶものの、かつ主将成績で上回るためブロック2位で残留が決定する。
四将は、「な(がか)」と「む」のどちらを残すか迷ったと言う。
結局、決まり字に自信が無く「む」を残す。しかし出札は「な(がか)」であった。勝ち点1を上げ、3勝2敗で3回戦は終えたものの、残留は最後の試合に持ち越しとなったのである。
4回戦は、残留をかけた大一番である。ふたたび主将、副将が相手の下位を引くというあたりであった。3勝できるかいなか微妙な組み合わせであった。四将・五将が序盤から引き離されていき、早々と負けモードに入る。あとの3人で勝てばよいのだが、副将や三将の心配をしすぎているのか主将はもたつく。主将の不調に乗り切れない副将と三将。なんという悪循環。結局、信じられないことに3人とも負けてしまう。絶望の0勝。陥落が決まった。
観戦子曰く、「ポイントはいくつかあると思うのですが、結局のところ朝の一試合目でしょう。主将が格下に勝ちきれなかった点。これが一番大きいと思います。三将は、おそらく札合わせをしなければ勝っていたということですし、とても悔やまれます。Aチームに初出場の五将と四将は最低限の仕事はしたと思います。3試合目で四将が2−1から相手陣を抜いたときの送りで、『決まり字がわからなかったから』という理由で『む』を残してしまったのは、残念ですが、本質的な負けの原因とはほとんど関係ないでしょう。また、4試合目などは傍から見ていても明らかにチームがかみ合っていないというのがとても気になりました。」
次は、Bチームの様子を観戦子のレポートでみてみよう。
Bチームに関しては、一試合一試合は書けないが、悲惨な結果であった。一試合目は全敗、二試合目は一勝、などなど…、そんな感じだった。しかし、他のOB達も弁護していた点は、「対戦の組み合わせが悪く勝ち点を上げられる試合が少なかった。」というところであろうか。
しかし、勝てる相手に星を落としている点も多く職域にも関らず雑な試合が多かったのでは無いかという印象を受ける。勝ち点を思うように取れないにしても丁寧に一つ一つ星を拾っていけば、5人で出ているのであるから最下位という事はいくらなんでもなかったと思える。
B級2人、C級2人。観戦子が2年生の夏は同程度の戦力で5位になれたのだ。その例を上げて、反省会では、乙くん(本コーナーの愛読者にはおなじみのキャラですね)が珍しく現役に説教をしていたようだ。乙くんがかるたの取り組み方を説教しているのを、観戦子も初めて聞いたとのことだ。(乙くん本人も現役のはずなのだが、5年めの状態に甘んじ、最近は練習もしていないようなので説得力のある話だったかどうかは不明である…。)
観戦子の報告は、こう結んである。「両チームともに昇級がありえる戦力ながら、このような成績になって
しまうというのは大変に残念でなりません。何か大きな原因があるのでしょうが、まだ完全な結論は出ていません。せっかく2チーム出せる人数が揃いながら、次回はD級に1チームのみな上、チームとしては、史上初めてAチームがD級陥落してしまったのは、大変に重く受け止めなくてはなりません。(中略)現役にがむしゃらに上を目指す気持ちを持ってもらい、なんとか再建をしたいと思っているところです。我がチームは、この程度のチームでは無いはずだと思います。」
試合を見ていない立場からではあるが、勝手なことを言わせてもらおう。
「“職域”には魔物が住んでいる。」
まずは、この言葉を真摯に受けとめてもらいたい。組み合わせの読みは、あたりはずれがあって当然であるし、札の出がどうのこうのは、日常の試合でも恒常的に起こっていることである。それは勝負の綾ではあるが、チームに他を圧倒する力があれば、問題なかったはずだ。優勝を狙える力があっても、組み合わせに左右されてベストの仮定での力では、所詮その程度の力にすぎない。
経験不足も否めないと思う。観戦子はAチームの四将・五将は初めてのAチームで最低限の仕事をしたとは言っているが、それがまさに経験不足を物語っているのではないだろうか。主将が1回戦で格下に勝ちきれなかった点や、4回戦の主将の不調が指摘されているが、これには多分にプレッシャーなども影響しているのではないか。
“職域”に向けての練習の時も、景気のいい強気なことを言っていたが、それは、不安の裏返しではなかったのか?(プレッシャーに弱いなら、本稿の2002年7月分を読んでほしいものだ。)
率直に今回私が行った職練のうちの二日間を見ると、物足りなさを感じるのだ。午前中の1試合目対策と言って10時から練習を開始といっているのに、10時に行っても50分も待たされるし、午前はわずかに一組であったり、2チームあっても、団体戦形式の練習をしていなかったり(これは他の日にやったかもしれないが…)、どうもこの取り組み方でいいのかなと思える部分もあったことは事実である。
練習に関して言えば、現役自身が組み立てるもので、OBがとやかく言うべきではないと思っているので、職練から試合当日までを含めて自分達で省みてほしい。人から言われてではなく自分で気づくことが何よりの財産になるのであるから…。
先ほど「“職域”には魔物が住んでいる。」と言った。これを真摯に受けとめよとも言った。それは「“職域”を甘く見てはいけない。」ということだ。「甘くなんて見ていません」という答えを返してくるかもしれないが、実はそれが「甘く見ている」ことに他ならないことにはならないかどうか、もう一回振り返ってほしい。“職域”に対しての備えは、すればするに越したことはないのだ。ガムシャラに身体をこわすほどやれといっているのではなく、試合に向けてのコンデションづくりを様々な工夫をこらしながらやってほしいと言っているのである。ベストコンデションでベストをつくす。この当たり前のようで難しいことをうまくやってほしいのである。
これ以上、書きつづけると余計なことをたくさん書きそうである。今回は、そろそろ筆を置こう。
臥薪嘗胆。捲土重来。名門チームの復活を期待したい。過去の栄光ではなく、新たな栄光を目指して!
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