所属会と出稽古

Hitoshi Takano NOV/2002

 相撲の世界では、「出稽古」と言って、自分の所属の部屋でではなく他の相撲部屋に稽古にいくことがある。自分の部屋には自分以外に関取がいないような場合、関取衆の多い他の部屋に行ったり、新進気鋭の力士が横綱や大関の胸を借りるために他の横綱・大関の所属する部屋に出稽古にいくわけである。

 将棋の世界でも、一門の壁を越えた研究会なども行われて、そこでは、”VS”という一対一の勝負が繰り広げられている。

 さて、競技かるたの世界ではどうか。もちろん、自分の所属会があり、そこでの練習がメインになるわけだが、意図的に他の会の練習に出稽古に行く場合がある。それは、強い相手を求めての場合もあるし、いつも同じような相手とばかりだと手のうちがわかってしまって、相手にあわせたカルタを取ってしまうというマンネリ傾向を他会で新たな相手ととることで払拭する場合もあろう。
 私の場合、学生時代は自会の練習がない日にも練習を求めて出稽古に行った。勤め人となっている今も、練習できる日や時間が限られているため、練習回数を確保するためには他会の練習にお世話にならざるをえない。
 人によっては転勤のために、転勤先の土地のかるた会に練習場所を求めることもあるだろう。(これは出稽古とは意味合いが違うか…)

 自分を振りかえると、いろいろな会で出稽古させていただいたことは財産になっていると思う。練習の雰囲気などにも会の個性があるし、様々なタイプのカルタに触れることができた。練習のあとに様々なカルタ論に接することもできた。また、なにより、よそさまにお邪魔しているからには、下手なかるたを取って、相手の練習にならないようなことをしてはならないという緊張感があった。
 よく「大会での一試合は、練習で取る試合数の五試合分の価値がある」ということなども聞くが、出稽古の一試合も、自会での練習の二試合分くらいにはなるかもしれない。(自会での練習でも同じような緊張感をもって取っている人にはあまり関係ないかもしれないが、慣れ親しんだ環境で取るというのとそうでない環境で取るというのでは違いがあるように思える。)

 後輩たちにも、ぜひ「出稽古」を薦めたい。

 現在は、”Club8”のように会を越えた練習会もある。同じ土曜の練習なので行きづらいが、土曜で自会の練習がないときに顔を出してはどうだろうか。

 もちろん出稽古には、マナーがあるので、それも忘れずに…!
 団体戦や大きな試合の前など、ライバル関係として当事者である会には行くべきではないし、大事な試合の調整であまり他会の人には来て欲しくないという時期もあるので、そういうときには行かないことである。普段でも、事前にその会のメンバーに行ってもよいか確認することは大切なことだろう。そして、練習が終わって帰るときには、「ありがとうございました」の挨拶を忘れないようにすることだ。

 個人的には、最近、仕事での疲労感から練習にいくより家で休養していたいというような休みの過ごし方が続いているが、こんな文章を書いていたら、久しぶりに出稽古に行きたくなってきた……。


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