勇気

Hitoshi Takano JAN/2004

 新しい年を迎えました。

 あけましておめでとうございます。

 今年はどんな年になるのでしょうか?

 さて、今年最初のお題は、「勇気」とさせていただきました。本年も私の雑談にお付き合いください。

 実は私、「煙火打揚従事者証」という日本煙火協会が発効する免許をもっています。
 見当はつかれるかと思いますが、花火を打ち上げる免許です。更新して3枚めになっていますので、10年選手です。(1枚で5年使える)
 毎年5月頃に講習会を受けて更新しています。例年、安全対策のビデオを見て、前年に起こった事故を例に注意点を学びます。この時、毎年、決まって言われる話しが、「天候などの条件を良く判断し、花火大会を中止する勇気を持つことが大事です。」ということです。
 昨年は悪天候の中、花火大会を実施し、川の増水に気づかず川の中州に花火師が取り残されるというトラブルがありました。大会自体には問題はなかったかもしれませんが、打揚者たちの事故につながる可能性があったわけです。新聞報道もされ、安全対策の懸念が指摘されたわけですから、大会は実施され、お客さんには迷惑がかからず、スタッフも無事に助けだされたのだから、それでよしとしようということではすみません。
 事故が起きてからでは、取り返しはつかないのです。そういう意味では、中止もしくは延期の判断をしてしかるべき大会だったといえるかもしれません。きっと、今年の講習会で取り上げられる事例となるでしょう。

 「またまた、カルタと関係ない話しから始まったぞ」とお思いのことでしょう。大会を中止する勇気ということなら、悪天候で選手が帰れないような状態の時は、「カルタ大会」を中止する勇気を持ちなさいという話しだなと思われていますか?

 さすがにそうではありません。

 悪天候の中、花火大会を実施するということは、勇気がいることですが、人の命を危険にさらすのは蛮勇といわざるをえません。実施しない勇気、前に進む勇気ではなく引く勇気ということをいいたいのです。

 競技カルタの試合の中では、「敵陣を攻める」「札を取る」という行為は、能動的であり、他者の目からも積極的に見え、お手つきをおそれずに果敢に札を取りに行く姿は、勇気あるものと映ることでしょう。
 しかしながら、試合の中で、流れの中において、あえて手を出さない勇気を発揮しなければならないシーンがあるということを述べたいのです。
 競技カルタは、試合全体で勝てばいい競技で、その札を取ったかどうかという一局面だけで判断される競技ではありません。何枚札を取っても、お手つきで自滅しては仕方ありません。
 札は取れるがお手つきが多い時とか、リードしている時にお手つきしそうな札がある時など、イケイケドンドンで、慌てて取りに行くのではなく、慎重に取りに行くとか、危ないと思うならあえて手を出さない勇気を持つことが必要ではないでしょうか。その一枚のお手つきで、勝敗がひっくりかえるきっかけになってしまうかもしれないのです。

 消極的といわれるかもしれません。しかし、試合の中には、こういうシーンが必ずあります。そういう機微がわからないという方もいるかもしれませんが、ふと気づく瞬間はあるものと思います。
 「あえて手を出さない勇気」。試合の中で、この勇気をふるう機会を見つけ、ぜひ、ふるってみてください。


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