防衛戦
Hitoshi Takano Oct/2005
今年の4月に記載した職場名人戦の第2回が平成17年度の期として、先月17日に行われた。
顔ぶれは同じだが、今回は、前回とは違う。前回は、双方、同じ立場であったが、今回は、「名人」
対「挑戦者」という構図だからだ。
私にとっては、初めての防衛戦である。タイトルは、獲って守ってワンセットと言われるくらいだから、
ここで防衛してこそ、真価がともなうというものだろう。
しかし、挑戦者は、事前に共通の知人を介して、名人位奪取の宣言をしてきた。気合いも入っている
ようだし、この宣言の裏付けとなる練習も充分に行なっているようだった。
それに比較して、私はといえば、8月の練習で、クラッシュ事故によって負ってしまった負傷(突き指)
が完治せず、今月は練習を一回もしていない。しかし、日頃の仕事の忙しさや夏ばてを考えると練習の
しすぎは、本番に疲労を招くことを知っているので、かえって体力を保持できているのではないかと
の思いもあった。
今回は、日吉の練習場が工事のため使用できないので、遠く藤沢での開催になった。
午前10時30分、第一試合が始まった。挑戦者は確かに気合い充分であった。取り初めて感じる相手の
好調さであった。自分はといえば、テーピングした薬指と小指が、不自由さを感じる。構えるときの違和感
や、相手の手と接触した時の痛み。13対8と5枚差のリードを奪われたときは、この勢いで一気に
もっていかれるような気がしていた。
しかし、敵陣を攻めて送った札が連続して出て、それをまた攻め取るという好循環もあって、なんとか
追いつき、相手のミスにも救われて、1対3と先にリーチをかけた。しかし、1対2から、出ると思って
残していた「たま」と「たか」の別れで、自陣の「たか」を中途半端な守りで抜かれ、「たま」を送られ
万事休す。続けて出ないと思いつつ守るも、運命戦を制されてしまった。
昼休みをはさんで、第二試合は午後1時からであった。第一試合を落としたので、体力・気力が持つか
心配だったが、自然体でいくしかないという思いで、私はたんたんと取り進める。数度のクラッシュで
指のテーピングのし直しをしつつ、いつの間にかリードを奪っていた。最後は、粘られ守られて枚数を
減らされたが、自陣を堅くつもって、一勝を返す。
どうやら、挑戦者は、あと一勝で名人位の奪取ということで力みすぎてしまったようだ。気持ちの綾
とはおそろしいものだ。
第三試合は午後2時30分から、同一人物と同じ日に3番続けて取るのは初めての体験。本当の名人
戦では場合によっては5試合とるのだから、大変だということを実感した。
気になっているのは、自分の体力と負傷している指の痛み。第二試合で結構クラッシュしていたので
大きなけがに繋がらなければいいと少々臆病になっていた。挑戦者は以前痛みが取れるまでに6ヶ月以上
もかかる突き指を私に負わせた張本人である。今回の突き指も以前の古傷を再度痛めたようなものである。
要するに手が当たりやすい相手なのだ。しかも、払いの勢いで力で来るのでなおさらクラッシュの被害
が大きいのである。
いつもなら、ぼろぼろになる三試合目の暗記が、不思議とぼろぼろにならずに、接戦を展開すること
ができた。その中で、こちらの陣を抜いて、耳元で「はいった」の大きなかけ声を聞かされた時に、
この気合いに同じ気合いで対抗しては駄目だと思った。
押してくる気合いに同じにように押し返しては、若さと勢いの相手の土俵だ。わたしは、この勢いを
かわしてみたり、包み込んでみたりというかるたを取ればいいのだ。
こう思ったら、自分の中の力みが「ふっ」と消えた。
気がつけば3枚差の勝利。3番勝負をフルに闘っての防衛は、まだまだ、体力的にもやれるという
自信にもつながった。
今回の3番勝負を通じて気づいたことを二点ほど紹介しておこう。
1点は、勝負の別れ目は、「力み」にあったのではないかということである。挑戦者は、力んでいた。
不要なエネルギーがそれによって消耗されていたように思う。それに対して、私は、自然体でいくしか
ないと思ってみたり、相手の力みに力で押し返すことをしなかったりと、自然に「力み」が消えていた。
これが勝因だったのでないだろうか。
もう1点は、薬指の重要性である。突き指が完治しないまま、札をとっていたので、変な取りをした
り、相手との接触で、痛みを感じることがしばしばあった。自分の意識の中では、札を取るのは、中指
と次に人差し指という感覚でいたが、これは違うようだ。中指と薬指が、コンビでメインなのである。
度重なる突き指で、関節が太くなり、少々曲がってしまっているような薬指だが、これは、かるたで
酷使してきたせいに違いない。大事にしていこうと改めて思った。
そして、最後に、今回もまた、運営に詠みに、記録係にビデオ係にと多種多様な協力をしていただいた
現役の諸君にお礼を述べたい。
「いつもありがとう」
次回は、予選が行われる予定である。また、よろしくお願いします。
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