大納言経信
夕されば門田の稲葉おとずれて
蘆のまろ屋に秋風ぞ吹く
決まり字:ユウ(二字決まリ)
「夕方に門前を吹く風が稲をさわさわとそよがせて、この蘆でふいた小屋にも
吹き寄せてくることだ」という歌意である。
作者は宇多源氏の流、官は太宰権帥にいたり、八十二歳の長寿であった。
漢詩、和歌、管弦の三舟の才は、藤原公任の逸話で有名だが、この人にも
同様の話がある。遅れてきた経信は、どの舟でもいいから(岸に)寄せてくれ
と言ったという。どの舟に乗ってもこなすことができる自信があったのだろう。
「いづくの舟でも返させたまへ」というこの台詞を言って話題になるためにわざと遅れて
きたという説も、まことしやかに流布している。「さもありなん」と思ってしまうのは私だけ
ではあるまい。
同じ作者の愛国百人一首の歌へ
小倉百人一首のページへ戻る
決まり字一覧へ
2008年3月 HITOSHI TAKANO