愛国百人一首

橘千蔭

八束穂の瑞穂の上に千五百秋
   國の秀見せて照れる月かも


<愛国百人一首における決まり字>
ヤツ(2字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
ヤ音5枚中の1
<歌意・鑑賞>
 房々と豊かに稔った稲穂と、永遠に変わりのないところの国の平の中心を一つに、皎々と照らして いる月であることよ。
 「八束穂(やつかほ)」は、祝詞の「八束穂のいかし穂によさしまつらば」から出ている。「千五百秋 (ちいほあき)」は古事記の「葦原の千五百秋の瑞穂の国」による。「国の秀(ほ)」も古事記の 「千葉の葛野を見ればももちたる家庭も見ゆ国の秀も見ゆ」によるものである。
 国土礼賛の歌であるが、その礼賛の中心が稲の豊かな稔りにあるところがポイントである。 美しく良い国でなければ、農作物は豊かに実らないという思想がその根底にあるのである。
<コメント>
 橘枝直の子、通称は又左衛門。加藤千蔭としても知られる。 父に和歌を学び、賀茂真淵に入門し、皇朝の学を学ぶ。
 村田春海とならび江戸派の中心歌人。能書家でもあり、千蔭流と言われる。
 江戸町奉行所の与力であり、吟味方を寛政の改革で辞し、「万葉集略解」を著し、古学を 普及させた。歌文集に「うけらが花」がある。
 1808(文化5)年、没。

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2008年5月31日  HITOSHI TAKANO