大弐三位

有馬山猪名の笹原風吹けば
   いでそよ人を忘れやはする


決まり字:アリマ(三字決まリ)
 この歌といえば、宝塚女優の「有馬稲子」の名前の元となったことで有名である。 宝塚では、「天津乙女」も有名であるが、そのほかにも多くの女優が百人一首にちなんだ 芸名をつけている。
 最近は芸名のつけかたもいろいろのようだが、少女歌劇と言われた宝塚歌劇団の女優の 芸名の元ネタとしては、百人一首のイメージは不思議に合うように思える。可憐な少女と 歌の雅がうまくマッチするのだろうか。歌劇の新しさと古典の融合が、えもいえぬ雰囲気 をかもしだすのだろうか。

 さて、作者の大弐三位は紫式部の娘にあたる。夫の高階成章が太宰大弐であったことと 後一条天皇の乳母として三位の位を賜ったことで、大弐三位と呼ばれる。源氏物語の宇治十帖の 作者という説もある。母譲りの才があったのであろう。
 上の句は「そよ」を導くための序詞である。「有馬山の猪名野のに風がふけば笹原がそよという ように」ということなのだが、歌の主題はここにはない。歌の主題は、反語表現で表されている。 「あなたを忘れるようなことがありましょうか。いや決して忘れることなどないでしょう。」 ということなのだが、その前に上の句が導いた「そよ」を使って「いやまあ全くそうですよ」 という表現「いでそよ」が入っているのである。

 そして、彼女もまた名があらわすとおり、定家の撰歌基準にあったのではないかと思われる 都から遠く離れた土地(太宰府)との縁のある作者なのである。

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2008年4月14日  HITOSHI TAKANO