"競技かるた"に関する私的「かるた」論

番外編

苦手意識の罠(2)

〜サウスポー編〜

Hitoshi Takano Mar/2017


 前々回のテーマ「苦手意識の罠(1)」で取り上げたものについて、 1テーマずつ苦手意識を払拭するための方法を検討していきたいと思う。
 繰り返して書くが、まずは、しっかり、実力差なのか、本当に苦手なのかを見極めてほしい。
 また、理解を深めるために、以前書いた「サウスポー論」にも目をとおしておいて いただきたい。

 まずは、前々回の分析をおさらいしつつ考えていこう。
 「サウスポーが苦手」と感じるのには、サウスポーに不慣れであるがゆえという理由がある。 右利きとの練習に比較し、左利きとの練習が少ないために、「不慣れ」を苦手意識として感じてしまっているのである。 「不慣れ」は決して「苦手」ではないのである。
 この場合の解決方法は、できるだけ多くのサウスポーと対戦して、サウスポーとの対戦に慣れるということである。 ただ、サウスポーといっても、個性豊かであり、人それぞれであることを念頭に置きつつ、共通項を発見するようにしよう。 サウスポーは人数が少なく、サウスポーの先輩から教えてもらえる環境がないケースもあるので、個々人が工夫をせざるを えないことが多い。それゆえに、右利きの選手よりも個性豊かになるように思う。サウスポーと一括りで考えて しまうと、選手ごとのあまりの個性の違いに面食らうこともあるかもしれない。この点を認識しておくことも大事なこと である。
 しかし、対戦相手としてのサウスポーが身近にいない場合もあるので、そういう場合は、対戦して不慣れを解消する ということができない。この場合はしかたがないので、意識改革をするところから始めてみよう。まずは、 不慣れなだけで苦手ではないと自分自身に強く思い込ませるのである。その上で、サウスポーの特徴を 認識することである。本稿もきっと参考になるだろう。

 さて、前々回の指摘を個別にみてみよう。
 一つ目の指摘は、「手の出方」であった。自陣の右下段を攻められる際の手の侵入の軌道が右利きに攻められる場合と 異なるがゆえに、違和感を感じるのではないだろうか。最近では、右利きでも突くように入ってくる選手も 増えてきてはいるが、やはり、右利きの選手は払いの軌道(角度)でくることが多いだろう。払いの侵入角度でくれば、 こちらの手の出し方でブロックもできれば、距離の近さの利で追い抜くこともできるが、左利きの侵入角(侵入軌道)を 同じような感覚の取りをしたのではブロックもできず、追い抜きもできないので面食らうのである。 左利きの選手のこちらの右下段への取りは、札に対して突くようにまっすぐに手を出してくる。 この「手の出方」に違和感を感じるのである。
 対処法は、「違和感」を受け入れることに尽きる。「手の出方」を気にしない。これで取られたら、仕方ないと考え、 別の場所で札を取ればいいのである。変に向きになったりせず、またイライラしたりせず、自分のペースを守るのである。 「違和感」を気にしだすと集中力に悪影響がでて、「お手つき」をしてしまう要因にもなりうる。左利きのこっちへの 攻めはこういうものであると受入れ、取られたら他で取ればいいと気持ちを切り替えるのである。でも、どうしても ブロックしたいというのであれば、相手の手の入ってくる角度と軌道を読んでそこに手を出せばよい。それは、 自身が攻めがるたであれば、守りがるたの傾向を取っていることとなり、やはり普段の自分のペースではなくなって しまう。そこは、自分のペースを守るということとその時に作戦としてしなければならないことのバランスである。 局地的にみるのではなくトータルにみて、どっちが勝利の可能性を高めるかの判断である。

 次の指摘は、札の配置に関する点であった。左利きは自陣の左側に札が多く、右側が少ない傾向がある。 どうしても、札の数の多いほうへ攻めの気持ちがいってしまいがちである。またそれとともに、右利きの選手の右下段を 攻めるという攻めかるたを実践している選手は、左利きが相手だと相手の左下段を攻めるという攻めかるたをしてしまい がちなのである。もちろん、サウスポー選手が自陣の左に決まり字の短めの札を置き、右に決まり字の長めの札を 置いて、そのようなパターンを誘導していることもこの理由のひとつであるだろう。
 では、自分で身体を動かしながら、考えてみよう。右利き相手の場合、相手の右への攻めを拠点として そこからの身体の重心の変更による方向転換を行なっている時と、身体の動きが異なってはいないだろうか。 たとえば、右利きの相手の場合で、右下段と左下段に友札を分けて置いているケースにおいて、 まず右下段を攻めてそのあと左下段の攻めに移る。ところが、左利き相手だと、まず左下段を先に攻めて 次に右下段の攻めに移ってしまいがちである。身体を動かしてみれば、その違いは明白だろう。 身体の動きが普段と違うこともあり、スムースな動きでなくなるのだ。これは遅さにつながる。 その時に左利きである相手は実にうまく自陣の右下段に手を出してブロックする。左利きの選手は右利きの選手と 取ることが多いので、このパターンに慣れているのである。左利き相手と対戦すると「よく手がぶつかるなぁ」と 感じていると思う。この相手陣の右側への攻めの時、手がぶつかることが多いのは左利き相手と対戦する時に ありがちな特徴なのである。手が接触することが嫌な選手も多い。この「嫌」という感覚の蓄積が、なんとなく 「苦手」な意識につながるのである。
 この対処法は、必要以上に相手陣の左側の札を意識しないということである。右利きと取っているときの 身体の動かし方をベースとして試合をつくっていくことだ。そして、ここ一番、決まり字の短い札を敵陣の左から 抜かなければならないというポイントを見極めて、そのときだけは相手陣左意識で攻めるのである。このくらいの メリハリを利かせることで、身体の動かし方は右利き相手と同じである状況を多くつくるのでる。これもまた、 自分のペースを守ることにつながる。

 さらに指摘したポイントは、大山札の囲い手の時の「違和感」である。右利き相手と左利き相手との違いを 感じるのは、囲う位置であったり、囲いを破りに来る場合の指の突き込みの入り方だったりするのではないだろうか。 左利き用の大山札の置き方をせずに普段どおりのほうがよいという選択をすれば、自陣については囲われやすく なったり、囲い手破りをしかけられやすくなることもある。
 相手が左利きだということを考えれば、相手から囲われにくく自分が囲いやすい場所は想定できるが、普段と 違う置き方をすれば、自分のペースが乱れるならば、相手から囲われやすい、突き込まれやすいというリスクを 承知で、普段の定位置にしてもよいと考える。これも自分のペースを守る手法の一つである。

 ここまで書いてきた中で、読者の方にはキーワードがいくつか見えたことかと思う。

            「不慣れ」    「違和感」    「ペースを守る」

 前の二つが「苦手意識」を生むほうのキーワードであり、最後の一つがその対策である。
 原因がわかったら、それを知った上で自分のペースを守ることが、「苦手意識」払拭の方法なのである。
 変に相手が左利きであることを意識して、自分のペースを乱すことがないようこころがけていただきたい。
 「なんだ。そんなことなのか。」と思われるかも知れないが、本当に「なんだ。そんなこと。」なのである。 これで、苦手意識を持っている方から、サウスポーへの苦手意識が払拭できれば幸いである。ぜひ、試してみて いただきたい。

 まだ、苦手のテーマは残っている。では、また。

次の話題へ         前の話題へ

「苦手意識の罠」のINDEXへ

"競技かるた"に関する私的「かるた」論のINDEX
慶應かるた会のトップページ
HITOSHI TAKANOのTOP PAGE

Mail宛先