前中納言匡房
高砂の尾上の桜咲きにけり
外山の霞立たずもあらなむ
決まり字:タカ(二字決まリ)
作者は、大江匡房。大江匡衡・赤染衛門の曽孫にあたる。大江家といえば、学問の家柄
であり、父親の成衡は大学頭であった。また、鎌倉幕府で重用された大江広元の曽祖父に
あたる。その学問の家系の中でも、彼は博学をもって知られる。幼い時から学問に秀でて
いると有名であり、時として、菅原道真の学才に比較されることもある。位階は正二位に
いたる。また、大蔵卿や太宰権帥などの官職についた。大江姓で、太宰権帥であったので、
「江帥」(ごうのそち)と記されることもある。当時としては長寿の部類の71歳で亡く
なっている。
歌意は、「山の上のほうの桜が咲いた。山のふもとに近いところで霞が立って、
その桜を見えなくしないでほしいものだ。」というような意味になるだろうか。
外山は、山の外縁部であり、外山に対する言葉が「深山」(みやま)である。
百人一首では、「山の奥」とか「奥山」は登場するが「深山」という言葉は出てこない。
さて、話はがらりと変わるが、「高砂の」の札を私の得意札と思う方々がいる。
理由はいたって簡単で、わたしの名字の頭の「たか」の音とこの札の出だしの「たか」の
音が同じだから、得意だろうというのだ。
名前というのは、子供のころから呼ばれ続けていいるから、音に対する反応が速いという
のが、その理由である。
名字のほうの反応が速いという人も、名前のほうが速いという人もいる。しかし、私の
場合は、どちらもそんなに速いとは思えない。
なぜばらば、けっこう自分の名字を聞き間違えるのだ。「秦野(はたの)」「赤野(あかの)」「片野(かたの)」「若野(わかの)」など、良く聞き間違える。おそらくTの子音
が、最初に来たときにしっかり聞いていないのであろう。また、名前のほうでも、「ひとし」
なのだが、「ひとも」や「ひとは」に素早く反応しているとは思えない。「ひさ」にしても
「ひ」の音にしっかりと反応しているとは思えない。H音が消えて「いとは」とか「いとも」
や「いさ」というように聞こえてしまうことも多い。だいたい、母親が「ひ」を「し」と発音
しがちだったからということもあるかもしれない。江戸方言・江戸なまりでは「ひ」を「し」
と発音する人がおおいのだが、うちの母親は東京出身ではないが、何故かそういう発音癖が
あった。「ひとし」と言うより「しとし」と言っているように聞こえたものだった。そんな
こともあって「ひ」の音に速く反応できないのかもしれない。かといって「し」の音が速く
聞こえるものでもないのだが…。
名前の音が速いというのも、個人差のあることである。くれぐれも決めてかからぬように
ご注意願いたい。
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2008年3月 HITOSHI TAKANO