TOPIC   "番外編"

金言・格言

Hitoshi Takano OCT/2010

 「一歩千金」「将棋は歩から」「歩のない将棋は負け将棋」「桂馬の高跳び歩の餌食」「金底の歩、岩よりも堅し」など、「歩」にまつわる将棋の金言・格言は多い。もちろん、「歩」以外の駒にまつわる金言・格言も将棋の世界には多い。
 一方、競技かるたの世界はどうであろうか?
 一般的な金言・格言というのをあまり聞かない。
 それなら、自分で今まで人から聞いた文言の中から、それらしく仕立ててみようと思いたった。それでは、どういう視点で考えるかと悩んでみたが、試しに「お手つき」をテーマにしてみた。
 できはあまりよくないかもしれないが、それらしく感じていただければ幸いである。

お手るより取られるだけなら一枚差!

 これは、「お手つきするなら、取られたほうがまし。」ということである。
 みなさんもこれは真実だと実感としてうなずいてくれるだろう。
 取られるだけなら、差が一枚広がるだけである。単独のお手つきなら、一枚送られるので、相手がマイナス一枚で、こちらがプラス一枚となり、計2枚差がつく。
 相手に札を取られた上に同時に自分がお手つきする(ダブ、セミダブ)と一挙に三枚差がついてしまうし、カラダブであれば四枚差がつくのである。こんなに効率のわるいことはない。
 お手つきをするくらいなら、相手に取られたほうがまだましなのである。特に相手に先に手を出されたりして、あわてたり焦ったりして出札を遅ればせながら取りに行こうとするときに、この言葉を思い出してほしい。これで、お手つきしてしまったら、一枚のビハインドですまないのかもしれないのである。余計なことをしないというのも、試合の中では立派な見識である。気持ちを切り替えて次の一枚をきっちり取りに行けばよいと考えよう。

お手つきをしてしまうなら敵陣で!

 これは、「お手つきをするならば、自陣を守ってのお手つきをするより、敵陣を攻めてのお手つきをしたほうがまし。」ということである。決して、お手つきをすることはいいことでないのである。
 実際には、敵陣でお手つきしても、自陣でお手つきしても、枚差の開き方の影響は同じである。しかし、攻めを重視する現代の競技かるたの傾向の中では、攻めた場合は攻撃精神の表れとして積極性を評価されるので、守ってのお手つきよりは、まだよいだろうということである。
 どちらかというと、お手つきをおそれて攻めの手がゆるくならないようにするための精神的なエクスキューズを競技者に与える言葉といえるかもしれない。

お手つきは対戦相手におまかせを!

 これは、「お手つきは自分でするものではなく、相手にお手つきしてもらうようにするものだ。」ということである。
 あまりにあたりまえの真実であり、相手がお手つきしてくれなかったらそれまでなのだが、札の送りの時など、トモ札をわける等々、お手つきの可能性が高くなる送りを考えるべきだということを示唆している言葉である。
 もちろん、送りだけではなく、配置によっても同様の工夫はできるのである。

お手つきの後の一枚要注意!

 お手つきをした側にすれば、次の一枚を取って差を一枚分戻しておくことは重要であるし、お手つきをしてもらった側にとっては、ここが差をさらに広げる(縮める)チャンスである。
 「お手つき」のあとの一枚をどちらがものにするかは、試合の流れのうえで非常に重要な要素なのである。
 特に集中力を発揮しておきたい場面である。その際には、お手つきによって移動した札の確認を怠ってはいけない。お手つきをしたために冷静でいれない精神状態であったり、お手つきをしてもらって油断してしまったような精神状態のときに、移動した札がすぐ読まれたりすると、思わず以前あった場所を払ってしまったりすることがある。これを防ぐためにも、お手つきのあとの暗記は重要なのである。

もめるより次の一枚トモ手つき!

 いわゆる「トモお手つき」は、単独かトモお手つきかでもめることが多い。あまりもめるようならば、さっさと切り上げて次の一枚に集中したほうがよい。
 もめるような取りをした自分にも責任があると思えば、あきらめやすいのではないだろうか。変にもめて、つぎの一枚やそのあとの展開に悪い影響を及ぼすくらいなら、さっさと決着をつけて、暗記に集中すべきなのである。

 今までの経験や周囲の人の言葉から、とりあえず五つまとめてみたがいかがだろうか?
 五七五の語呂合わせに苦労したが、いかがだろうか? もっとうまい語呂が見つかったら、置き換えていきたいと思う。

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