TOPIC   "番外編"

テレビ番組三題

Hitoshi Takano FEB/2011

 2月21日のNHK総合”首都圏ニュース”と2月24日のNHK総合”おはよう日本”と1週間の間に二度NHKの番組の中で”競技かるた”の話題が取り上げられた。この二本に加え、BSフジの朝の帯番組”We can”で毎週火曜日に競技かるたが取り上げられているので、そのことを話題にしてみたい。

首都圏ニュース

 取材対象は、永世クイーンの渡辺令恵さん。失冠後8年の現在の様子を取材している。
 クイーン在位14期の大選手だけに、その後の身の処し方には本人としても葛藤があったようだが、「かるたが好き」という姿勢で、現在でも現役バリバリで大会に出場している様子が描かれていた。
 心を打つのは、膝の裏の軟骨がすり減っている状態で、現在でも競技を続けている点である。クイーンを取るために、また防衛するために、半端でない数の練習をこなしていることは、つとに有名であったが、そこまで身体に負担をかけているのである。
 私が大学生の時に中学生の彼女と対戦し、大会で7試合対戦し、勝てたためしがないし、この大クイーンと同時代においてかるたを取ってきたから感じられる渡辺永世クイーンの凄さというものがあるだろう。
 足元にも及ばないが、いまだにかるたを取り続けている私としては、永世クイーンが今でも一線でとり続ける姿勢は非常に励みになる。
 健康のためのスポーツであるが、スポーツ選手もトップを目指す人たちの練習は、ある意味不健康でさえある。怪我をおしての練習による症状の悪化や身体の他の場所への悪影響や、練習のし過ぎでの疲労骨折、野球のピッチャーが肘を痛めるのも練習のし過ぎであったり、負担のかかる変化球の投げすぎによる。相撲取りの体重増加による膝への負担や、はず押しによって外側へ湾曲する指、いわゆる耳がわくのも、けいこによってである。
 野球選手や相撲取りは、プロフェッショナルであるから、自分の身体がそれにより痛むのは対価を得る職業としてであるから当然であるという考え方もあるだろう。しかし、競技かるたは、現在、職業として成立していない。あるのは栄誉だけである。
 この純粋な栄誉に、肉体をすり減らしてまで向かう姿勢は、精神的にはプロなんだという言い方もできるだろうし、プロでないがゆえにプロの努力以上に素晴らしいとも言えるかもしれない。
 この番組は、渡辺永世クイーンの凄さを改めて認識させてくれる内容だったと思う。

”おはよう日本”

 こちらは、”タイ”における競技かるたの普及の様子の紹介である。
 競技かるたを日本語を知らないタイの子供たちが、競技している様子は、以前から思い描いていた競技かるたの国際化を現実のものとして映し出してくれた。
 番組では、タイの紹介であったが、タイだけではなく、韓国、北京、ニュージーランド、カナダなどでも普及が行われている。
 普及にあたっている関係者のみなさんには深く敬意を表したい。
 私も、大学という環境に身を置くので、海外からの留学生を競技かるたに勧誘したいのだが、なかなかに難しい。海外研修で米国に行ったときには、日本語を勉強している現地の大学生と百人一首のちらし取りをやったりしたのだが、まあ、それが精いっぱいであった。
 海外普及のひろがりによって、国際色豊かな競技かるたになると斯界はますます発展することだろう。底辺が広ければ広いほど頂点は高くなるのであるし、日本人には判別できない子音などを判別する外国人選手が現れると、競技かるたの戦術や戦略もどんどん変わってくるのではないだろうか。
 そんなことを考えるだけでワクワクしてくる。
 「タイ」のかるたの紹介の番組だったが、かるたの国際化の可能性を感じさせてくれる番組であった。

”We can”

 小学生向けの情報発信番組ということ、BSフジの朝の7時15分〜30分の帯番組である。この番組の火曜日が”We canかるた部”の活動を描く日となっている。私は、11月くらいから見始めているが、この番組のレギュラー小学生3人が、東京東会の指導で、競技かるたを覚えて練習して、他の小学生チームなどと対戦したり、大会に出たりする様子を伝えている。
 見ていると、進歩のあとも見受けられるし、鋭い攻めなどが出ると「う〜ん、早い」とうなってしまう。この取りだと私が相手でも楽に取られているなと感じることもある。
 小学生のチームとだけでなく、助っ人2名を入れて中学日本一のチームと対戦したり、それこそタイ人のチームと取っているが、我々のようなおっさんチームとは対戦してはくれないものだろうか…。
 国際化も楽しみだが、まだまだ国内市場も開拓しがいのあるのが、競技かるたである。こうした番組がきっかけで、ますます、小学生からの層が拡大し、将来の競技人口の増加につながってくれればうれしい限りである。

さいごに

 番組制作に携わるみなさん!
 これからも、ぜひぜひ、継続的に競技かるたに関する番組を製作して流してください!。
 囲碁や将棋のNHK杯トーナメントではないけれど、競技かるたのトーナメント戦を1年を通じて放映してはくれないものだろうか。
 ガチンコの面白い試合が見れると思うのだが…。


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