愛国百人一首
山部赤人
あしひきの山にも野にもみ猟人
さつ矢手挟みみだれたり見ゆ
<愛国百人一首における決まり字>
アシヒ(3字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
ア音12枚中の1
<歌意・鑑賞>
山にも野にも帝のために狩りをする人々が矢を手にいりみだれている様子が
見えることである。
小倉百人一首では、柿本人麻呂の「足引きの山鳥の尾の」の
歌は「アシビキ」と濁って読むのだが、この歌は、清音で濁らずに読むこととしている。
「あしひき(あしびき)」は、「山」の枕詞である。なお、「さつ矢」の「さつ」は、
「山の幸」の「幸」ということで、「幸をとるための矢」というが、単に「矢」の
意味とも…。
<コメント>
「田子の浦〜富士の高嶺」の小倉百人一首の歌が有名であり、旅に生きた漂白の歌人の
イメージが強いが、この歌は吉野宮への従駕の際の歌である。彼もまた、宮廷の中にもその
居場所があった歌人といえるのである。
「定本愛国百人一首解説」に記載されている選定基準を簡単に紹介しておこう。
(1)短歌に限った。
(2)万葉集時代から明治維新前までに物故した作者までとした。
(3)天皇の御製ならびに皇族の歌は撰歌しなかった。宮内省に確認し、遠慮を諭されたためである。
(4)愛国の範囲を拡大して考えた。母性愛を詠んだものも我が国の女性の特性として広く愛国の精神
としてとらえた。秀歌であり、一読して胸を打たれるような歌を選定に加えた。
(5)ある作者の作品の中で、愛国の精神を直接に詠んだものでなく間接的なものでも一首の和歌として
価値の高い歌を選出した。
(6)一首の歌として、明朗に、また積極性を帯びている作を選定した。
(7)歴史上有名な人物に対しての斟酌はしない。有名人の歌を特別扱いはしなかった。
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2008年5月8日 HITOSHI TAKANO